(我ながら積極的になったなぁ……)
そう思いながら顔を離し、目を開けると、ポーッとした表情の涼さんがいる。
「……おかわりほしい」
「わんこ蕎麦じゃないんですから」
彼の言葉を聞き、私は思わず真顔で突っ込む。
「わん」
すると涼さんは犬の鳴き真似をすると、私を仰向けに転がし、その上に四つん這いになる。
「……じゃれてもいい?」
嬉しそうに目を細めた涼さんに尋ねられ、私は内心ドキドキしているのを押し隠し、渋々と頷く。
「ある程度なら」
「わんわん」
彼は語尾にハートマークでもついていそうな甘い声で犬の鳴き真似をし、私の首筋にキスをしてくる。
「ん……っ」
フワッとシャンプーの香りがした時、私は「我ながら変態だ」と思いながら、そっと彼の匂いを吸う。
涼さんはいつも私の事を〝猫〟と言っているけれど、彼のほうこそ高級な大型犬のように思える。
どこから見ても死角がないように思えるほど、綺麗に磨き上がられた美貌に肉体。
ずっと朱里が美容に気を遣っているのを見ていたり、最近自分でも少し気にするようになったから分かるけれど、美を保つってとても大変だ。
涼さんがなるべく朝ランし、空いている時間はジムやプールにも通っているのは知っている。
髪を整えているのは勿論、『役員は営業みたいなものだから』と、人に見た目で判断される事を念頭に置き、眉毛や爪もサロンに行って整えている。
人間だから汗をかくのは当たり前だけれど、夏場は相当匂いに気を遣っているみたいだ。
涼さんといる時はいい匂いしか嗅いだ事がなく、常に綺麗に整った彼しか知らない。
という事は、それを他人に見せないように水面下で努力し続けているという事になる。
しかも涼さんは「こんなに努力して美意識高い俺、凄くない?」みたいな押しつけをしない。サラッと当然のように美しいのだ。それもまた凄いと思う。
そんな綺麗で凄い人を、私が独り占めしていいのかな……、と毎回思ってしまう。
「可愛い、恵ちゃん」
涼さんは首筋から鎖骨へと、優しいキスをしながら、独り言のように囁く。
彼に「可愛い」と言われると、相変わらず慣れていなくてムズムズする。
でも少しずつ、こうやって愛される事に慣れてきた気がする。
以前はガチガチに固まって、何をどうしたらいいのか分からなかったけれど、今は涼さんの髪や背中を撫でる程度の事はできるようになった。
「……脱がせてもいい?」
上目遣いに尋ねてくる涼さんを見て内心で「ずるいな」と思いつつ、私は小さく頷く。
「ありがとう」
彼はチュッと私の額にキスをすると、ゆっくりとパジャマのボタンを外していった。
やがてパジャマの前身頃が左右に開かれ、ショーツ一枚の姿が露わになる。
(……恥ずかしい……)
両手で胸元を隠し、膝を擦り合わせて下腹部を隠そうとした時、涼さんはトン、と胸の谷間に指を置いた。
何も言わず、ただそれだけの動作。
なのに、まるで「動かないで」と言われたように感じた私は、無意識に動きを止めてしまっていた。
微かな衝撃を受けた部分が、心臓に近いからというのもあったからだろうか。
速くなっていた鼓動がいっそう高鳴り、涼さんの指の感覚を得て乳房の感覚が敏感になったように思える。
(う……、わ……)
遅れてゾワッと鳥肌が立ち、プツンと乳首が勃起していくのが分かる。
(~~~~っ、恥ずかしい……っ)
カーッと赤面して胸元を隠したい衝動に駆られたけれど、涼さんにジッと見つめられているせいか、体が動かない。
三日月涼という男は、生まれ持っての〝持てる人〟で、支配者階級にいる人だ。
そこにいるだけでオーラがあるし、人の目を惹きつける美貌を持ち合わせている上、相応の立ち居振る舞いを心得ている。
だからなのか、彼が鷹揚な雰囲気で見つめてくるだけで、次に与えられる命令を待たなければならない気持ちになる。
(……何か言ってよ……)
恥ずかしくて堪らないのに、何もする事ができない。
ジワジワと羞恥と焦燥感が高まり、呼吸までもが荒くなってきた頃――、彼はツツ……と指を動かして胸の膨らみを辿り、くるりと乳輪を辿ってきた。
「ん……っ」
コメント
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涼マジック🪄( *´艸`)💕