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莉音
18
✦ ─────── ✦
気にしないようにしていた。
見ないようにしていた。
考えないようにもしていた。
だけど。
好きな人が幸せそうに笑う姿は。
嫌でも目に入る。
◌ ───── ◌
それから数日。
昼休みも。
講義の合間も。
放課後も。
いるまの隣には彼女がいた。
💗「いるまー!」
💜「おう」
💗「今日ね!」
💜「ん?」
💗「聞いてほしいことあるの!」
嬉しそうな声。
楽しそうな笑顔。
自然と近付く距離。
こさめは少し離れた場所からそれを見ていた。
🩵(仲良しだなぁ)
当たり前だ。
恋人なんだから。
そう思うのに。
胸が少し痛む。
❤️「こさ」
🩵「ん?」
❤️「見るな」
🩵「見てないよ」
❤️「見てる」
即答だった。
思わず苦笑する。
🩵「そんなに分かりやすい?」
🩷「分かりやすいよ」
🩵「うそだぁ」
🩷「ほんと」
蘭は困ったように笑った。
🩷「こさは優しいから」
🩷「応援しようとしてるんだろうけど」
🩷「無理しなくていいんだよ」
🩵「……」
優しい言葉だった。
だからこそ苦しい。
◌
その日の午後。
講義中。
スマホが震えた。
何気なく画面を見る。
送り主はいるまだった。
💜『今日終わったら彼女と飯行く』
💜『だから先帰るわ』
たったそれだけ。
本当に何気ない連絡。
今までもしていた。
なのに。
🩵『了解〜!』
送信する指が少しだけ震えた。
🩵(変なの)
別に約束なんてしていない。
一緒に帰るのが当たり前だっただけ。
それだけなのに。
まるで居場所を取られたみたいだった。
◌ ───── ◌
放課後。
💜「じゃあな」
🩵「うん」
💜「また明日」
🩵「またね」
いつも通り笑う。
だけど。
いるまが去った後。
笑顔は少しずつ消えていった。
🩷「こさ」
🩵「ん?」
❤️「今日暇か」
🩵「暇だけど」
❤️「じゃあ付き合え」
🩵「どこに?」
❤️「カラオケ」
🩷「三人で行こ」
🩵「え?」
❤️「一人で帰らせたくねぇ」
🩵「子供じゃないんだけど」
❤️「知ってる」
🩷「でも心配」
二人は真剣だった。
こさめは少しだけ目を伏せる。
🩵「ありがと」
小さく笑った。
本当に。
ありがたいと思った。
◌
カラオケ。
三人で歌って。
笑って。
騒いで。
その時間だけは。
少しだけ苦しさを忘れられた。
🩷「ほら!」
❤️「次こさな」
🩵「えー」
❤️「歌え」
🩵「横暴〜」
笑い声が響く。
楽しかった。
本当に。
だけど。
ふとした瞬間。
考えてしまう。
今頃いるまは何してるんだろう。
彼女と笑ってるのかな。
手を繋いでるのかな。
そんなことばかり。
◌
帰り道。
🩷「今日は少し元気になった?」
🩵「なったかも」
❤️「なら良かった」
🩵「二人とも優しいね」
🩷「知ってる」
❤️「今更かよ」
少しだけ笑う。
その時だった。
前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。
💜「……」
いるま。
そして。
隣には彼女。
💗「それでね!」
💜「うん」
自然に繋がれた手。
近い距離。
幸せそうな横顔。
胸がぎゅっと締め付けられる。
🩵「……」
足が止まる。
❤️「こさ」
🩷「帰ろう」
二人とも気付いていた。
だけど。
目を逸らすことができなかった。
🩵(ああ)
やっぱり。
本当に恋人なんだ。
そんな当たり前のことを。
改めて実感してしまった。
◌ ───── ◌
その夜。
ベッドに横になる。
天井を見上げる。
眠れない。
🩵(好きだなぁ)
認めたくないくらい。
好きだった。
笑う顔も。
声も。
優しいところも。
全部。
好きだった。
だから。
苦しい。
🩵(このままじゃ駄目だな)
少しずつでいい。
離れなきゃ。
期待しないように。
傷付かないように。
そう思う。
だけど。
方法なんて分からなかった。
✦
好きだから近付きたい。
好きだから離れたい。
矛盾した想いだけが。
胸の中で大きくなっていく。
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コメント
1件
お疲れ様です、寺島あおいです🌷 第11話、読み終わりました…。 「好きだから近付きたい。好きだから離れたい。」この一文に全てが詰まっていて、胸がぎゅっとなりました。いるまが彼女と幸せそうにしている姿を、こさめが遠くから見つめるしかないシーン、特に「見てないよ」「見てる」のやりとりに蘭の優しさが滲んでいて、切なくてたまらなかったです。カラオケに誘ってくれる仲間の存在がありがたい反面、帰り道で偶然二人を見てしまう場面の描き方が本当にリアルで…。こさめの苦しさがひしひしと伝わってきました。