重湯からの脱出

後１日。

重湯もしっかり食べて、身体は活力がみなぎってきた。

今日しっかり食べると、お粥になる。

七分粥くらい食べさせてくれると思っていたが、老婆に「十部くらいじゃの」と言われた。

ほんの少しだけ米が浮いてる状態。

老婆の家で1度、食べた。

目黒は作り方を聞いて、明日から作ってやろうと思っている。

渡辺ーご飯これだけ？

目黒ー七分粥なんてまだまだだそうです。

渡辺ーお婆ちゃん？

目黒ーん、まだ無理だと思うって。

渡辺ーんもぅ！

目黒ー自業自得。

渡辺ー分かってる！

そうして、重湯生活から脱出出来たのだ。

痩せてはいるが、力は戻りつつある。

岩本からも、踊っていいと言われた。

不安定だった、唄声もしっかりしてきた。

カセットに緩やかな曲を録音している。

パワー系じゃない曲。

老婆の家に持って行く。

デッキがあるのを見つけていたのだ。

渡辺ーお婆ちゃん、俺の仕事。

老婆ー歌唄いか？

渡辺ーうん、お婆ちゃんに聴いてもらおうと思って。

老婆ー坊の声が分からんけ。

渡辺ー一緒に聴こう。

老婆ー教えてくれるけ？

渡辺ーうん。

「これが俺の声」「これは目黒の声」と何度も聴いて教える。

老婆ー婆には難しいけ、歌聴いとる。

渡辺ーうん、聴いて？

老婆ー粥食べとるか？

渡辺ーご飯がちょっと浮いてるやつ。

老婆ーちょっとずつじゃ、坊が元気になるにゃ、時間かかるけ、大事な人のため、しっかり食べらにゃ。

渡辺ー食べてるし踊ってる。

老婆ーええことじゃ。

渡辺ーうん。

家に帰ると目黒がもう帰ってきていた。

目黒ーどこ？

渡辺ーお婆ちゃんち。

目黒ーふらふら出歩かないで。

渡辺ー歌のカセット届けてきた。

目黒ー歌？

渡辺ー若いもんはしっかり仕事せぃって言われてたから。

俺の仕事渡して来た。

目黒ー良かったね。

渡辺ーお腹空いた。

目黒ーちょっとお粥らしく作ったから。

渡辺ー食べる食べる。