テラーノベル
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夜。
家に戻ると、外の雨音はまだ続いている。
けれどリビングは暖かく、安心感に包まれていた。
少し体がだるく、膝に座るこさめに自然と体を預けた。
「……あったかい」
小さく呟く。
こさめは笑わず、でも手をそっと背中に回す。
温もりが体にじんわり伝わる。
「疲れたね」
いるまも横で静かに頷く。
「手伝わなくていい、休もう」
俺は肩を揺らすほどの小さな力で頷く。
心も体も全部解放される気がした。
すちはブランケットを持ってきて、ソファの端に広げる。
LANは飲み物をそっと置き、みことは窓際で外を見守る。
――誰も、無理に何かをさせようとしない。
――でも、全員が見守っている。
こさめの膝に顔を埋め、手もそっと置いたまま。
「……もう、ここにいよう」
こさめは微動だにせず、ただそのまま。
いるまも安心できる距離で隣に座っている。
雨の音、家族の呼吸、温かい体温。
すべてが心を落ち着ける。
――触れるものすべてが嘘じゃない温もり。
俺は初めて思った。
ここでは泣いても怒られない。
甘えても、叱られない。
そして、ちゃんと守られている。
眠くなると目を閉じる。
外の雨も、昨日の不安も、もう遠い。
あるのは、温かい家族と安心できる場所。
――夜は静かにゆっくり流れていった。
朝。
俺は一人で家に残されていた。
窓の外は柔らかい光が差しているのに、体の奥は落ち着かない。
そのとき、玄関のドアが急に開き、見知らぬ影が差し込んだ。
振り返ると、目の前に冷たい手が伸びてきた。
次の瞬間、押さえつけられ体を持ち上げられる。
「いや……やめて……!」
叫び声は届かない。手足を抑えられ、目隠しのような暗闇に閉じ込められる。
意識は揺れ、過去の夜の恐怖が頭の中で蘇る。
殴られた痛み、怒声、閉じ込められた感覚――
あの全てが、今ここに再現される。
暗闇の中、車の揺れが伝わり、心臓が跳ねる。
息が荒くなる。手足は震え、過呼吸が始まる。
「助けて……誰か……!」
声にならず、孤独感だけが広がる。
車が停まる衝撃。
腕を引かれ、暗い倉庫の中に押し込まれる。
床は冷たく、空気は湿っていて重い。
影が動き、足音が響く。
そのとき――
「なつ!」
いるまの声が、暗闇を切り裂く。
「そこだ!手を出せ!」
続いて、こさめ、LAN、すち、みことの声も加わる。
倉庫の端から光が差し込み、家族の姿が見えた。
怖くても、体を伸ばしてこさめの手を握る。
「深呼吸、ゆっくり……大丈夫」
いるまが背中に手を添え、LANもそっと腕を支える。
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すちはどこからか持ってきた毛布を差し出し、みことも体を守るように寄り添う。
時間がゆっくり流れる。
荒い呼吸が少しずつ落ち着き、手の震えも収まっていく。
怖さはまだ残っているけど、確かに守られている温かさを感じる。
「怖かった……」
小さな声で、ようやく言葉を発す。
「いいの。怖いのは当然だから」
こさめの声は低く、揺るがない。
「でも、もう大丈夫。こさたちが絶対守る」
恐怖と安心が交錯する中で初めて心から思った。
――怖くても、守られている。
――もう、一人じゃない。
倉庫を出ると外の光が目に入る。
雨上がりの街の匂い。
家族と並んで歩く足取りはまだ震えているけれど、確かに前に進める。
家の玄関に戻ると、全身の力が抜けたようにソファに座る。
こさめの膝に頭を乗せ、いるまの手を握る。
毛布に包まれて、ようやく安堵の息を吐く。
――今日は、もう怖くない。
――家族と一緒なら、どんな夜も越えられる。
コメント
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いつ完結すんでしょ...?