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それから数日。夜空に浮かぶ月は、日ごとに丸みを増していった。
村人たちは家畜の件を忘れてはいない。
夕暮れになると、あちこちの家から扉を閉める音と、鍵をかける金属音が響く。
そんな中、健の様子がおかしかった。
夕方を過ぎると、額から汗を滲ませ、呼吸が荒くなる。
『……暑い……体が……』
そう言って苦しそうに胸元を掻きむしる。
爪は以前より鋭く、指先からは小さな血が滲んでいた。
「健、もう外に出ない方がいい」
紗羅が、そう言うと健は唇を噛み、視線を逸らした。
『……でも、逃げんとあかん。あの連中……俺を見つけたら殺す』
その夜、窓の外から小石が当たる音がした。
覗くと、村人たちが松明を手に山へ向かっているのが見える。
犬を連れている者もいた。
「健、村人たちが……あなたを……」
言い終わる前に、健は息を荒くし、獣のような目で空を見上げた。
満月が、雲間から顔を覗かせる。
次の瞬間、背骨が軋むような音がして、健は膝をついた。
『う……ぐ……っ!』
耳が伸び、歯が鋭く変わり、皮膚の下で筋肉が膨張する。
紗羅の目の前で、健の人間の姿が崩れ始めた。