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宮舘side
毎週決まった曜日、決まった時間。『ラヴィット!』のスタジオ裏で顔を合わせるのが、いつの間にか当たり前になっていた。
「佐久間、今日も元気だね」
低く落ち着いた声でそう言われるたび、佐久間は反射的に笑う。
その声に含まれる温度が、自分にだけ少し近いことには、まだ気づいていない。
料理コーナーの日。
エプロン姿の宮舘が、丁寧に皿を差し出す。
「佐久間、味見してみて」
「え、俺?やった!」
無邪気にスプーンを口に運ぶ佐久間を、宮舘は一歩引いた位置から見ている。
目が合うと、ふっと微笑むだけ。
「どう?」
「……うまっ!さすが舘様」
その言葉に、ほんの一瞬だけ目を細める。
それが“嬉しい”のサインだと、佐久間はまだ知らない。
佐久間は人懐っこい。
思ったことをすぐ口にするし、距離感も近い。
それは芸人にも、スタッフにも、そして宮舘にも同じだった。
「舘様の余裕すごいよね、大人って感じ!」
肩に軽く触れながら言う。
無意識だ。完全に。
宮舘は、その手を払わない。
代わりに、そっと指先で佐久間の手首を押さえる。
「……そう見える?」
低い声。近い距離。
佐久間は一瞬だけ言葉を失う。
「う、うん。見えるけど……」
その反応を見て、宮舘は満足そうに手を離す。
佐久間だけが、なぜか胸の奥がざわついた。
⸻
収録終わり
スタジオを出ると、街はすっかりイルミネーションに包まれていた。
「綺麗だね……」
思わず立ち止まった佐久間の横に、自然と宮舘が並ぶ。
「少し、歩く?」
それは提案というより、エスコートだった。
人の流れを避けるように、さりげなく佐久間を内側へ導く。
「わ……ほんとだ、すごい!」
光に照らされた佐久間の横顔を、宮舘はじっと見ていた。
無防備で、楽しそうで、誰にでも見せてしまうその表情。
「佐久間」
呼ばれて振り向いた、その瞬間。
頬に、軽く触れる温度。
音もなく、短く落とされたキス。
「……っ」
時間が止まったように感じた。
イルミネーションの光も、人の声も、遠くなる。
「今のって……?」
佐久間の問いに、宮舘は逃げない。
「綺麗だと思ったから」
それだけ言って、また微笑む。
余裕のある、大人の笑みで。
心臓がうるさい。
顔が熱い。
逃げたいのに、目が離せない。
「俺……そういうの分からなくて……」
正直な言葉が、零れ落ちる。
宮舘は一歩近づき、低く囁く。
「知ってるよ」
「……なに、それ」
そう言うと、宮舘は静かに笑った。
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