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転機が訪れた。
その日もデートの約束があり、おれが待ち合わせ場所に行けば、そこにはもうゆぺくんが待っていた。
だけど、少し周りに違和感を覚えた。
なんだかおれたちを狙っているかのような、謎の視線を感じる。
おれが近くへ駆け寄ると、ゆぺくんは安心した表情で言った。
🌟「良かったさくら。ちゃんと来てくれて。」
🌸「来ないと思ってた?」
🌟「ううん。ただちょっと、面倒なことになりそうだからさ。」
そう言うゆぺくんは、きっと同じように違和感を感じ取ったのだろう。
🌸「なるほど、何人くらいいるかな。」
🌟「それは分からないね。さくらの力で分かったりすんの?」
🌸「あー…少し時間はかかるけど、大体だったら分かるよ」
🌟「そうなんだ、…うーん…」
おれは相手の気配や相手が立てた微かな音で、おおよその人数を推測はできる。
普通の人よりは耳が良いから。
だけどそれは正確とは言えないし、時間だってかかる。
それに、敵が何人もいると思われる状況の中で推測するのは、とても危険なこと。
もしもおれがゆぺくんに裏切られたりしたら、圧倒的不利な状況。
それは、推測中を狙われると、少なくとも一発は攻撃が当たるからだ。
それはゆぺくんも分かってるのだろう。
ゆぺくんからおれに推測するよう促さないのは、誘導すれば裏切る可能性が高いと思われるからかな。
いくら仲が良くても、人のことは信じられない。
それはマフィアである以上、絶対。
…だけど、裏切られる前提ならどうかな。
期待はしてないけど、この際だからゆぺくんを試してみる。
🌸「おれ、推測するよ。」
🌟「え、?」
🌸「だけどその代わり、おれのこと守ってね。」
ゆぺくんは一瞬驚いた表情をしたけど、すぐにいつも通りの柔らかい表情に戻った。
🌟「僕に任せて。さくらのことは、僕が守るから。」
🌸「うん、ありがと」
おれはすぐに目を閉じ、推測を始めた。
人の気配がするのは、少し離れた右後ろの電柱に隠れてるのが一人。距離的にきっと刀使いかな。
その奥の電柱にも一人隠れてるな。銃の弾丸を入れる音がさっきしたし、銃を使う人で確定。
そして建物の近くから少し顔を出しておれらを狙っているのが二人。
それから今、微かな足音がおれらに向かって来ている。聞こえる方向は…
🌸「後ろ。」
おれが言った後すぐ、というかほぼ同じタイミングで、ゆぺくんが拳を振り上げたのが見えた。
反射神経が凄いなやっぱり。
🌟「本当だ、すげぇ。全く気付かなかったわ。」
🌸「でも油断はダメ。今二人分の足音が聞こえる。」
モブ1「チッ、バレたかよ。」
モブ2「でもお前らはもう時期死ぬ。」
🌟「は?うるせぇ黙れ。」
ゆぺくんは持ち前の拳の力で二人の相手を一瞬で倒した。
おれらがもう時期死ぬ?
どこにそんな根拠があるんだか。
それより、他の奴らはどこに行った?
さっきまでの気配が消えた。
まるで、おれらから逃げていったみたい。
もしそうだとしたら、それはどこかな。
ボスの元へ帰ったとか?
そもそも、あの人たちがどの組織に所属しているのかすら分からない。
あの様子なら、よっぽど強いボスなんだろう。
組織の拠点を探し出せば、潰せるかも。
🌸「ゆぺくん、隠れてた奴らがどこかへ向かったみたい。追ってみよ」
🌟「逃げたのか。…そうだね、追ってみよっか」
敵がどこかへ行く前、微かに複数の足音が聞こえた。
その足音が向かった先は、確か近くの公園の方向だったはず。
おれたちは足早に向かった。
?「ふふっ笑、ちゃんと来たんだね。」
🌟「……は、?」
そこには小柄で可愛らしい顔立ちをした黒髪の男が一人、その周りに複数の男たちが守るように立っていた。
?「久しぶりだね、ずっと会いたかった。俺は君に会いたくて、ここまで頑張ってきたんだよ?笑」
何のことかさっぱり分からない。
ゆぺくんはこの男と知り合いなのか?
🌸「…どういう関係。」
溢れた言葉はたったそれだけだった。
それには、単純に関係を知りたかったのもあるけど、別の感情も入り混じっているのだと思う。
?「俺たちの関係を知りたいの?笑
良いよ、教えてあげる。」
🌟「…」
?「俺たちは昔、付き合ってたの。」