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高校で出来た彼女。
郁とはたくさんの思い出を作った。
遊園地に行って、観覧車に乗ったり、水族館に行ってお揃いのキーホルダーを買ったり、
これ以上ないくらい幸せな日々だった。
大好きだった。
あの日もデートで、
いつもの待ち合わせ場所で待ってたんだ。
合流した刹那、信号無視したトラックが突っ込んで来て、
俺を庇った郁は即死。
俺は、記憶を失った。
周囲の人間は口を揃えて「あなたが生きててよかった。」そう言った。
俺は記憶を失ったのに。
何か大事なことを忘れてる気がしてならなかった。
思い出そうとすれば酷い頭痛に襲われ、いつからか俺は失った記憶を取り戻すことを諦めた。
病院に入院してから3日。
ふと、病室の机の上に日記が置いてあることに気づいた。
鍵付きの日記。
鍵にはダイアルがついていて、4桁の数字を入力すると開くもの。
なぜかわからないけど、俺はその4桁の数字をなんなく入力できた。
10月11日。
なんの数だったんだろう…
中を開くと、丸くて可愛らしい文字が書いてあった。
『3月4日
同じクラスの男の子と初めて話した。
いつも一人で外を眺めている彼。
休み時間には本を読んでいて、クラスメイトと馴れ合いをしない彼
いつからか、目で追うようになっていた。
勇気を出して彼に話しかけてみると、思ってたよりクールで、冷静な人だった。
緊張したけど、話せてよかった。
もっと沢山話したいな』
分厚い日記だったのに、1日分しか記入されていない日記に違和感を感じた。
普通、1日で日記をやめるか?
日記の持ち主を探そうとしたが、名前は書いておらず、机に戻した。
その日の夢に、一人の女の子が出てきた。
黒髪で、ストレートヘアの可愛らしい女の子。
笑顔で何かを話しているが、声が聞こえない。
笑っていると思ったら涙を目に浮かべ始めた彼女。
どういうことだ?