「いやぁ〜、秋だねぇ」
そう、季節は秋。
鮮やかな緑色だった木々の葉っぱは、紅葉…赤色に染まり、とても綺麗だ。
「あのな…勝手に人の家で景色を堪能しないで欲しいんだが」
「えぇー?だってここからが一番よく見えるんだもの。ね、霜月、里奈」
「はい!とっても綺麗です」
「標高が高いしな」
この屋敷は、鳥養朧(うかいおぼろ)という鴉天狗のものである。
「あと彩、お前姿が幼いから…ちょっとトラウマが…」
「…あら。今日は妹さんとお姉さんは?」
「出かけてる。おかげで気が楽だ。まったく、あいつらときたら」
「あらあら」
彩が三白眼を細める。面白そーうに朧を見ている。
「あ、霜月。新しい仕事ないか?できれば戦闘系のやつ!」
「…相変わらずの戦闘狂だな」
「もうすぐハロウィーンだろ!魔力が強くなる日なんだから気をつけないと」
「そんなのがあるんですか?」
里奈が首を突っ込む。
「そう。現世でもあるでしょう?私たち妖怪の魔力が一年で一番強くなる日。種族関係なくね。気をつけなさいよ?」
「へぇ…」
里奈がなるほどとうなずく。彩は朧に向けていた三白眼をにこりと細める。
「ああ、そういえば…なにか困ってることがあるって言ってなかったっけ、朧」
「え?ああ…そうなんだよ。落ち葉がさぁ…」
「?」
朧がはぁ…とため息をつく。
「いやぁ…最近森を荒らす奴がいてさぁ…片付けても片付けても元に戻んないんだよぉ」
「妖怪?小さな子供かしら…?」
「いや…姿は里奈ほどだ。んで、妖狐らしくてなぁ…半人前で、耳と尻尾を隠せないようだったな」
「それって…」
「まさか…」
琴葉なのでは…、と里奈が言い出そうとしたとき、突然…
キィィィィィィ…
木をなぎ倒す音が聞こえた。
「森の方から聞こえるわね…まさか」
「行ってみよう」
と、前を歩く朧の顔は、言動とは裏腹に、青ざめており、ガタガタと震えている。
過去のトラウマからだろうか。
「彩…すまないが、すこし離れてくれないか…?」
「はいはい」
彩は呆れるように後ろへ下がる。
さぁ、森を荒している(現在進行形)犯人は誰なのだろうか…
「ここのはずだ」
「あぁ…」
「里奈ー!こんなところで何してるの?」
「琴葉ぁ…」
「?」
琴葉は何も知らずにらんらんとしているが、反対に里奈は青ざめた顔をしている。
「森を荒らしてたのって、琴葉?」
「え?違うよ?ほら、あそこにいる…」
琴葉が指を指す。全員がそちらの方向をゆっくりと見つめ…
そこにいたのは。
「え?狐…?」
「そう!小狐たちがいたずらしてたのー私は注意してやめさせよーとしてたんだけどね?」
「あぁ、なるほど…」
そういうことか…と、全員が納得する。
きっと、朧は琴葉と小狐を見間違えたのだろう。どちらも狐であるし。
「お前らー!!今すぐここから出て行けーっ!」
朧が拳を挙げて怒る。
「天狗って大変なのね〜」
「森の管理もしているし…」
「あはは…」
そんな彼らの足元には、紅葉が落ちている…