テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
210
#イラスト
るめ
1,922
スイレン🩵🪽 不定期浮上
109
#アモアス役職
シノーペ🪐🌠💜
1,031
(…これで良かったんだ)
【…もう公表した方が良くない?】
そんな八幡宮の問いかけが脳に焼き付いている。
(…私は…リィン・システムの核心に触れてしまった。)
インタビュアーが去ったあと、レイラーは頭を抱えた。
(私やイデアリスにはあまりに残酷な… )
___
「…わかった、これは正真正銘の”呪い”…だよ。」
「…八幡宮さん…」
「…」
八幡宮はメモに目をやり、古書の解読された部分を見る。
『地球の者が我々を滅ぼしたあかつきには、この兵器をもってして最期の呪いとする。』
『地球人は悪だ_我々は赦すことはない。』
『これは呪いだ。』
『彼等への祝福だ。』
「…そんな…!!」
八幡宮と共にそれを見るレイラーが思わず声を荒らげた。
あまりに残酷な_真実。
八幡宮は初めて、ため息をついた。
いつも気楽そうで気が狂っていそうな彼女の、以外な部分と言えるかもしれない。
言いづらそうにする彼女に_初めて、人間らしさを感じてしまう。
「レイラーさんに押し付ける形になって申し訳ないんだけどさぁ。」
「私はさぁ、出たくないんだよ、表舞台とか。」
チンケな部屋に響く、二人の呼吸
レイラーはゆっくりと、それを呑み込んだ。
そして、小さく息をつく。
研究室とは思えないほど生活感があり、多少舞う埃が、彼女の、リィン・システム以外に対する興味の欠落を、そして彼女の不器用さを象徴した。
「…そう、ですよね…」
「私は研究を第一とする財閥ですが、対してあなたは…」
「そうそう、それに注目とかされたくないし、一般階級でも名を残した人はいるけど、私はそこに入りたくない。」
八幡宮は古書の文を指でなぞる。
『彼等に送る、最期のプレゼントだ。』
『恐るるな、受け入れよ_』
「……私達は最初から、ずっと踊らされてたんだよ、レイラーさん。」
も
___
(…私しかいなかった、こんな暴挙ができるのは_)
レイラーは照りつけてくる陽を見やる。
「…知らなければ幸せだったのに。」
レイラーは思わず、それを口にした。
_なら、研究の意味とはなにか?
探求とはなにか?
____イロニア財閥の意味とは、なにか?
(…違う、違う…探求こそ至高で、絶対…で。)
(…けど…)
(もう、嫌だ…)
レイラーは、そんな弱音を独白した。
知りたくなかった事実は、一般人はおろか、発表者ですらひどく傷つけるものとなる。
我々はすでに掌の上だ、先人の文明はタヒんだくせ、文明の遺した呪いだけは、此処に遺された。
「…あ、あぁ…」
「ウパパロン様…ごめん、なさい…」
「…きっと…見てますよね。」
___
「…名前は思い出せますか?」
優しそうな女の医者が問い、患者である女は答える。
「…Latte、でしたよね。」
「えぇ、Latteで合っています。」
無機質な病院で、Latte、と呼ばれる女は診察を受けていた。
「…なら、貴方が”謝りたい”と思っている相手は?」
(…謝りたい人の名前)
「…すみません。」
Latteは、心から申し訳なさそうに謝った。
「…全く、思い出せないんです。」
「喉まで出かかっているとか、そんな感じでもなくて」
「…見つけたいのに…」
医師も、苦しむLatteに何も言えず、ただ悲しそうな、どこかやるせなさそうな目をした。
「…絶対大丈夫です、貴方なら…絶対思い出せます。」
「…本当なんですかね…」
「えぇ、大丈夫です…」
女の白く細い両手が、Latteの左手を包む。
少しびっくりした様子でラテは、医師の方を見た。
無機質な病室に比べ、彼女は温かみのある白髪をして、優しそうな目をしている。
こんな所で働いては自らまで精神を病んでしまうのではないか?なんて考えが浮かんでくるほどにその目だ。
だがまっすぐ、まっすぐLatteの紅い目を見ていた。
「…Latteさんは、絶対なんてない、なんて…言うのかもしれませんが…」
「私は、それでも貴女に”絶対”って言いたいんです。」
信念すら感じるほど真っ直ぐな目だ。
「…どうして…」
うろたえるかのようにLatteは聞く。
「…だって、思い出したいって泣いてしまいそうになるくらい、その方のことを大切に思っていたんですよ?」
「…絶対、貴女なら思い出せますから…。」
所詮カウンセリングだと、Latteは思っていた。
だか_そんなものではなかった。
信念の宿る目からは、ビジネスの匂いなんて何も感じない_
“純粋な想い”がそこには宿っている。
___
(…………)
ウパパロンは、4月3日にされたレイラーの発表から2日ほど、部屋に籠りっきりになっていた。
執事はひどく心配する、だがきっと、今だけはそうするべきだと思い、待つことにした。
(…ウパパロン様…)
(…そう、ですよね。)
イデアリス財閥にとっては、どんでん返しのような発表が_よりにもよって、手を組んでいた相手からなされたのだ。
それは理想を根本から壊すようなものだ、機械の電子基板を粉々に破壊するような、残酷なものだ。
(_何年も掲げた理想が消えるというのは…本当に辛いことだと思います)
(私だってこんな…こんな残酷なことをしようとして、そんな未来を想像していたことが…あまりに怖くて仕方ないのですから…)
(ウパパロン様が憎んだ”タヒ”が正しいなんて…)
執事は俯く。
なにも、傷を負ったのはウパパロンだけでは無いのだ。
イデアリス財閥の者全員が、大なり小なり傷を負って、今は痛み分けをしているような状態なのだ。
_それは、半壊滅とも言えるのかもしれない。
(…立ち直ってくれる、って信じてます…)
コメント
1件
第44話読みました…真理の重さがずしりと来る回でしたね。八幡宮さんの「出たくないんだよ」っていう本音がすごく人間らしくて、逆にそこに胸を突かれました。レイラーさんの「知らなければ幸せだったのに」は、探求者としての痛みがひしひしと伝わってきて…。Latteさんの記憶喪失のシーンも切なくて、医師のまっすぐな眼差しが救いでした。ウパパロン様の籠りも含めて、みんなが傷を負ってるのが伝わる回。次も気になります。