翔太は俺が、佐久間やふっかといると気になるとたまに言うけど、俺だって翔太があの人といると気になる。
💙「ふはっ…なつかし…いつのこれ」
❤️「母さんが送ってきた、幼稚園の時の写真」
💙「年少か?まだ幼いな」
❤️「でもこの水着は年中くらいかも」
話に入れずに遠巻きに聞いていると、佐久間とふっかがやって来た。
🩷「どうしたぼんやりして」
💛「別に」
💜「それが別にって顔か」
なんなんだよ2人して。
後から翔太にそれとなく聞いたら、某番組に提供する幼少期の写真を見せ合いっこしていたそうだ。
子供の頃の翔太を俺はよく知らない。事務所に入ってからの翔太しか知らない。
尖ってて、いつも対抗意識を燃やされて、突っかかってくるガラス細工のような彼しか知らない。
舘さんは俺にとっては頼りになる兄貴のような存在。どちらかというと若い頃は彼との思い出の方が多いくらいだ。
💛「幼なじみ、ねえ」
俺が翔太を意識するようになったのは、9人グループになってからだ。それまではどちらかと言うと佐久間やふっかとの方が仲が良かったと思う。いわゆる棘が取れ出してから、俺は急速に翔太本来の人懐っこさや可愛らしさに気づくことになる。
デビューしてから飛躍的に美しくなっていく翔太は、その知名度とともにますます洗練されていった。そばで見ている俺たちが一番それを感じている。
💙「強めの中火って、日本語あるのかよ」
手元のレシピを見て、翔太が俺に珍しく料理を振る舞おうと四苦八苦しているのを横目で見ながら、俺は演出プランに頭を悩ませていた。
そろそろ胸を張って独り立ちして、色んなことを手掛けられる専門家にもなりたい。まずはその手始めに自分たちのグループからと考えていた。
💙「なあー、照、聞いてる?」
💛「ごめん、なに?」
💙「ちょっと見てよ」
💛「ハイハイ」
キッチンに入ると、不揃いの野菜が、ぐつぐつと水に煮込まれていた。まな板の上にはこれから切るつもりであろう、牛肉のブロックが、どでん、と置いてある。
💛「何作ってるの」
💙「聞いて驚くな?ビーフシチューだ!」
💛「……野菜から煮込むの?」
💙「順番とかあるの?」
手元のメモを見ると、切る、の次は煮込む、しか書いてない。分量も適当にしか書かれてない。ところどころ赤ワイン、とかメモ書きしてあるけど解読不能だ。
💛「作り方のメモ、超いい加減。イラストも意味不明だし」
💙「だって、涼太が煮込み料理なら簡単だよって教えてくれたのに」
💛「舘さんがねえ」
舘さんは緻密な性格だから、こんな教え方はしていないはずだ。どうせめんどくさがりの翔太がいい加減にメモを取ったんだろう。
俺は後を引き継いで、レシピを検索して、なんとか、つぎはぎだらけのビーフシチューを完成させた。
💙「うん、悪くない」
💛「美味くもないけど、食べれなくはないな」
💙「これは涼太に説教だな」
💛「翔太が悪いでしょどう考えても」
💙「なんでだよっ」
やはり熱意のない人間に、料理なんてさせるものではない。そう思いつつ、俺のいないところで2人仲良く料理の話なんかしてたのかと思うとつい嫉妬してしまった。
時々、翔太に何か困り事があると、舘さんは俺より先に気づいている時もあって、こっそり俺に教えてくれたりもするのだ。
悪気なく。あくまでもスマートに。
食器を片付けて寝床に入って、翔太を鳴かせている時も、今日はなんだか悔しい気持ちになってしまって、つい力が入って激しくしすぎてしまった。
そうとは知らない翔太は、やだ、はげしいと叫んで飛んだ。
意識のない翔太を後ろから抱きすくめる。
確かに俺の腕の中にいるのに、遠く感じる時、他の男の影を感じる時のやり場のない俺の怒りを翔太は知ってるんだろうか?
💛「ねえ、俺のこと愛してるって言ってよ」
返事はないから、俺は翔太を力いっぱい抱きしめた。
おわり。
コメント
16件
ひーくんの嫉妬って…いいよね💛💙
勝手にモヤモヤしちゃう彼氏大好きよ〜〜