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まさか獣化した状態でガチャをすることになるとは思わなかった。これでレアなものが出まくってくれれば何も問題は無いわけだが。しかも獣化したことで手の平の面積が狭くなっている上、体形変化によって身に着けていた腰袋や装備品やらが全て外れてしまった。
装備品はおそらくルティが控えていると思うが、基本的に魔石を入れてある腰袋は今まで誰にも触れさせたことがない。触れさせたとしてもどうにかなるわけではないからだが。
フィーサが変調をきたしているのは魔石成長によるものが大きい。それだけにうっかり魔石に触れさせて不調を起こして欲しくない。とはいえ腰袋に平気で触れて魔石を渡してくれそうなのはシーニャだけだし、今の時点で言葉が通じるのも彼女だけだ。
ルティでは別の問題が生じる恐れがあるし、やむを得ないだろうな。
「これでいいのだ?」
「いいぞ! その袋から魔石を取り出して、おれに渡してくれ」
「分かったのだ!」
聞き分けのいいシーニャは虎耳を垂らしながら、素直に言うことを聞いてくれた。ルティの方をちらりと見るが、暴れるフィーサと格闘している真っ最中だった。
「ウニャ? 魔石にシーニャの名前があったのだ。これは何なのだ?」
「……魔石に触れた?」
「触れたのだ。でも何ともないのだ!」
「そ、それなら何も気にしなくていい」
シーニャが触れても魔石に変化は無かったようだ。単に触れただけなら問題は無いということか。専用魔石を除いて魔石の数が大幅に増えたわけじゃないなら物は試し、シーニャの魔石も混ぜてガチャることにする。
【Sレア フェンリルの爪:獣化専用 Lv.0】
【Uレア 従魔の肉体を硬化。あらゆる攻撃を無効化、行動不能にする 潜在:従魔】
【Uレア 従魔の能力を使用出来る 条件:従魔の行動不能時】
【Uレア 獣化スキルを解放 人間に戻る 条件:一定数の人間を倒す】
むぅ、これは……。
やはりというべきかシーニャにも関わりがあるのか。シーニャのスキルを使えるとしても彼女を行動不能にするのはリスクがある。武器の獣化専用はいいが、レベルを上げるには獣化でいる必要があるようだ。
元の姿に戻る条件は人間を倒す――と同時にスキルも得られるか。
それとフェンリルの爪だ。今のおれはフェンリルのような存在で間違いなさそう。
「何かいいのが出たのだ?」
「シーニャ。おれの姿って――」
「オスの狼なのだ! 少し目つきが悪いだけの狼。それがどうかしたのだ?」
「……な、何でもないぞ、うん」
武器の名前に特別な意味があるわけじゃないのか?
仮にフェンリルの力が使えるとしてもどれくらいの強さを誇るのやら。
「アック様、アック様~!! た、大変です、大変です~!!」
「ウガッ?《どうした?》」
「こ、言葉は分かりませんけど、伝えるだけ伝えます~! か、囲まれていますけど、どうしましょう!?」
「ウウガッ!?《何っ!?》」
ガチャを引きシーニャと話していたから気づけなかったが、シーニャの言っていた強い人間の気配がすぐ近くにあったようだ。魔石は袋に戻したから問題無いが、今の姿で戦うことは避けられない。
「ドワーフ、アックの荷物を守れ! なのだ」
「ええっ!? 荷物っていうと、錆びた剣とか身に着けていた装備のことですよね?」
「それしかないのだ」
「――ということは、アック様は今……裸!?」
「そんなのは知らないのだ。それよりも早くするのだ! シーニャ、アックと一緒に戦うのだ。ドワーフとフィーサは後ろに下がってろなのだ!」
ルティが思っているとおり獣化が解ければ、恐らく裸を晒すことになる。それだけは避けねばならない。だが、今はそれよりも敵のことに集中するべきだ。
「シーニャ、強い気配の数は分かるか?」
「ウニャ。三つくらいなのだ」
ルティとフィーサは元々防御力も高い。そう考えると何も心配いらないが問題はおれ自身にある。複数の強い気配ということは、手練れの冒険者パーティーで間違いない。
この辺はまだラクルにほど近いエリア。そう考えると周辺に点在するダンジョンに潜らないパーティがいないわけでもない。
だいぶ前に狩りを専門にしている獣狩りパーティという連中がいると聞いた。獣狩りパーティという厄介な連中は外で狩りを楽しむ連中だが、正直言ってあまりいい話を聞いたことがない。
連中にとって今のおれたちはまさに、絶好の的ということになる。
「魔法攻撃が来たらシーニャはよけるんだ。そいつらはおれがやる」
「ウニャ! シーニャ、武器を持つ人間を倒すのだ!!」