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「……それで、どうだったんだ? 貴仁君とは」
帰宅をして、父に彼と会ったことを電話で報告をすると、さっそくそう尋ねられた。
「うーん……」と、しばし言いよどむ。
「やっぱり振られたか?」
「やっぱりって、何よ!」
やるせない気分が頭をもたげ、つい言い返す。
「ごめんなさい、大きな声を出したりして。……だけど何か、思っていたのと違うっていうか……。あのクーガの御曹司の方だから、私も期待しすぎてたのかもしれないけど、どうしても合わなくて……」
一連の出来事を思い返してみても、やっぱり彼とはどうにも噛み合わなかった気がして、そうぼそぼそと話した。
「そうかー……」と、父がため息混じりに応じる。
「まぁ天下のクーガの二代目だからな。一筋縄にもいかないか。あわよくば……とも思っていたんだが」
「あわよくばって、」
「ハハ、あの巨大企業がもしバックに付いてくれたらなんて、淡い期待をだな」
父は軽く笑って言うと、
「気にすることはないから、おまえはおまえのしたいようにすればいい。今回はいきなり結婚話など持ちかけて、すまなかったな」
私が少なからず落ち込んでいると察したのか、ねぎらいの言葉をかけてきた。
「そんなことは……。私の方こそ、あんまり上手く立ち回れなくて」
「いいから、せっかくの休日だし、後はゆっくり休むといい。ではな」
父の電話は切れた──。