ゴッ!!
「ッッ!?」
鈍い音が聞こえ、遅れて、るなの身体に走る鈍い痛み。え、なに?なんの音、るな、どうしたの?と混乱しながら、寝ぼけまなこをうっすらと開く。
目の前には、薄い四角の闇。目を凝らし、瞬きして、1部に焦げ茶色のフレームがついていることに気がつく。また瞬きして、それがベッドの板と床であることを理解する。
あ…。
「っ、たぁ……」
落ちたんだ、るな。ベッドから。
そう理解してしまえば、ズキズキと主張してくる痛みの正体にも納得が行く。
不幸中の幸いで、頭が二の腕の上に落ちたらしくて、そのまま床に打ち付けずには、済んだけど。
代わりにその重みを一手に引き受けたるなの右腕はじんじんと腫れている。
すごく、痛い。
左手をフローリングについて、のろのろと起き上がる。
部屋の中はまだ、夜に沈んでいる。真夜中、かな。空気が少し冷たく感じた。
闇の中に白く浮かび上がる指先で、そっと自分のからだをなぞる。
足の骨、くるぶしも、打った。太ももの先も痛い。どうやら横向きに落ちたらしい。「う…」と今度は声に出して唸りながら、るなはベッドの上を覗く。
そこには、気持ちよさそうな顔をして眠る、るなのすきなひと。
とうとう、やられちゃったなぁ…。とるなはらしくもなくため息をついた。
ゆあんくんは昔から寝相が悪かったらしい。だから数ヶ月前、いっしょに暮らそうってなったときも、最初はベッドを分けたいと言われていたのだ。
『ええ ~ !?なんでなんで!?いっしょにねたい ~ !!!!』
『いや、でも…』
『ゆあんくんとぎゅーってして寝たいよ ~ …』
『で、でもさぁ…』
『ね、?お願い ~ !!!』
『う…』
床に雑魚寝っていうのも少し考えたけど、寝室にと考えていたのが和室じゃなく洋室だったこと、そして家具屋さんで見つけた洋風ベッドをるながいたく気に入ってしまったのも重なり、結局こちらが押し切って普通のベッドで寝ることになったのだった。
そしてそして…ゆあんくんは確かに寝相が悪かった。ごめんなさい、ゆあんくん。これはフォローしてあげられないかも…。
でも、蹴られたり腕が当たっちゃったりしても、布団を被ってしまえば安眠出来たし。それに毎日のように、
「今日は大丈夫だった?怪我とかしてない?」
なんて心配そうに聞かれてしまえば、まぁいいやって許さざるを得ない。
腕が当たるのも、ゆあんくんと一緒に生活できてる証だ。くらいにるなは考えてた。
…でも、ベッドを買う時約束しちゃったんだよね…
「よいしょ、…っと」
ゆあんくんの隣に再び潜り込みながら、ため息をつく。
『もしも万が一、るなを落としたり怪我させたりしちゃったら、寝室を分けよう。』
「…….」
腕も、脚もじんじん痛い。あと、二の腕とぶつかった耳も痛い。でも、バレなきゃ大丈夫。言わなきゃ大丈夫。るなは寝室分けるなんて、絶対いやだもん。いっしょがいいもん。
せっかく一緒の家で暮らしてるのに、別々で寝るなんて寂しいから。
ばっ、と大の字に開いているゆあんくんの腕を引っ張ってきて、ぎゅっと抱きつく。ゆあんくんは、「ん……。」と、低く唸りながらころんとこちらに寝返りを打った。どん、っとそこそこの勢いでゆあんくんの腕がるなのからだに降ってくる。でも、さっきに比べれば痛くない。というか、これぐらいなら慣れっこ。もぞもぞ動いて、るなを抱き枕扱いしようとする腕に、大人しく身を委ねた。
夜の闇の中、触れている体温があるとこんなにも安心することをるなはもう知ってしまった。ひとり、なんて。寂しくて、悲しくて、きっと耐えられない。
るなはぎゅっとゆあんくんのパジャマの胸元を掴む。
痛みが少しずつ引いてきた。これなら、もう一眠りできそうだ。
そのことにほっとしながら、るなはゆるゆると瞳を閉じた。
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コメント
3件
かわいい!すき!痛そう!かわいい! が渋滞してました☺️☺️🫶 ほの。さんのノベル大好きです♡
ゆあんくんは寝相悪そう(*´▽`*)