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ベッドで寝ていた青年は目覚まし時計の音で目が覚めた。目覚まし時計のボタンを押して止めて、時計を見る。今の時刻は7:40。完全に遅刻しそうな時間だ。
カーテンを開けると快晴で、太陽の日差しが燦々と照りつけてくる。夏も近くなり、朝の時間が長くなっていく。今日も学校がある日で、登校しなければ行けない。
東山悟はめんどくさそうに肩を下げる動作をして、朝食を食べる。朝食は食パンで、どろっとしたイチゴジャムを塗ってかぶりつく。甘くてとろける美味しさだが、干渉に浸っている場合ではない。急がなければ。
速やかに朝食を終えて制服に着替える。そしてリュックを背負って高校へ向かう。これがいつものルーティーンのはずだった。
ところが登校中に、不思議な墓を見つけた。文字が真っ黒に塗りつぶされ、そして周りはイカの墨のように真っ黒だ。
「なんだこれ……初めてみたな」
呆れてしまい、言葉が出てこない。
近づいてみると、どのような仕組みなのか知らないが、黒い墨が集まり真っ黒な猫の人形になった。しかもその人形は一人でに動く。
怖くなった悟は「ひっ」と甲高い声をあげて、そのまま逃げてしまった。学校に間に合わないし、もし呪われたら大変だから。
悟は小走りし、そのまま学校へ入る。彼の家は学校から近いのだ。だから時間に余裕がある。
余裕がありすぎて、時間を忘れて寝てしまうのだ。慌てるのもしょうがない。眠すぎて授業に集中できないよりはましだ。
教室の引き戸を開けて入る。授業の時間になるというのに少数の人数しかいない。三人しかおらず、全員悟の方を暗い目で見ていた。瞳孔がギラギラと光る。
一ヶ月前に空が黒い雲で覆われた時がある。しかし、黒い雨が降ってから次々と体調不良を訴え行方不明になってしまった。
警察も調査しようとしたが、数が多く全て調査できない。捜査部隊を結成して探索もさせたが、どこに行ったのか不明である。
黒い雨は一時的に降ったが、すぐさま止み何事もなかったように快晴へと戻った。
そんな最中、悟は椅子に座り先生の来るのを待っていた。ガラガラと扉が開くと、先生が入ってくる。彼はとても興味なさそうに言う。
「もう、四人しかいないのか。では授業を始める」
それから授業は進み、昼休みになった。母が作ってくれた弁当を開けて食べようとしたら、クラスメイトの一人に話しかけられる。とても強い口調だった。
「なあ、君だろ。行方不明者を出したのは!」
「なんの話だよ。あの雨のせいに決まってるだろ。俺はその時建物内にいたんだ。当たってないよ」
「嘘つけ!お前のせいだと認めろよ」
「だから僕のせいじゃないって!」
「その証拠にお前以外の人間は、全員心当たりがない。お前ならあるだろ!」
「だからないって」
なぜか濡れ衣を着せられてしまった。これではまともに昼食を食べることもできない。ため息をついて、他の三人にも告げる。
「俺は犯人じゃないぜ。俺が犯人だったら全国の人が行方不明になっている理由がつかないでしょ」
そう告げると、三つ編みの女の子が話し出す。
「確かにそうね。アタシが勘違いしてたわ。ごめんなさいね」
「大丈夫だ」
そんな会話をしていたら、クラスメイトの一人が突然発狂。そのまま窓から飛び降りてしまう。窓の外は何もない場所で、下手したら死ぬ。
下を見たら案の定死ぬことはなく、壁を伝って一階まで降りていた。死ななくてよかったとホッとする。
顔を上げて教室の扉を見ると、巨大な真っ黒な猫がやってきていた。あのクラスメイトはこの猫に驚いて逃げたのだ。
ぐるぐると喉を鳴らしながら、こちらを睨んでいる。この猫はあの人形の猫と似ている。
猫がこちらにやってくると、のっぺりした声で話しかけられた。
「お前があの時の男か。私と契約を結ばないか?」
「契約?なんの契約だ?」
「それは言えない。私の目的は人間を観察することだ。私は人間をもっと知りたい。だから乗り移る」
「乗り移るってマジかよ!?」
汗をかき、顔を真っ青にする。「やめろ」と訴えるが、全く聞いてくれない。
どうやら見られてしまった腹いせで契約を結ばされてしまった。あのままスルーすればよかったと後悔する。だが、もう遅い。
体全身真っ黒に染まり、意識が遠のいていく。
目が覚めると、教室の部屋に座っていた。周りには誰もおらず、時計を見ると8:00。もう学校が始まっている時刻だ。それのに、クラスメイトは一人もいなかった。
悟だけが残っている。絶望的な状況で、発狂しそうになる。静かすぎて恐怖を感じる。彼の息遣いしか聞こえない。
ガラガラと扉が開くと、先生が入ってきた。教卓の前に立つ。
「東山だけになったか。では自習にします」
彼がそう言うと、教室から出てしまう。自習になって嬉しい反面、なんの物音もしないので震えが止まらない。持っているシャーペンが震え、教科書の文字が霞んで読めない。
こうなったら、学校から出た方が気分転換になるかもしれない。