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コメント
2件
ありがとうございます😭
うわぁ〜ヒヤヒヤした〜 <(>A<)>ワー
『夏のかくれんぼ』
それは、小学校の夏休み。私は従姉妹のお家に泊まりに行った時の話です。
3階建てのその家には、いとこの女の子が3人いて、みんな歳が近くて、とても仲が良かった。
その夜、私たちは夕飯を食べたあと、涼しくなった家の中で「かくれんぼ」をすることに決めました。
鬼は、私。
「10数えたら、行くからね!」
手で目を覆いながら数を数える。心臓が少しドキドキしていたのは、楽しさだけじゃなかった。
どこか、家の空気がひんやりしていて、肌にまとわりつくような、そんな気配があったからです。
「……10!」
私は目を開けて、廊下をゆっくり歩き出しました。最初に見つけたのは、1番上のお姉ちゃん――高校生の由紀ちゃんでした。
「えー、もう見つかっちゃったの?」
なんて笑っていたけれど、その表情もどこか引きつっていた気がします。
「じゃあ、今度は2人で残りの子を探そっか」
由紀ちゃんと私は2階を探し始めました。
リビング、押し入れ、バスルーム。どこを開けても静まり返っていて、誰もいない。
そのときです。
視界の端に、ふっと人影が見えました。
「……あれ?」
3階へ続く階段の上の方に、誰かがのぼっていくのが見えた気がしたんです。
髪の長い、小柄な女の子のようでした。
「誰か上に行ったみたい」
そう言おうとした瞬間、由紀ちゃんは「1階、見てみよっか」と急に方向を変えてしまいました。
私も慌てて後を追います。
1階へ降りた瞬間、私は立ち止まりました。
そこには、残りの2人の従姉妹――美咲ちゃんと芽衣ちゃん――が、ソファの後ろに隠れていて、すでに見つかっていたのです。
「え?……うそ……」
じゃあ、さっき私が見た“あれ”は、誰?
「……え? さっき3階に誰か行かなかった?」
私がそう言うと、美咲ちゃんも芽衣ちゃんも顔を見合わせて首を振りました。
「私たち、ずっとここにいたよ」
「誰も上には行ってないよ……?」
家には、私たち4人と、おじさんとおばさんしかいないはず。でも、大人たちは外出中で、今は女の子4人だけのはずでした。
「3階……見に行ってみる?」
由紀ちゃんがそう言ったけれど、誰も返事をしませんでした。さっきまであんなに楽しんでいたのに、急に空気が冷たくなったのを、全員が感じていたからです。
***
夜になっても、私はなんとなく落ち着かずにいました。
その日のかくれんぼは早めに終わって、みんなで寝ようということになったのだけど――。
夜中、トイレに行きたくなって目が覚めました。
廊下に出た瞬間、家全体がしん……と静まり返っていて、どこかの階段からギシ……ギシ……ときしむ音が聞こえてきました。
私はそっと音のする方――3階へ続く階段を見上げました。
誰もいないはずのその先に、白いワンピースの女の子が、階段の影からこちらをじっと見ていました。
顔は、髪に隠れて見えません。
でも、私は確かに感じたんです。
「――もう、わたしのこと、見つけてくれたよね?」
その声が、頭の中に直接響いてきたかのようでした。
私はそのまま、声も出せずに部屋へ戻り、布団をかぶって震えていました。
朝になると、あの人影は消えていて、家族に話しても「夢でも見たんじゃない?」と笑われてしまいました。
でも、私は知っているんです。
あの日、かくれんぼをしていたのは、女の子“4人”じゃなかった。
もうひとり――そこにいたのかもしれない、誰かが。
家のどこかに、まだ隠れている“誰か”が――。