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チャンスに強く引き寄せられて、距離がゼロになる。
呼吸がぶつかる。
あとほんの少しで、触れる。
チャンスの視線はまっすぐで、もう迷いはない。
そのまま——来る。
エリオットは、それをちゃんと分かってる。
分かってて、
その瞬間に、ほんの数センチだけ顔を逸らした。
唇が、触れない。
代わりに、かすかに頬をかすめるだけ。
一瞬の静止。
チャンスの動きが止まる。
「……は?」
低い声。
さっきまでの熱が、そのまま行き場を失って滲む。
エリオットは、そのまま至近距離でくすっと笑った。
「なに?」
「……今のは、何だ」
「避けただけ」
あっさりと言う。
でも、距離は離さない。
むしろ近いまま。
「だってさ」
少しだけ目を細める。
「簡単に来すぎ」
チャンスの眉が、ぴくっと動く。
「……お前が煽ったんだろ」
「うん」
また即答。
エリオットは楽しそうに笑う。
「でもさ、それで来るの」
ほんの少しだけ顔を近づけて、また止める。
今度は自分から“寸前”を作る。
「ちょっと悔しくない?」
挑発的な目。
完全に、遊んでる。
チャンスの手に、力が入る。
掴まれてる腕が、少しだけ痛いくらいに。
それでもエリオットは、逃げない。
「ほら」
小さく囁く。
「さっきまで、あんなに我慢してたのに」
わざとらしく首を傾ける。
「もういいの?」
沈黙。
空気が、張り詰める。
チャンスの呼吸が、明らかに変わる。
浅く、重くなる。
エリオットはそれを感じながら、さらに追い込む。
「ねえ」
「……」
「俺、まだ欲しいって言われてないけど」
その言葉で、空気が変わる。
さっきまでの“受け身の煽り”じゃない。
明確に、踏み込んだ。
チャンスの目が、鋭くなる。
「……言わせたいのか」
「どうだろ」
エリオットは微笑む。
「言えるなら、聞いてあげる」
完全に火をつけにいってる。
チャンスはしばらく黙って——
そのまま、ぐっと距離を詰める。
今度こそ、逃がさない距離。
エリオットの背中が、壁に軽く当たる。
逃げ場がなくなる。
それでも、エリオットは笑ってる。
「……逃げるなよ」
低い声。
さっきより、ずっと余裕がない。
エリオットは少しだけ目を細めて、
「逃げてないよ」
と囁く。
「ほら、ここにいる」
そう言いながら、
また——ほんの少しだけ顔を逸らす。
完全に、キスさせない距離。
チャンスの表情が、はっきりと歪む。
「……お前」
「なに?」
「ほんとに性格悪いな」
エリオットは、楽しそうに笑う。
「知ってる」
そして——
ほんの一瞬だけ、真面目な目になる。
「でもさ」
小さく、静かに。
「ちゃんと来てよ」
その一言。
空気が、また変わる。
ただの煽りじゃない。
ちゃんと、本音が混ざる。
チャンスの手が、さらに強くエリオットを引き寄せる。
もう、逃がさない。
今度こそ——
ってところで、
エリオットはまた、ぎりぎりで止める。
でも今度は、逸らさない。
ただ、触れない距離で囁く。
「ほら」
目を合わせたまま。
「まだでしょ?」
完全に、限界まで引き伸ばす。
チャンスの理性が削れていくのが、分かる。
その全部を見ながら、
エリオットは、わざと逃がさない。