(ソ連目線)
『ソ連!!ソ連!!』
貧血でハッキリしない意識の中、アメリカが俺を必死に呼ぶ声がする
その声のおかげで、かろうじてまだ俺は生きているんだと思った
ズキズキと全身が痛い
救急車のサイレン音が聞こえる
意識がもう…
持たない…
何故、俺がこんなことになったかは…
数十分前に戻る
「わ…悪いが、無理だ
君の気持ちには答えられない」
〈そう…すか…〉
すると彼は残念そうな顔をする…
と思いきや、急に笑顔になった
そこから、彼の異常さを俺は感じ取った
彼は普通ではないと
〈そうっすよねー…
やっぱ、断られるっすよね〉
そう言いながら、彼は俺の方に近づいてきた
その分、俺は後ろに下がる
〈だから、考えたんすよ
ソ連さんを殺しちゃえばいいって〉
「は……?」
彼は何故か持っていたバックから、鋭く尖った包丁を取り出した
背筋が凍る
命の危険をここまで感じたのはいつ以来か…
なんてことを考えている暇はない
本当に殺されてしまう
愛というのは狂えば狂うほど、相手を傷つけるものになるのかと、実感する
そういえば、アイツもそうだったような……
〈何すか?考え事すか?
流石っすね〜、やっぱりソ連さんには大人の余裕がありますよね!
そういうところも、大好きっす!〉
「そうか、俺に余裕があるように見えるならそれは良かった…」
早くこの場から逃げなければ…
だけど、一瞬でも隙を見せたら殺される
どうする?
冷静に考えろ、考えて動け
〈さ、ソ連さん
こっちにきてくださいっす!
苦しまないように、すぐに殺してあげるんで〉
彼の笑顔は異常だった
何故、笑っていられるのか
俺は彼の目を見ながら、用心深く後退りをする
まずはドアに近づかなければ…
〈あ、今ドアのこと考えましたね?
残念!俺がもう、鍵をかけたんで無意味っすよ〜
外側からしか開けられないっす〉
嘘だろ…
ならもう、彼を気絶させるしか…
〈もう…大人しくしないと痛いっすよ〜?〉
そう言い、彼は俺に切りかかる
「!…」
彼の動きを予測しながら避け続ける
〈はははっっ!流石、ソ連さんっ!!
あのナチスと戦ったんですもん、中々当たりませんね!〉
彼は楽しそうな笑顔で俺に切りかかってくる
「っ…何故こんなことをするんだ、君は」
〈えぇー?だから言ったじゃないっすか
ソ連さんが好きだからですよっ!〉
「っぐ…」
ズバッと俺の右腕が切られる
〈いずれソ連さんは、俺ではない、誰かのものになってしまう
それなら、殺して俺の元に置いておけばいい〉
「…っう”」
部屋の隅に追いやられ、太ももに包丁を突き刺される
痛い
今にでも声を上げたかったが、そうすればすぐに殺される
俺は必死に冷静を装った
「考えられない、君は…狂っている」
そう俺が吐き捨てると、彼は更に高揚した笑顔で包丁を俺の足から引き抜く
〈俺が狂っていますか…?
あっははは、俺を狂わせたのは紛れもなく…
ソ連さん…貴方っすよ?〉
ゾワ…と鳥肌が立つ
彼の言動は、ナチスドイツ…
アイツにそっくりだったから…
俺が奥底に隠していたトラウマが蘇り、俺は恐怖に怯えた
右目が痛い
〈どうしたんすか…?
そんなに怯えて…怖い記憶でも思い出したんすか…?〉
優しい声色で俺に呼びかけてくる
〈それも全て…俺以外の奴の記憶でしょう?
大丈夫っすよ、俺が解放してあげますから…〉
「止めろ…頼む……」
〈あぁ…いいっすねぇ…その顔
この顔を見るのは俺だけなんすから…〉
彼は包丁を振り上げ、俺に刺そうとしたところでドアが一気に開く音がした
『ソ連!!!』
アメリカの声が響く
〈あーぁ、もう少しだったのに…
ま、邪魔者は始末しましょーねー〉
そう言って彼は状況がうまく飲み込めず、ただ立ち尽くすままのアメリカを刺そうとした
その瞬間、俺は咄嗟にアメリカの前に飛び出した
グサリ
肉を切り裂く、鈍い音が響く
どうやら、腹を刺されたらしい
包丁を直に手で握ったせいで、手のひらからも血が溢れる
〈ぁ…〉
ズルと俺の腹から包丁が引き抜かれる
俺はその場に倒れ込んだ
アメリカには傷が付いていないだろうか…
それ以上は何も考えることが出来なかった
(アメリカ目線)
は?…
何…何で……?
ソ連…?
おい、嘘だろ?
この血、全部ソ連の……?
致死量レベルじゃん…
こいつがやったの…?
俺は、ただ立ち尽くすしか出来なかった
ソ連は俺を庇って、このよく分からねぇ奴に刺された
そう理解した瞬間、俺はそいつをボコボコにしてた
勝手に体が動いて、相手に反撃の隙も与えないくらい、手とか足とかでボコボコにしてた
それで気付いたら、そいつの血で俺は真っ赤になってた
そしてすぐにソ連に駆け寄って、110番した
110番して、救急車待ってる間、心臓マッサージとか、人工呼吸とかめちゃくちゃ繰り返した
2回目のキスが、こんな状況ですることになるとは思わなかった
しばらくして、すぐに救急車が着き、ソ連はタンカに乗せられた
俺は必死にソ連に呼びかけながら、救急車に一緒に乗り込んだ
救急車の窓から、もう一台の救急車にアイツが運ばれているのが見えた
そこから、救急治療室にソ連が運ばれるまでもずっと呼びかけた
ソ連の目はもう、開いていなかった
ねぇ、死なないよね?
俺と海行くって言ったじゃん
俺といろんな思い出作るって言ったじゃん
こんなところで、終わったりしないよね…?
俺はずっと、いるかどうかなんて分からない神様に祈り続けた
手術室の赤いランプ
それすらもソ連の血を連想させてしまう
病院の椅子で俺は俯いたまま、ずっと待ち続けた
腹以外も、2箇所ほど深い傷を負っていたな、と今更思った
何でこんなことになったんだろう
俺がもっとソ連のそばにいていれば…
俺の不甲斐なさに、ただただ打ちのめされた
数十分経過して、手術室の扉が開き、見覚えのある髪色の医師が出てきた
「親…父……?」
[久しぶりですね、アメリカ…
いや……、息子]
「あぁ…
それより、ソ連はっ!!」
[大丈夫ですよ
貴方が心臓マッサージ、人工呼吸を続けていてくれたおかげで何とか生命が維持されていたらしく、間に合いました]
そう言い、親父は微笑んだ
「良かった……」
[……今言うのもなんですが…
また、親子としての絆を戻してくれませんか?]
「えっ…」
腹が立ちそうになった
こんな時にその話をするのかと
[…返事はまた後で聞きます
今はソ連さんのことを…]
「るせぇな!
分かってるよ!お前に言われなくても!」
俺はそう吐き捨てて、病院内を走った
そのまま病院から出て、自分でも抑えられないくらいの涙を溢した
なんの涙かは全く分からなかった
ソ連が助かったことの安堵
父親に対して、折角会えたのに、折角絆を取り戻そうとしてくれたのに、突き放してしまったことの後悔
もう訳が分からなかった
俺さ、結構頭いいと思うんだよね
そんじょそこらのやつよりはスゲー頭の回転早いと思うし
でも、今の俺には情報量が多すぎた
全く処理できなかった
最愛の恋人を失いそうになった恐怖
目の前で見てたのに庇えなかった後悔
もしかしたらソ連を刺したやつを殺してしまったかも知れない不安
万が一殺してしまったら…
ソ連はもう、俺を愛してくれない気がする…
俺はずっと泣いた
病院の出入り口の前で
きっとそこを通っている奴は、俺を見て引いてるんだろうな
なんて、思う暇なんてなかった
とめどなく、目から涙が溢れる
みかねた看護師さんが俺を宥める声が聞こえた
でも、止まらなかった
落ち着いた時にはもう日付が変わっていた
トボトボと重い足取りで家に帰る
途中でタクシーを呼んで、家まで送って貰った
住所を言おうとしたら、声がカスカスで何も聞こえないらしかったから、紙に書いて教えた
その紙は自分で捨てなさい、と言われて俺はその紙を握りしめながら窓の外の夜景を見つめた
俺だけ傷ひとつなくいるのが辛かった
そんなことを考えていたら、またすぐに涙が出てきた
タクシーの運転手さんは何も喋らず、ただ前だけを見て運転していた
そして、家に着いた
運転手さんにお金を払って、俺は家に入った
そのまま、ベットに倒れ込み、精神的にかなり疲れていたせいか、すぐに眠りについた
つづく
コメント
3件
タンカーじゃなくてタンカやで
尊くて、とてつもなく叫びたい状態である(?)マジで好きです❣️))
めっちゃ、良いぃ