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異世界殺人―クロスゲート・サスペンス―

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異世界殺人―クロスゲート・サスペンス―

35 - 第35話 分析官ノノ=シュタイン/境界地図の揺らぎ

♥

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2025年11月30日

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◆ ◆ ◆
ゼルドア要塞城・帰還口


 深灰の森から戻った一行は、


 荒れた姿のまま要塞裏の帰還口へ運び込まれた。


 負傷者多数。


 一名戦死。


 その事実が、


 隊の空気を沈めたまま重く張りつめていた。


 アデルは歩きながら拳を握りしめる。


 (……私の判断が遅れた。


   もっと早く察していれば……カイトは――)


 胸の奥が焼けつくように痛む。


 そのとき――


 「ア、アデル!!!」


 甲高い声。


 そして全力疾走の足音。


 ピンクベージュの三つ編みが跳ねながら


 一人の少女が駆け寄ってきた。


 白衣の袖をまくり、眼鏡がずれ、


 タブレット型魔術端末を両手に抱えたまま。


 ――ノノ=シュタイン。分析官。


 「アデルぅぅぅ!! 無事なの!?


   ほんとに!? ほんとに!?


   あなた生きてる!? 腕ある!? 足ある!?


   魔力暴走してない!?」


 「……ノノ、落ち着け。私は平気だ」


 「平気じゃない顔してる!!


   いや平気な時も大体そんな顔なんだけど!


   それはそれとして!!」


 アデルの部下たちは重症のまま医療班に引き渡され、


 棺に覆われたカイトの遺体が静かに運ばれていく。


 ノノはその光景を見て、一瞬だけ表情を曇らせた。


 「……カイト、死んじゃったんだね」


 アデルは押し殺すように小さく頷く。


 ノノはそっとアデルの袖をつまんだ。


 「……アデルのせいじゃないよ。


   あの森、異常だった。


   魔力密度も、生態反応も……全部狂ってた。


   誰のせいかなんて、考えるまでもない」


 ノノの声が震える。


 「――カシウスのせいだよ」


◆ ◆ ◆


ゼルドア要塞城・分析室


 その後アデルはノノに連れられ、


 城の地下分析室へと入った。


 分析室は、


 魔術式スクリーンや結界計測器が床から天井まで並ぶ、


 “怪しげで騒がしい研究者の巣窟”だ。


 ノノは部屋に入ると同時に急にスイッチが入り――


 「はいはいはいはい!! 見てこれ!!


    レアの所持品ぜーんぶ! 解析したの!!


    とんっでもないの出た!!」


 と、爆発したようなテンションで喋り始めた。


 アデルは額に指を当てる。


 「ノノ、順を追って説明しろ」


 「いやでも!! 順とか!!


   これ情報量多すぎてアデルの脳がパーンするやつ!!」


 「……誰の脳がパーンするというんだ」


 「アデル」


 「断言するな」


 ノノはスルーした。


◆ ◆ ◆


机に置かれた “レアのスマホ”


 魔術式拘束で封じられた黒い端末が
 静かに光を放っていた。


 ノノは手袋をはめ、慎重に端末を魔術プレートへ乗せる。


 「まずね、このスマホ。


    普通の“転移者アプリ”じゃ、ない。


    これは――“境界操作型端末”だよ」


 アデルの眉がわずかに動いた。


 「境界……操作?」


 「うん!


   境界の“地層”を認識して、


   一部の薄い箇所を最短ルートで転移できる!」


 ノノはスクリーンに表示された図を指さす。


 地図が二枚重なり、


 青と赤の座標が細い糸で結ばれている。


 「これね、“境界地図(オブザベーションマップ)”」


 アデルはその名前に反応した。


 「……境界地図?」


 「そう。


   本来は研究局の極秘実験でちょっとだけ作ったことがあるけど……


   ここまで完成したものは存在しないはず」


 ノノは身を乗り出す。


 「これを作れるのは――


    この国の研究者じゃない。


    “カシウス級の存在”だけ」


 アデルの拳が無意識に握り締められた。


◆ ◆ ◆


更にノノが別フォルダを開く


 「でね……もっとすごいのがこれ。


    “転移ログ”」


 スクリーンに、


 複数の赤い点が線を描いていく。


 ノノは息を呑み、


 「……リスト見て」


 アデルが覗き込む。


 そこには――


 榊 良太


 赤城 翔


 レオン=バークハルト

 メオ=キルガ


 

 四つの名前があった。


 アデルは静かに言った。


 「……全員、被害者の名前?」


 ノノは小さく頷き、


 声を落とす。


 「たぶん……このログは、


   レアが“殺しの対象を識別するため”に使ってた」


 「……………………」


 アデルの目が細くなる。


 ノノはさらに続ける。


 「そしてもっと怖いのが、


   この青い点……


   “生存者の意識信号”」


 アデルの心臓が跳ねた。


 「……行方不明の五名、か」


 「うん。


   いま、全員の意識信号が“ひとつの座標”に集まりつつある」


 ノノは指で赤い点の中央を差した。


 「アデル……


   境界が確実に“混ざり始めてる”。


   世界と世界の境が……壊れてる」


◆ ◆ ◆


 アデルは剣に手を触れながら呟いた


 「……始まったか。


   カシウスの本当の目的が……」


 ノノは震える声で返す。


 「アデル、止めなきゃ。


   あなたじゃなきゃ止められない。


   それに……あなたの部下、カイトのことも……」


 アデルは静かに目を閉じた。


 そして――強く頷いた。


 「必ず止める。


   カシウスも、レアも。


   境界を壊させはしない」


 ノノは小さく微笑んだ。


 「……うん。


   信じてるよ。」


◆ ◆ ◆


その頃、治療室のリオ


 腕輪が一度だけ明滅し、


 ハレルの息遣いがかすかに聞こえた。


 《……リオ……気を……つけ……境界……が……》


 すぐに通信は霧散した。


 (数刻前の非常警報。レアの逃亡……気が休まらないな)


 リオは息を吐く。


 「……揺らぎは、もう始まってるな」

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