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人間になれなかった少年少女【全4篇】

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人間になれなかった少年少女【全4篇】

4 - 追いつめられた『人間の子』

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2024年07月06日

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この物語はフィクションです。

実在する人物、出来事、土地などは一切関係ありません。


身分格差、爆弾などの表現があります。

苦手な方は閲覧をお控えください。

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少年は、大変裕福な家庭に産まれた。家柄がよく、父、母、それからたくさんの使用人と共に暮らしている。 中でも、少年と特に仲の良い使用人がいた。その使用人とは歳も近く、仕事が終わったあとは毎日のように遊び、何度も笑い、幸せな日々を過ごしてきた。

少年と使用人の間に主従関係など存在しない。いつも対等で、『友達』と呼ぶには十分すぎるだろう。



しかし、ある日を境に多くいた使用人は忽然といなくなった。“入れ替わった”の方が正しいだろうか。料理人も掃除係も世話係も、みんな新しい人。もちろん、少年と仲の良かった使用人も消えてしまった。


「みんなはどこに行っちゃったの?」


そう父に尋ねる。父親は黙るだけで何も言ってくれなかった。

新しい使用人たちとの生活は決して苦なわけではない。楽しいこともたくさんあるし、居心地もいいし、何一つ不自由なことなんてなかった。

だが、やはり少年はどこか寂しさを感じている。心に小さな穴が空いてしまったように。きっとあれは一時の夢だったのだ。最初から使用人など存在しない。少年は心の中で強く思い、その穴を隠した。






それから長い時が流れ、少年は立派な大人になった。その優秀さは国の中でも上位に入る程だろう。そんな少年に1つの任務が与えられた。


「西で起こった貧民の反乱を止めてこい。」


少年には容易い仕事だった。どうせ話し合ったところで解決などするはずないし、武力行使すればすぐに終わる。そう思いながら西へと訪れた。



西の光景は、見るに耐えないものだった。右を見れば火の手があがり、左を見ればゴミの山。あちこちで叫び声が聞こえる。しばらく歩いていると人だかりを見つけた。よく観察してみると、主導者らしき人間が荷箱の上に立ち、演説をしている。なんて運がいいのだろうか。あそこに爆弾でも投げ込んでおけば全て解決。報告書には『話し合いを試みたがやむを得ず攻撃』とでも書いておこう。そんなことを考えながら部下たちに指示を出す。



爆音が辺りを轟く。少年は小さく溜め息をついたあと、都市へ戻るためにクルリと向きを変えた。





3歩目を踏み出そうとしたとき、何者かに足を掴まれた。どうやらまだ生き残っている者がいるらしい。剣に手をかけながら足元に瞳を下ろす。



目を疑った。


見覚えのある懐かしい顔。間違いない。少年の足を掴んでいたのは、かつて苦楽を共にした使用人だった。使用人はボロボロになりながらも少年のことをジッと見つめる。

使用人が生きていた喜び。再会できた嬉しさ。貧民として生きることを余儀なくされていた悲しさ。何も知らなかった愚かさ。自身で傷つけた実感。様々な感情が入り乱れる。子供の頃のように笑い合うなんてことは到底できず、ただ後悔と絶望だけが心にのしかかった。


使用人をこのまま生かすべきか。それとも国のために殺すべきか。大きな選択を迫られ、焦りと不安が募る。


「出会いたくなんてなかった。」


少年は、大きく剣を振り上げた。

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