気付いたらもう三月で草。
kyrtです。
もう期限とかどうでもいいです。何日過ぎようがこっちの勝手です。
いいんですもう。いいんですよ…泣(バレンタイン)
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ky side
俺は夜のコンビニが好きだ。
昼間と違い、客も店員も少ないがらんとした店内とか、夜の道で一際光る外観とか、そもそも、夜の空気自体が好きだ。
こうやって散歩がてら、コンビニでアイスやら何やら買うのが、一つの楽しみ。
今日ももちろんコンビニへ寄った。毎日行ってるわけではないので、お金の心配はない。
所持している物は、財布とスマホ。コンビニ袋を買って、ガサガサいわせながら帰るのも醍醐味。
ふと、お菓子の棚が目に入る。
やけに全面にチョコレート系が押し出されていた。
ミルクやブラック、ストロベリーからホワイトチョコレートまで、品揃え豊富に置かれていた。
────あぁそうか、今日はバレンタインだ。とは言いましても、時計を見ればもうあと数時間で終わる頃。その割に、あまり売れてないんだな。
学生のみんなは、好きな子に本命チョコを渡したりするんだろうか───青春だなぁ。
こう思ってしまうのも、もう言うておっさんになってしまったからなのだろうか。
あんな甘酸っぱい青春を味わうことはできないけど、気分だけでもいいからと少し高めのいいやつを手に取る。
レジで会計をし、明るい店内から暗い駐車場へ自動ドアを抜けて出た。
────吃驚した。危うくコンビニ袋を落としてしまいそうになった。心臓は大きく波打ち、驚いた反動で汗が吹き出してきた。
「よっ」
そう言いながらこてんと首を傾げ、イエローベージュの髪の毛が揺れているのを見た。
「『よっ』じゃねぇよ!?」
俺は驚かされた原因───レトさんに怒鳴った。レトさんは謝ったり反省したりするどころか、「なにが?」というような顔をしていた。
レトさんはちょうど店内から見えない位置に居たため、コンビニから出た時、いきなり現れたように見えたから俺はめちゃくちゃに驚いてしまった。
胸に手を当てながら、恨めしくレトさんを睨むと、「そんなかっかすんなって〜」と背中をバンバン叩かれた。
「てか、なんでこんなとこいんの?」
驚いて一気に火照った体が、冬の風に吹かれて冷たくなっていく気持ちよさを感じながら、やっとこさ思ったことを聞いた。
「いやー散歩してたらコンビニにキヨくん見えてさ。待ってた」
「視力良すぎない?───じゃなくて、『待ってた』?」
「うん。待ってた」
レトさんがにこりと笑う。マスク越しでもわかった。
「わざわざ?なんか用あったの?」
「いや特には」
「そう。じゃ───」
「いや待って嘘ついた。やっぱりある」
早口で言いながら、掌をこちら側に向けてストップのポーズをする。俺は思わず「えっ?」と間抜けな声を漏らした。
何故だか、レトさんの頬に少しだけ淡く桃色が浮かんでいた。
「ど、どうしたの?」
「えっ…と、これ…」
レトさんが持っていた紙袋をガサゴソと漁り、何かを少し躊躇いながら引っ張り出した。そして突き出された、白い小さな袋を受け取る。
中を覗くと、また透明な袋でラッピングされた───手作りなのだろうか───少し不格好なチョコが入っていた。
「えっ…!?」
これは、友チョコ───いや、違う。レトさんは俯いてるけど、髪の間から露出された耳が赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。
────つまり、そういうこと───冷えたばかりの体が、また火照っていくのを感じた。
「れ、レトさん…」
「……ん…」
レトさんは、目を合わせようとしない。どころか、顔すら見せてもらえない。
「…───レトさん!」
バッとレトさんの顔が上がって、目が合う。レトさんが、赤くなりながらも怪訝そうな顔をする。
────俺はレトさんからのチョコを見て、顔がほころぶのを我慢できなかった。ニヤついた顔を、袋で半分隠す。
「な…何…!?」
「いや、ちょっと、嬉しくて…」
「え…?」
レトさんも察したのか、耳まで真っ赤になる。
「あっそうだ」という俺の呟きに、レトさんは疑問符を浮かべる。
────はい、と言って、俺はついさっきコンビニ買ったチョコをレトさんに差し出した。見るからに驚いている。
「お返し」
「あ…ありがとう」
「こちらこそ。───俺は手作りじゃないけどね」
うっ、とレトさんがまた恥ずかしそうにする。
「…ね、レトさん。…うちくる?」
「!───うん、行く」
耳まで真っ赤なレトさんの手をそっと握る。冷たい手がぎゅっと握り返される。
道中、二人は全く喋らなかった。というか喋れなかった。調子に乗って変なこと言ってしまそうで。
甘酸っぱい青春はもうできないけど───同等の恋なら、今からでも遅くなさそうだ。
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コンビニの前でなにやってんだ。
題名は思いつかなさすぎて適当に決めましたすいません!!
因みに私は今年のバレンタイン、友チョコすら貰えませんでした。人望なさすぎ。
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