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「本日吊るす事になったのは独逸様です。」
愛華は変わらず、冷酷、静かに死を宣告した。
そんな無情な言葉に、独華は泣くでも無く、ただ無表情のままに椅子から崩れ落ちた。
日本は絶望に打ちのめされ、炎端は静かに、冷や汗を流す。
そんな中、湾華だけが密かに勝利の笑みを浮かべていた。
「Warum… ich…」
なんとも言い難い静寂の中で、ドイツの絶望とそれを理解したくないと言う、本能的な思いから成る言葉が出た。
「独逸様、遺言をどうぞ。」
そんなドイツに、状況を理解させる間もなく、愛華は言葉をただ淡々と並べた。
「信じてくれ、俺は本当に占い師だ。独華、先にいく事を許してくれ。炎端、俺は人狼では無い」
ドイツの視界は涙で歪み、嗚咽混じりの声が響く。
だが、そんなドイツの心情なんてものをGMである愛華が考慮するわけも無く、変わらぬ表情のまま、片手を高らかに上げる。
「遺言は以上とお見受けいたします。では、さようなら。」
パチンッ
愛華が指を鳴らす音が聞こえる。
もうそこにドイツは、居なかった。
そこに今までいたのかさえ危ぶむ程に、何も無かったのだ。
「Warum… warum… warum?!」
ドイツが居たはずの場所へと、フラフラとした足取りで体を引きずるように向う。
その場で独華は膝をつき、微かな嗚咽を漏らす。涙は流れない。
ただ彼女の口から嗚咽のみ漏れ出て、苦しみと悔みが、滲み出る。だがそんなものも、会議室の重い沈黙に吸い込まれた。
「皆様、そろそろ陽が傾き、第3夜が訪れます。では、ご武運を。」
愛華が再び指を鳴らす。
席を立っている者も、嗚咽を漏らし苦しんでいる者も、その一瞬で席に座り深い眠りについた。
重い、無機質な革靴の音が響く。
愛華が刻み良い音を立てながら、ある人物の右斜め後ろまで進み行く。
愛華がその場所でピタリと足を止めた。
紅色の、不気味に光る瞳が【狩人】の眠る背中を見据えた。
その視線に強制的に目覚めさせられた【狩人】は、妙に冷静だった。
「こんばんは、狩人様。」
愛華の無機質な声が【狩人】の耳に届く。
「どなたをお守りいたしますか?。」
愛華の一言の質問に、【狩人】は少し悩んだ。
誰を守るべきなのか、誰を守ってはいけないのか。
自身を占い師だとCOした湾華。
湾華の見方をした中華とロシア。
パン屋だと思われるフランス。
最後まで騒がしいアメリカ。
何故か影が薄くなりつつあるカナダ。
そして、霊媒師だとCOし、自身を守ってくれと発言した炎端。
【狩人】は考えたが、一分も経たずに決めた。
[…………]
【狩人】は、無言のまま、タブレットに表示される一人の人物を指差した。
「おや?本当にその方でよろしいのですね?。」
愛華は【狩人】の選択に確認を取る。
[あぁ。これは、アイツの意思だ]
ただ静かに【狩人】はそう、断言してみせた。愛華の瞳を真っ直ぐに見つめながら。
「承知いたしました。では、暫しお休みください。その方が襲撃されればお目覚めになるでしょう。どうか、ご武運を。」
愛華は不気味に光る紅色の瞳を弓張月程に細め、薄ら笑いを浮かべた。
カツカツと重い革靴の音を響かせ、愛華は【狩人】から少し距離をとる。
「人狼様、起きてください。」
なにも見えない。いつも以上の暗がりの中、愛華の声だけが響く。
闇に溶け込むような影が2つ、揺れた。
「3人目の犠牲者を、ご相談の上、お決め下さい。尚、皆様深い眠りの中ですので、声を出されても安全でございます。」
ほとんど変わらない愛華の台詞が機械的に発せられた。
[炎端、なかなかに厄介だ]
[狩人は炎端を守るに違いない]
【人狼】達は、神妙な表情で、真剣に話し合いを進める。
「そちらの方ですね?では、お目覚め頂きましょう。」
愛華は心なしか、気味の悪い薄ら笑いを浮かべた。
愛華の一言に、【犠牲者】は目を開く。
寝起きすぐのせいか、意識が少し朦朧とする【犠牲者】に、【人狼】は牙を剥いた。
【犠牲者】からはほんのりとバターの香ばしい香りがする。そう、パンの香りだ。
【人狼】が【犠牲者】の首に噛みつこうとした時だった。
カンッ−
耳障りな金属の音が【人狼】の耳の奥に響いた。
【人狼】の口元にあったのは、鋭く殺気を隠さない短剣だった。
[かかったな]
確かに、【狩人】はニヤリと笑った。
だがその表情は【人狼】にはあまりの暗さで見えず、声は不思議な事に彼らの耳に届かない。それはもちろん、【犠牲者】にも、だ。
「狩人様、おしゃべりは厳禁でございます。」
淡々と、愛華は自身で起こした【狩人】を軽く叱った。
そう、愛華は言ったのだ。【狩人】へ、『その方が襲撃されればお目覚めになるでしょう。』と、確かに言ったのだ。
「闘いはそこまで。」
愛華のその冷え切った声に、起きている4人の動きはピタリと止めた。
「では、皆様、席にお着き下さい。」
事務的で機械的な指示に皆従う。
「では、おやすみなさいませ。」
パチンッ
そんな音を合図に、またもや静寂に包まれた何も見えぬほどの暗闇が訪れた。
ーー続クーー