テラーノベル
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「角宮家との関係もあるしな……。うちとあそことは付き合いも長い」
一誠の言葉に、千紗はしゅんとなる。
「……けどな、千紗」
一誠はうつむきかけた千紗に静かに語りかけてきた。
「それはそれ、これはこれ、だ」
「え?」
「結婚は千紗にとって一生を左右するものだろう?」
「私もお父さんも、千紗の幸せが一番だと思ってるわ」
千紗は、両親の言葉にどう反応したらいいのか分からなくて戸惑ってしまう。
「あの……」
「千紗。その相手は君が選んだんだろう?」
「……うん」
「家のことを差し引いても父さんたちに言いたいくらい、好きなんだね?」
千紗は父親の言葉に思わず泣きそうになるのを必死に堪えた。
「……うん」
一誠は、千紗の言葉に満足そうに頷いた。
「なら、千紗がしたいようにしたらいい」
「……っ!」
「父さんも母さんも、お前の気持ち以上に大事なものがあるとは思ってないよ」
「……でもっ」
「家とか会社とか世間体とか……そういうのが気になるか?」
「……はい」
公にニュースにもなったのだ。
それをこんなにあっさりと、認められてしまってもいいのだろうか。
一誠は首を傾げた。
「もちろん、色々な後始末は千紗とその彼がちゃんとするんだろう?」
あまりにも自然に言われて、千紗は思わず言葉を失った。
でも、なぜだろう。胸の奥がじんわりと温かい。
問題は山積みだと示唆されたけれど、両親から許してもらえたことが、なによりも嬉しかった。
そう思った瞬間、張り詰めていたものが少しだけほどけた。
「ありがとう」
小さく呟くと、一誠は柔らかく笑った。
「それで」
「え?」
「その彼――確か木朝良介くんだったか。彼とはいつ会わせてくれるの?」
「私も会いたいわぁー」
一誠の言葉に、琴葉がうっとりと言葉を重ねてくる。
そんな両親に、千紗は思わず固まってしまった。
「え?」
千紗の思考が停止する。
一誠は当然のように続けた。
「千紗の恋人。――木朝くんだろう? 会いたいじゃないか。なぁ、母さん」
「もちろんですわ」
「ちょっ――!」
一気に顔が熱くなる。
「な、なんで名前まで知ってるの!?」
「調べた。――千紗に好きな相手がいるかもしれないと思っていたからな」
「お父さん!?」
「いつ話してくれるのかと、実はやきもきしていた」
「うそ……」
「言わないまま、政略結婚を受け入れるのかと少し心配していたところだ」
「恋人のことは何となく気付いていたわ。でも……私もお父さんも、千紗の意志が一番だと思っていたから、ずっと見守っていたの」
琴葉が柔らかく笑いながら、そんな補足をしてくる。
その姿を見ながら、千紗はようやく理解した。
自分は思っていた以上に愛されて育っていたのだと。
「それと」
一誠が何気ない調子で続ける。
「雨の中、木朝くんを待たせたままなのは関心しないな」
「……え?」
千紗が顔を上げる。
「え、なんで……」
「外にいるんだろう?」
「っ!」
息を呑んだ。
「なんで知ってるの!?」
「白鳥から聞いた」
一誠はあっさり答える。
「書斎へ呼びに来た時にな」
思わず言葉を失った。
まさかそんなところから把握されているとは思わなかった。
「雨の中待たせるのも悪いから、タクシーを呼ばせてある」
「えっ」
「近いうちに改めて連れて来なさい」
一誠は穏やかに笑った。
「その時にゆっくり話そう」
隣で琴葉も大きく頷く。
「今度はちゃんとお茶とお菓子を用意しておくわ」
千紗は何も言えなくなった。
胸の奥がじんわりと熱い。
自分が思っていた以上に——。
両親はずっと、自分の味方だった。
コメント
2件
ちさちゃん、よかったねー!
読んだよ…!第104話、めっちゃ良かった……😭💕 千紗のご両親、ホントに良い人すぎるでしょ!「家とか会社より千紗の気持ちが大事」って言ってくれたとこで泣きそうになったわ。しかも良介くんの名前までちゃんと調べてて、雨の中タクシーまで手配してるとか…“見守る愛”が尊すぎる。 千紗が「思ってた以上に愛されてた」って気づくシーン、エモさ爆発だったよ。次回の対面編、楽しみすぎる〜!🌸
鷹槻れん

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