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全ての行動には意味がある。ないのは、ただの自己満足。
(アルベドは、夢のために動いていた。そのやり方が、正しいか、正しくないかは置いておいて。彼の出来ることを行っていた)
それは、賞賛されるべきことじゃないだろうか。やった事は、目を瞑るとして。最終的に、その殺された人達は、罪に問われるものだったかも知れないし、どっちにしろ、裁かれていたかも知れないと。そう思って、目を瞑る。
肯定はしきれないけど、否定もしきれないから。
彼の黒い手袋をギュッと握って、私は、アンタとおなだと間接的に伝える。アルベドが、どう受け取ったかは知らないけど、少なくとも私も、同罪だって、そう言いたかった。
色々と犠牲にしてきた手。
確かに、救えないのに救おうと無茶したときもあった。無謀すぎた。それが、私の罪なのかも知れない。
今こうなっている原因もそれだって。
(いや、半分は、皇帝のせいかもだけどね!)
あの、性格ひん曲がりすぎている皇帝のせいもあるとは思っている。でも、エトワール・ヴィアラッテアの居場所を、本意ではないとは言え、奪ってしまったことには変わりなくて、因果応報……? いや、もっと、酷いものが降り注いでいると考えれば。
「エトワール?」
「うわっ、何。いきなり話し掛けないでよ」
「いや、それは酷すぎねえか。ずっと、呼んでたんだが」
「え?そうだったのごめん」
「謝るなら、先に確認しろよ」
と、アルベドは、呆れたようにため息とついた。
そんなに考え込んでいたんだ、と我ながら、変なところで集中するなあ、なんて思いながら、私は自分で風魔法を付与して、湖から、岸に戻る。ふわりと、風に銀色の髪が揺れた。
「アルベド」
「何だよ」
「何度も言うけど、ありがとう。私の味方でいてくれて。私の『旅』に付合ってくれるっていってくれて」
「ああ……」
「アンタがいなきゃ、矢っ張り折れてた」
強がっているだけで、本当は弱い。何も出来ない。それは、一番自分が理解しているはずのものなのに。
(ダメだなあ……ほんと)
強がりが、一番自分の首を絞めるものだって、今更ながらに気づいた。だからといって、皆に弱みを見せれば、その弱みが握られてしまうわけで。
だから、信頼できる人が欲しい。それが、アルベドだったっていうだけの話。
「今更だ」
「ふーん、もしかして、ツンデレ?」
「はあ?」
「耳赤いけど、私にそう言われて、嬉しいんじゃないかなあって」
「自意識過剰だろ。つか、ちけえんだよ」
「さっきまで、自分から抱き寄せてきた人が何を言うの!」
私が、そう言って、詰め寄れば、アルベドは、ジリジリと逃げいていく。自分から距離をつめるのは大丈夫で、人から距離をつめられるのはいやだって、どういうことなんだと言いたかったが、その気持ちは私にもよく分かるので、言わないことにした。
けれど、耳まで真っ赤なアルベドを見ていると、何だか笑えてきて、それでいて彼らしい反応をしてくれて、安心する。この、安心の積み重ねで、私達の信頼は築けてきているんだと思う。
(さて、まあ、これからどうするかだけど)
エトワール・ヴィアラッテアに会いに行くことは、自殺行為だし、かといって、彼女をどうにかしなければ、私はずっと逃亡生活。それに、アルベドをずっと付合わせるのは嫌だなあと思った。けれど、それしか方法は今のところなくて。
(もっと、私に力があれば良かったのかな……)
エトワール・ヴィアラッテアを殺せるような、そんな勇気というか、覚悟があれば、こうなっていなかったかも知れない。でも、魂を殺すってどういうことなんだろうか。私が、エトワール・ヴィアラッテアに攻撃したら、私まで、また、攻撃を喰らってしまうのではないかと思った。そういう可能性を考えると、やはり何も出来なくなってしまう。
アルベドがいるから孤独感はないけれど、皆にあいたいっていう気持ちは少なからずあるわけで。
「どうしたら、いいのかな……」
「取り敢えずは、逃げるしかねえよな。まあ、彼奴が、軍勢率いて、やってくるわけじゃねえだろうし、そこは安心しろよ」
「ぐ、軍勢……」
「あくまで、エトワール・ヴィアラッテアが狙ってんのは、お前の身体に入り込めるチャンスな訳だからな」
「つまり、私の心を弱らせることが、彼女が一番とってくるであろう行動ってこと?」
「そうなるな」
と、アルベドは、頷いてくれた。
精神攻撃ばかりなのはそう言うことなのだ。私が、マイナスな感情になればなるほど、身体と、魂が分離して、その間につけ込んで張り込むことが出来るって言う、多分そう言うシステムなんだと思う。
だから、私が完全に折れたとき、それは、彼女に身体を明け渡してもいいと言っているようなものだと。
私に出来ることは、強い心を持つことなんだろうけど、人間って、誰もが鋼のメンタルなわけじゃないし、そもそも、そんなメンタルの人は存在しないと思う。挫折したからこそ、だんだん蓄積された、精神が、堅くなっていっただけなような気がするから。私は、そんな強くない。
「まあ、深く考えてもしかたねえことだ。なるように成るだろ」
「そんな、適当に言わないでよ。命がかかってるんだから」
「俺が、守るから大丈夫だろ」
「だから」
「そう言うことだ。巻き込むとか、そんなこと思わなくていいって言ってんだよ。俺がやりたくてやってること。さっきも言っただろう。エトワール、優しいだけじゃ何にも出来ねえぞ」
「……う」
「俺は、その優しさは嫌いじゃねえけどな」
「ほんと、飴と鞭」
照れ隠しを入れないで、話が、ややこしくなるから、と私は、アルベドを睨み付ける。勿論、こんな睨みが、彼の何かを動かすことになる訳もなくて、アルベドは、フッと笑うと、私の頭を乱暴に撫でた。
「でも、このままずっと野宿って訳ではないでしょう?」
「俺は、良いけどな。慣れてるし。つか、寝れねえから」
「私は寝たいの!つかれたじゃん。今日、色々あって。まさか、今日追い出されるなんて思っていなかったし……こんな所で安心して寝られるわけ?逆に、狙われそうじゃない?動物とか、あと、あと、暗殺者とか」
「いねえよ」
「なんで言い切れるのよ」
野宿をしないといけない理由はあるけれど、それでも、野宿なんてしたことない……事もないけど、いやなのは確実だった。けれど、アルベドはそんなの全然平気だという。そもそも、不眠症だし、色々あって、アルベドは夜も眠れないしなんだけど……そういう問題じゃない。
私が、抗議の声を上げれば、アルベドは、めんどく下げに、顔を歪めた。
後、正直、危険の方が多いと思う。もし、皇帝が、何かてを出してきていたら、エトワール・ヴィアラッテアが、睡眠というものを奪いに来て、精神的に追い詰められたらとか、色々想像が働いてしまうから。
「大丈夫だから、安心しろ。ここらに、魔力も気配も何も感じねえからよ。だから、俺が起きてるっていっただろ」
「アルベドの疲れはどうやって取るのよ!」
ただでさえ、変身魔法なんてもの使って、ラヴァインに化けていたって言うのに、どれだけ、魔力が残っているのか、計り知れなかった。
つかれてないという、そんなこと無いでしょう。だって、アルベドだって人間何だか。
「ほら、こいよ」
「な、何」
「膝枕」
「はあ!?それで、寝ろって!?」
「じゃあ、石でも枕にして寝るって言うのかよ」
「発想が、ヤバいのよ。そんな、頭ぶつけている人にしか見えないんだけど!?」
アルベドの会話でつかれてしまうなあ、と思った。でも、楽しくないわけじゃないし、寧ろ、心が紛らわせられて良いんだけど。
私は、ポンポンと、膝を叩いている、アルベドのほういすっとよって、彼の膝の上に頭を下ろした。少し堅いけれど、安定している膝だと思う。男の人の太ももって言う感じがする。
そんな私を上から見下ろして、アルベドは、ふわりと、首に巻いていたマフラーをかける。
「そこまでしなくても良いって。アンタが、寒いじゃない」
「お前が、風邪ひいた方が困るんだよ。いいから、寝ろ」
と、ぶっきらぼうに言うアルベド。本当に調子が狂うな、ってアルベドを見れば、矢っ張りほんの少し、耳が赤くなってたような気がした。
恥ずかしいなら、かっこつけなければ良いのに。
でも、その優しさが、私は好きだ。
「おやすみ」
「ああ、お休み。エトワール」
おやすみと、言われた瞬間、一気に押し寄せてきた、睡魔に私は引っ張られるようにして、目を閉じた。そんな、私が、意識を夢の中におとしてから、アルベドはぼそりと呟いていた。
「ほんと、無防備だな。お前は」