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あら、お客様じゃないですか。

すみません、全然気付かなくて…笑

さぁさ、どうぞこちらにお座りください。

メニューはこちらです……って

あ、これにしますか?

確かに今日はとても暑いですもんね。

こちらは宮崎県の郷土料理の「冷や汁」と言うんですよ。

懐かしいなぁ…私もよく実家でこの季節になると食べていました。

そうそう、うちの実家ではこれによく狸肉を入れていたんです。

なんと言っても祖父が猟師でして…笑

あら、こんな世間話をしている間にもうできあがってしまいました。

さぁさ、どうぞ。

覚めないうちに食べてください。

幸せな悪夢から。

それでは、いってらっしゃい。


涼太りょうた~」

「ん?」

「”かちかち山の狸”っていう昔話知ってる?」

「あー昔、よくお袋に読み聞かせされてたわ」

「えー、そうなの?笑」

「俺が性格悪そうだから、嘘をつかないようにだってさ。ったく、酷い話だよな」

「なにそれww」

幼なじみの古木 明澄ふるぎ あずみと付き合って2年と半年。

特にラブラブという訳でも、倦怠期がくるという訳でもなく、俺達は平穏に日々を送っている。

付き合おうと言ったのは俺の方から。

昔から一緒にいたせいか、明澄以外と一緒にいる未来は上手く想像できなかった。

昔から一緒にいるので、安心できるし、お互い気を遣わない。

それに明澄は料理もできるし、掃除洗濯も進んでやってくれる。俺には勿体ない彼女だ。

「あ、涼太~ご飯できたよ」

「今日の飯なにー?」

「今日はねー、じゃーん!」

げ…。

と喉まで出かけた言葉を飲み込む。

明澄は料理が上手いので、基本的になんでも美味い。けど、

この料理を作る日だけは死ぬほど不味い。

「今日は冷や汁にしましたー!!」

なんでも、明澄の母は宮崎県出身で冷や汁を昔から食べていたそうだ。

「私、これ大好きなんだよね!!めっちゃ美味いでしょ!」

「おー、美味そう、やった」

俺は正直、この『冷や汁』とやらが大の苦手だ。

こんなもののどこが美味しいか分からない。

だけど、そんなことを明澄に言ったら不機嫌になるのは目に見えてるので、俺は冷や汁が苦手なことは1度も言ったことがない。

「うん、美味い」

「でしょ!夏といえばやっぱりこれだよね~笑」

これが夏に毎回出るなら夏なんて一生来なくていいとすら思えてしまう。

「涼太~」

「ん、どうした?」

「……。」

俺がそんな呑気なことを思っているうちに、明澄の表情はいつの間にか暗いものへと変わっていた。

23年間、生きてきた中で初めてなくらい真剣な表情に、俺は思わず姿勢を正す。

「…あのさ、」

「うん?」

「私……」

「私…?」

ミンミンミンミン…

「…ストーカー被害受けてるかもしれない」

「……え?」

セミの声が聞こえた気がした。

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