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《蠱毒を食らわば最期まで》
犯人の自白を聞いたロカは、粛々と処刑の
準備を行った。
聖母の慈愛も、ロカを止めることは出来なかった。
【処刑タイム】
処刑方法は既に決めていた。
愛しい夫を 毒殺した犯人を、必ず猛毒によって苦しめながら殺してやろうと。
復讐鬼ロカは調理室の冷蔵庫から極上のハチミツを取り出した。
王宮内の冷蔵庫にハチミツがあることはなんら不思議ではなかった。
ロカはそのハチミツを大量に口に含んだ。
それと同時にロカはとあるキノコから抽出したエキスをスカートの中からとりだした。
この毒は昨日の朝、ロカが町娘の一人から
聞いた、当時まだ世界で発見されたことの
なかった新種の毒キノコであった。
その情報を聞きつけたロカは、朝のうちにただちにそのキノコを持ってくるように衛兵達に命じた。
衛兵達は死にものぐるいでその毒キノコを探しまわった。
でなければロカに 処刑されてしまうからである。
こうして、 なんとか夜八時までにそのキノコを見つけた衛兵達は、ギリギリのところで女王陛下からの処刑を逃れ、その日は 余ったキノコでキノコパーティーをしていた。
さて、この新種の赤いキノコ、燃え盛る炎
のような真っ赤な真っ赤な毒キノコ。
名前は《エンエンカエンダケ》。
触れるのも危険な程協力な毒を持つ毒キノコである。
あまりにも危険なためロカはわざわざハチミツで口内をコーティングした。
あまりにも危険なため決して真似をしてはいけない。
決してである。
なぜそんな危険で非合理的な処刑方法を
とったかと言えば、それは勿論夫バルザード十二世を毒殺した憎きマカロンを同じ方法で
葬り去るためである。
その毒エキスとハチミツと少量のロカの唾液が 混ざった液体を、ロカはディープキスの要領で マカロンの口に流し込んだ。
万が一にでも マカロンがそれを吐き出さぬようにしっかり口で蓋をするはずだった。
しかしマカロンは それをすぐに飲み込んだ。
驚きながらも、マカロンは料理人として、
医のスペシャリストとして口内に流れ込んだ
味を、効能を分析した。
(…….!!!これは、キノコ特有のイボテン酸と
トルコロミン酸が持つ芳醇な薫り…..!!!未知の毒素の苦味とハチミツの極上の甘さと
先程女王陛下が飲んだツバメの巣のスープが
かけ合わさり…..!!!これは….!?これは……!!!!)
それは、マカロンがまだ味わったことのない。 新たなる美味であった。
だがマカロンがその美味しさに感動したのも
束の間、 マカロンの全身を焼けるような
痛みが覆いつくした。
まるで神経が直接火で炙られてるかのような
激痛。マカロンは釣り上げられた魚のように
大理石の上で暴れまわった。
しっかりと調理場の水で口を洗い流し、 一応、毒キノコ用の薬草を口に含んで グチュグチュペーした後、 ロカはマカロンの腹の上に乗り マカロンが焼けるような痛みで泣き叫ぶ声を クラシックがわりにワイン酒を堪能した。
これにて、『悪政のロカ』はビショップ•マカロンへの復讐を完遂した。
「わ…….あ……..も………..。」
激しい痛みの中、マカロンは嬉し涙を流した。
その様はまるで長いことずっとおなかで育てた赤ちゃんが産まれる前の母親のようだった。
幸福でお腹を満たし罪を孕んだ聖母マカロンはもがき苦しみながら最期の言葉を紡ごうとしていた。
次の復讐までに時間もあるし、復讐を遂げて
最高に気分が良いのでロカはマカロンの
憎き毒殺犯の最期の言葉を ちょっとばかし聞いてやることにした。
(わたしはあなたもむすめのように……)
口の動きからかろうじてこれだけ読み取れた。
ロカはワインを煽り、心の中で呟いた。
(知ってるわよ、そんなこと。)
嘘を見抜くことが出来るロカは、そんなこと、 とっくのとうに知っていた。
ロカの涙は、とっくのとうに枯れていた。
(さようなら、おかあさん。)
王宮内での育ての親を看取り、愚かなる娘は
次の復讐へと足を運んだ。