※尻すぼみな内容。
よく笑う奴。
喜怒哀楽が豊かで、とんでもなくでけぇ声で叫ぶこともある。
素直で自分に正直でふざけてるようで真面目。
無理してることもたくさんあるのに、それを人には見せない努力家で頑張り屋。
そういうところがみんなに好かれてるんだろうなと思う。
それを言ったら、それトラゾーもじゃんと笑い返された。
俺のしてることと、ぺいんとのしてることの仕事量は雲泥の差がある。
編集というのはとても神経も遣う。
それに面白くする為のパフォーマンスにだって気を遣う。
それを1人じゃないにしてもほぼぺいんとが担っている。
何か手伝ってあげたいけど、俺じゃ分野が違うから下手なことはできない。
今だって、疲れてソファーで寝落ちしてるぺいんとにしてあげれることは起こさないことと、起きた時に風呂を勧めてあげることくらいだ。
静かな寝息を立てて眠るぺいんと。
普段の騒々しさとは乖離している。
まさしく陽そのもの。
イメージカラーだって黄色やオレンジのような暖色だ。
「うぅ、ん…」
少し顔を顰めて寝返りを打つぺいんと。
そのせいで落ちそうになる暖かめのタオルケットを掛け直す。
「寝てる顔じっと見るの新鮮だな…」
笑った顔や驚いた顔、怒ったり泣いたり。
ホントにコロコロと表情がよく変わる。
感情というのを隠さない。
いや隠せないが正しいかもしれない。
だからぺいんとは思ったことはすぐに口に出すし、俺にして欲しいことも素直に言う。
行動原理が実に率直だ。
好きだという言葉も、行動もきちんと示す。
「……って、何思い出してんだ俺は」
邪な思考を手で追い払った。
「お茶飲も…」
背を向けて立ちあがろうとしたら腰に腕が回ってきて、その場に座り込むようにして逆戻りした。
「び、っくりした……起きてたのかよ」
「いま、おきた…」
寝起きで、しかも疲れのとれてない掠れたひっくい声。
「お茶淹れようと思ったんだけど、ぺいんとも飲むか?」
「いらねぇ…」
ぎゅうっとしがみつかれて身動き取れない。
「編集すすまないの?」
「ほぼ、終わってるけどもうちょい…」
腰に顔をぐりぐりと押し付けてくる仕草は子供が母親に甘えてるようだ。
ひょこひょこ覗く明るい髪色の頭を撫でる。
「お疲れさん」
「はぁー…癒される…」
疲労の滲み出る声。
心身共にお疲れのようだ。
「俺で癒されるって相当お疲れじゃん…」
「何言ってんだよ。お前がいるだけで俺は癒されんの」
「は…」
腰から手を離して起き上がったぺいんとは、フローリングに座り込む俺を後ろから抱き締めるようにして肩に顔を埋めた。
「うゎっ」
「めっちゃえぇ匂い…」
「いやおんなじじゃん…」
少し擽ったくて肩を竦める。
どうして俺はこんな薄着なんだ。
風呂上がりだからだよ。
と1人脳内ツッコミをする。
「髪ちゃんと乾かせよ。風邪引くぞ」
「短いからすぐ乾くし…」
「トラゾーそれで何回風邪引いたよ」
「うぐっ…」
言われた通りそのせいでぺいんとに迷惑をかけた。
それも何度も。
「ったく…」
呆れたような言葉の割には声色は楽しそうだ。
完全に覚醒したのか暇になったぺいんとは襟足から見えてる俺の項をつついた。
「ひ、っ」
ぺいんとの手が思っていたより冷たくて驚く。
「ぺ、いんと手ぇ冷たい」
暖房かけてても冷えるもんは冷えるのか。
「トラゾーはあったけー。湯たんぽみてぇ」
擦り寄るぺいんとを引き剥がすのはとうの昔に諦めてる。
無理にしても疲れるのは俺だ。
それに嫌じゃないから。
「基礎体温高いし、風呂上がりだから…」
「やからいい匂いすんだ」
すん、と匂いを嗅がれる。
「ちょっ…やめろし…っ」
「あー…このまま寝てぇ…。でも、まだ作業残ってるし…」
顔は見えないけど表情はきっと曇っている。
そういう顔のぺいんとはあんま見たくない。
「なぁ、ぺいんと離して」
「えー…やーだー…」
「ちゃんと正面からぎゅってしたいから離して」
そう言ったら光の如く腕が離れる。
素直だなぁと苦笑いした。
姿勢を正して前からぺいんとを抱き締める。
「こっちのほうが俺、好き。ぺいんとの顔見えるし」
「っ〜!…トラゾーのタラシめ…っ」
「誑し込んでるのはぺいんとだけだもん」
ぺいんとの顔がぱっと赤くなった。
「よーしよし、ぺいんとは頑張ってるぞ。偉いなぁ」
「ガキ扱いすんなや…」
「特別扱いだし。ぺいんとにしかこんなんしねぇし」
「…お前、俺のこと喜ばせるのうますぎ…」
「ぺいんとには笑っててほしいからな」
サラサラの髪を撫でるとぺいんとは諦めてさっきと同じように肩に顔を埋めて深く息を吐いた。
疲れてるのはマジのようだし。
ホントなら俺に構ってる時間も暇も余裕もないのに。
「好きだな…」
少しでも、こうやって頼ってくれるところが。
ちゃんと返してあげたい、頼ってくれることに対して力になってあげたい。
「俺もトラゾーのこと好きだぜ。お前にはずっと笑っててほしいくらい」
「!、」
「俺さ、トラゾーが落ち込んでた時、結局何もしてやれんかったからちょっとでも笑ってほしんだよ。できればその役目は俺であってほしい」
「ぺいんと…」
顔を上げたぺいんとは歯を見せて笑っていた。
「トラゾーは笑った顔が1番可愛いからな」
「可愛いって言われると複雑だけど……俺も同じだよ。ぺいんとは笑顔が1番似合うから、ずっと笑っててほしい。俺はそれを傍で見てたい」
「褒めてんのに…。まぁ、お前の可愛いのを知ってんのは俺だけでじゅーぶんだしな。他の奴になんか見せちゃんねぇ」
「お、ま……恥ずかしい奴…」
ぎゅっと抱き締められて背中に手を回してポンポンと叩く。
「…ほら、起きたんなら一旦風呂入ってあったまって来いよ」
「じゃあトラゾーも入ろうぜ?」
「俺はもう入ったの。それに入るだけじゃ済まなさそうだから絶対に嫌だ」
距離を取ろうとして胸に手を置く。
「ほら離せって」
「例えば?」
「は?」
「入るだけじゃ済まないって、ナニされるつもりなんだよ」
わっっるい顔したぺいんとがニヤニヤと笑っている。
あ、この顔は碌でもないことを考えてる顔だ。
「べ、…別にっ!されるつもりなんてねぇし!」
ぺいんとは俺を抱き締めたまま立ち上がって腕を掴んできた。
「ちょっ、ぺいんと⁈もう入んないって!やだっ!」
「疲れた俺の介抱しろよー」
「介抱しろよーじゃねぇって!お前のその顔は良くないこと考えてる顔なんだってば!」
ずるずると引きずられるようにして少し前までいた風呂場に連行されていく。
開く扉の中に押し込まれた。
「トラゾーには、俺のことたくさん癒してもらうからよろしく。俺が笑ってれるように頑張ってくれよ?」
「ばかばかばか!あッ⁈ちょっとどこに手ぇ入れ…待っ、あ、あーーー!!」
その後、どうなったのかはご想像にお任せします。
ただベッドに死んだように沈み込む俺と、パソコンに向かって生き生きと作業するぺいんとがいたとかいないとか。
「(まぁ…笑ってくれてるならいっか。俺は、もう寝る…)」
楽しそうにする後ろ姿を見て俺は瞼を下ろした。
コメント
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やっぱりpntrはこういうあったかい系合いますね!癒される〜(◦ˉ ˘ ˉ◦)