ベランダで星を見るのに、あまり寒くなくなって来て、夜の時間も短くなって、俺は季節の移り変わりを感じていた。
何億光年もの彼方から届く星の輝きは、悠久の時の流れを俺たちに教えてくれる。
朝が早かった阿部ちゃんは、最近買った簡素なリクライニングチェアで静かに寝息を立て始めている。
静寂の夜。
朝になるとまた慌ただしく一日が過ぎ去っていってしまうから、今の時間だけが俺にとっての本当の休息だ。
愛らしい目を隠すようにかかった阿部ちゃんの前髪をかきわけるようにして、形のいい額を撫で、キスを落とす。
まるで悠久の時の流れが移ったかのような心の安息を感じる。
この時間がなければ、俺は頑張れない。
💚「め、め……?」
長い睫毛が数度瞬き、阿部ちゃんがうっすらと目を開いた。
🖤「風邪引いちゃうよ。ベッドに行く?」
💚「んーん。もう少しこうしていたい」
掛けていた膝掛けを胸元までたくし上げて、阿部ちゃんは微睡みの中で微笑んだ。
阿部ちゃんの近くを離れたくなくて、入れ替えられないでいた二つのマグカップを手に取る。
🖤「阿部ちゃんも飲む?」
声を掛けたら、口を少し開けて、阿部ちゃんは再び眠りの沼に落ちていた。
よほど疲れているのだろう。テレビでも雑誌でもこのところ阿部ちゃんを見ない日はなかった。
誇らしくもやっぱり寂しく、会えない時間が積み重なるたびに、胸に愛が積もっていく。
とにかく無理をしないでほしい。阿部ちゃんはすぐに痩せてしまうから。
そこまで考えて、まったく同じことを昨年の夏ごろ阿部ちゃんに言われたことを思い出した。
お茶のお代わりは諦め、また夜空を見上げる。
東の空からは、朝を告げる白い空が、少しずつ夜を侵食し始めていた。
おわり。
コメント
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何回も読んでるんだけど、ほんとに言葉選びが美しくてすきすき
この作品で私が書きたかったことは、阿部ちゃん、むちゃくちゃあっちこっちで見るなあ!!!😳ってことです💚(ただそれだけwwwww
いや、まきぴよさんはしょぴ担💙💙💙