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この物語はフィクションです。
実在する人物、出来事、土地などは一切関係ありません。
身分格差、爆弾などの表現があります。
苦手な方は閲覧をお控えください。
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少年は、大変裕福な家庭に産まれた。家柄がよく、父、母、それからたくさんの使用人と共に暮らしている。 中でも、少年と特に仲の良い使用人がいた。その使用人とは歳も近く、仕事が終わったあとは毎日のように遊び、何度も笑い、幸せな日々を過ごしてきた。
少年と使用人の間に主従関係など存在しない。いつも対等で、『友達』と呼ぶには十分すぎるだろう。
しかし、ある日を境に多くいた使用人は忽然といなくなった。“入れ替わった”の方が正しいだろうか。料理人も掃除係も世話係も、みんな新しい人。もちろん、少年と仲の良かった使用人も消えてしまった。
「みんなはどこに行っちゃったの?」
そう父に尋ねる。父親は黙るだけで何も言ってくれなかった。
新しい使用人たちとの生活は決して苦なわけではない。楽しいこともたくさんあるし、居心地もいいし、何一つ不自由なことなんてなかった。
だが、やはり少年はどこか寂しさを感じている。心に小さな穴が空いてしまったように。きっとあれは一時の夢だったのだ。最初から使用人など存在しない。少年は心の中で強く思い、その穴を隠した。
それから長い時が流れ、少年は立派な大人になった。その優秀さは国の中でも上位に入る程だろう。そんな少年に1つの任務が与えられた。
「西で起こった貧民の反乱を止めてこい。」
少年には容易い仕事だった。どうせ話し合ったところで解決などするはずないし、武力行使すればすぐに終わる。そう思いながら西へと訪れた。
西の光景は、見るに耐えないものだった。右を見れば火の手があがり、左を見ればゴミの山。あちこちで叫び声が聞こえる。しばらく歩いていると人だかりを見つけた。よく観察してみると、主導者らしき人間が荷箱の上に立ち、演説をしている。なんて運がいいのだろうか。あそこに爆弾でも投げ込んでおけば全て解決。報告書には『話し合いを試みたがやむを得ず攻撃』とでも書いておこう。そんなことを考えながら部下たちに指示を出す。
爆音が辺りを轟く。少年は小さく溜め息をついたあと、都市へ戻るためにクルリと向きを変えた。
3歩目を踏み出そうとしたとき、何者かに足を掴まれた。どうやらまだ生き残っている者がいるらしい。剣に手をかけながら足元に瞳を下ろす。
目を疑った。
見覚えのある懐かしい顔。間違いない。少年の足を掴んでいたのは、かつて苦楽を共にした使用人だった。使用人はボロボロになりながらも少年のことをジッと見つめる。
使用人が生きていた喜び。再会できた嬉しさ。貧民として生きることを余儀なくされていた悲しさ。何も知らなかった愚かさ。自身で傷つけた実感。様々な感情が入り乱れる。子供の頃のように笑い合うなんてことは到底できず、ただ後悔と絶望だけが心にのしかかった。
使用人をこのまま生かすべきか。それとも国のために殺すべきか。大きな選択を迫られ、焦りと不安が募る。
「出会いたくなんてなかった。」
少年は、大きく剣を振り上げた。
コメント
11件
こんな最悪な再会の仕方あるか!悲しすぎるよ… 武力行使なんて言葉使わないでよ!よく言えば決断力が早いんだろうけどさ、人が○ぬのを恐れない上層部特有のやばいところが出てるって! それも人間らしいってことか、でも最後に感情が入り交じってぐっちゃになるのは本当に真っ黒な人間になれなかったってことなのかな
わあぁぁ……悲しいぃ……辛いぃ…… この悟らせる終わらせ方凄く良い このまま心の穴は広がって、心は穴で崩れていくんだろうな
"人間になれなかった"なのに人間の子か… 友人を○した自分は人間失格、みたいなことなのかしら