先に仕掛けたのはミミズクだった。地面を踏みしめ、鎧を砕くが如くの勢いで斬撃を入れる。ガチン!!という音が一帯に響き、閃光の如し素早い一閃を入れたと思ったが、鎧の一部が黒く焦げ、煙をシュウシュウと音を立てて上げているだけで、ディアス本体には一切のダメージが入っておらず、それどころか歓喜の表情が浮かんでいるようだ。
「いい……とてもいいぞ。俺は、……俺は!お前のような剣豪を求めていた。」
鎧を被った日本流の騎士も改めて構えに入る。ディアスはこの剣戟を楽しみたいようだが、こちらとしてはそうそうとこの戦闘は終え、はるか彼方の宮殿を目指し、走りたいところだ。しかしそこまでさせてくれないのが、今回の一級品の敵、裏摩天六角だ。正直ここでの戦闘で相対するとは思ってはいなかったが、当たった分には戦うしかないー
「お前ら!先にいけ!!」
「はっ!?」
ミミズクから来たのは、驚くべき答えだった。無理をしているように見えるが、ただの強がりともとらえられない。それほどまでも強い気迫なのは、この場にいる全員に伝わっていた。
「俺が一人でやってやるっていってんだよ!!」
カジが反論にはいる。
「そんなの無謀だ!」
カジが助太刀に入ろうと、必死で走り出す。それを止めたのはカムイだった。彼も驚きの表情を浮かべていたが、彼は分かっていた。ミミズクが騎士として、最後まで戦い抜こうという誇り、気概を見せつけようとしているのを。
「いくぞ……ミミズクの必死の覚悟、無駄にするわけにはいかない!!」
リチナの目にも涙が浮かんでいる。
「くっ…!!……ミミズクさんっ…ごめん…」
「はっ、それでええんや!」
カジ一行はミミズクの雄姿を見届けて、岩山を後にし、宮殿を目指していた。
「俺は…感動した!お前は真の剣豪だ!俺はこういう戦いを求めていた!」
「あーもーうるさいなぁ!痛いからはよ終わらせようや!」
両者流血を流し、限りなく限界は近いだろう。それでも、騎士の誇りが彼らを立たせていた。
ここも先にミミズクが動いた。先ほどより、動きは遅いが、今度は確実に二撃、三撃を入れ、流麗な技となり、ディアスに届いた。ディアスからも鮮血が上がる。しかし倒れたのはー
「ガハッ!?」
ミミズクだった。二撃目でディアスから一閃を食らったようだ。おそらくあの一撃ならば肺をざっくりいかれたのだろう。
「うーん、いい勝負だった。お前のような剣豪ー」
ディアスが振り向いた…と、同時に彼の頬が貫かれた。声にならない痛みが岩山に響く。
「だから……負けられへんやろ…!」
彼は、本来ならもう立てている状態にはない。彼を立たせているのはやはりー
「根性ー!!!!」
決死の思いで、ミミズクが突撃する。
「もう、しつこいなぁ!」
ディアスがかるく一突きをする!それをかるくミミズクが避ける。驚いたが、それをつかの間に、ミミズクが距離を詰め…一撃!二撃!三ー
「喰らわないっ…!」
ディアスも残りの力を振り絞り、斬撃を浴びせる。
この戦い勝利したのはー
「…………俺だ…ミミズクを討伐した。」
剣豪ディアスは命の取り合いを制し、剣豪としての腕をまた一段と上げたのだった。
「今からそちらへ向かう。やつらを挟みうちだ。」
そう通信機に言い放ち、冷たい空気が入り交じる岩山をディアスは後にし、カジを追いに、荒野へと向かった。
ミミズクの訃報を知らないカジたちは、全速力で宮殿の方向へと向かっていた。しかし前方に黒い影が一つ浮かんだ。カムイが静止し、声を掛ける。
「誰だ。」
「………フクローの席を埋めし、新裏摩天六角!ロクロク!!」
長い角と青白い顔、猫のような瞳孔が冷たく、しかし力強く、こちらを睨んでいた。