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61 - 第61話 おばあちゃんの“ごめんね”

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2025年03月17日

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◻︎結衣のおばあちゃん



「…はい、え?!わかりました、はい、あ、代わります」


結衣はスマホを私に差し出した。


「もしもし?うん、え?わかった、乗せていけばいいのね」


礼子からの電話は、施設にいる結衣のおばあちゃんの容態が急変したから、至急結衣を乗せてきてほしいということだった。


「結衣ちゃん、行くよ」

「はい」


施設に着いて、聞いていた部屋へ急ぐ。


「おばあちゃん!」


ドアを開けたそこには、結衣のおばあちゃんが横たわっていた。

駆け寄っておばあちゃんの手を取る結衣。


「おばあちゃん、結衣だよ、ごめんね1人にして!」

「…、……」

「なに?おばあちゃん、どうしたの?」

「ご…め…ん…ね……」

「おばあちゃん、大丈夫だから!私は大丈夫だよ、おばあちゃんがいてくれたから、安心して!だから、おばあちゃん…おばあちゃん!」


結衣の顔を見たら、ホッとしたように見えたおばあちゃんが、そっと目を閉じた。

医師が時刻を告げる。


「うわぁ!!おばあちゃん、おばあちゃん、起きてよ、おばあちゃん」


激しくおばあちゃんをゆする結衣を抱きしめた。


「結衣ちゃん、もう寝かせてあげよう、ね?おばあちゃんは結衣ちゃんを見て安心したんだよ、だから…」

「……」


部屋のすみには、結衣のお母さんがいた。

黙って、私に頭を下げている。

そこに、礼子がやってきた。


「あ、おばあちゃんは?」

「たったいま…」

「そう…結衣ちゃん、会えた?」

「…」


結衣は黙ったままうなづいた。


「少し、話そうか?結衣ちゃん」


部屋から出てロビーへ行く。

結衣は私の手を握ったままだったから、私もついて行った。


「おばあちゃんと、話せた?」

「…はい、ごめんねって、言ってました」

「そっか、おばあちゃんはずっと結衣ちゃんのことを気にかけていたからね。自分のせいで結衣ちゃんを不幸にしたと言ってたの。申し訳ないって」

「そんな…」

「結衣ちゃんに最期に会えて、おばあちゃんはうれしかったよね、きっと」


「私もそう思うよ、結衣ちゃん、おばあちゃんは結衣ちゃんを見て安心した顔をしてたよ、結衣ちゃんが大丈夫だって言ってたからだと思うよ」


「そうかなぁ…、安心してくれたかなぁ…もっと、おばあちゃんに色々してあげたかったなぁ…」


その後は黙り込んでしまった。





祖母の葬儀は家族葬で行われた。


「私、おばあちゃんに言えてなかったことがあるんだ…」

「ん?何?」

「私ね、おばあちゃんが思ってたほど不幸じゃなかったんだよって。おばあちゃんがいてくれたから、楽しいこともたくさんあったし。これからはもっと楽しいこと、見つけるからねって」


遺影に語りかける結衣を見て、もう大丈夫な気がした。


「結衣ちゃんはまだ若いもんね!これから先が楽しみだね」

「うん、ありがとう、美和子さん」


結衣の意志で、高校は退学して働くことにしたらしい。

祖母がいた施設で住み込みで、介護の仕事を手伝うことに決めたと礼子が言っていた。

落ち着いたら、定時制高校に入ってそれから自動車免許も取るとか。

母親とは連絡はするが距離は置くこと、それも結衣が決めた。


「だってね!私にはこんなに頼もしいお母さんがあと2人、できたんだもん」


ね?と私と礼子を見た。

これも何かの縁、結衣と関わっていくことにした。


_____でも、いつまでもお手伝いさんのままじゃあ…


「あのね、結衣ちゃん、実は私、礼子の友達なの。お手伝いって嘘ついてごめんね」

「うん、わかってたよ」

「え?」

「だって、あの部屋で誰よりも偉そうだったもの」

「偉そうだった?おかしいなぁ、お芝居下手くそってことか…トホホ」


とっくにバレていたとは…情けない。









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