テラーノベル
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「なぁ。俺はこんなところに来たことがないんだが、何を頼めばいいんだ?」
お洒落カフェとは無縁の俺は、須藤えもんに頼った。
「俺もあんまりこないからなぁ。無難にランチセットでいいんじゃないか?」
それを聞いた俺は素直に受け入れた。俺は人の意見を聞ける良い子なんだっ!
ちなみに俺の右横は須藤で、正面に長濱さんがいる。
「聖くんは決まったのかな?」
「ん?このランチのAセットにする」
「そうなんだ。じゃあ、私はBセットを頼むから、おかずを少し交換しよう?」
話しかけてきた長濱さんだが、とんでもないことを言い出したぞ……
俺にそんなリア充なイベントはレベルが高いっす!
「ああ。わかった」
断るのはもっとレベルが高かったが……
「あれ?聖奈と東雲くんって、そんな仲だったの?」
「えっ?聖と長濱さんって付き合ってるのか?」
タチの悪い攻撃がやってきたが、こういう揶揄いにはもはや慣れっこだ。
「そんなわけないだろ」
「そうだよな!長濱さんに失礼だったな!」
うん。その発言は俺に失礼だな!笑えたから良いけどっ!
料理が届き、長濱さんとおかずを少し交換して食事中。
女性陣が見た目や味で盛り上がっている中、須藤が話しかけてきた。
「大学辞めてどうするんだ?」
ある程度須藤には話そうと覚悟していた俺は、肝心な部分を誤魔化して伝える。
「自営業かな。今もある程度仕入れをして販売してるからな。
それの延長で拡大出来たらなとは思っている」
「凄いな。だからここひと月休んでいたんだな」
何か良いように勘違いしてくれたから放って置こう。
まさかその殆どの期間を、ただ呑んだくれていたとは思うまい!!
食事を終えた俺達は解散する事になったんだが……
「じゃあ俺達は次の講義があるから!またな」
「東雲くん。ちゃんと聖奈を送ってね」
こういう俺の予定を無視した発言も苦手なんだよな。
陽キャの学生は、みんなノリいいの凄えよな。
二人を見送った俺は、隣に佇む長濱さんに声をかける。
「長濱さん。二人はああ言っていたけど、どうする?」
俺みたいな呑んだくれ大学生といたら恥ずかしいだろう?
そう思って伝えたのだが。
「聖君。まだ時間ある?良かったら昼飲みしない?」
「えっ……ごめん。禁酒って訳じゃないけど、お酒は控えてるんだ」
いきなりの飲みの誘いだったから、ビックリして断ってしまった。全く禁酒なんてしてないけど。
でもまぁ、この前まで控えてたから嘘ではないな。
「そ、そう。お酒が好きだと聞いてたから誘ったんだけど、迷惑だったかな?」
俺みたいな奴に断られるとは思っていなかったのだろう。驚いているな。
ふふふっ。世の厳しさを知れ!リア充めっ!
「たしかに酒好きだけど、恥ずかしい話、それで身を持ち崩しそうだったから控える事にしているんだ。
今は寝る前に飲む程度かな?」
「そうなんだ。良かった!嫌われてるのかと思っちゃった。
さっき少し聞こえたんだけど、何か仕事をしてて大学に来なくなったの?」
おいおい、こんな道端でまだ会話を続けるのかよ……
陰キャの会話は密室でって、相場は決まっているんだよっ!
「嫌うなんてないよ。大学はそんなところかな。駅はどっちの方向?」
嫌う程知らんっちゅうねん!こちとら帰って胡椒の詰め替え地獄が待ってんねんっ!
「私も大学生活のことで悩んでて。もっと聖君と話したいけどダメかな?」
俺の中では頑張って断ってたつもりなんだけどなぁ。
そうだ!
「実は家で仕事の続きをしなきゃいけないんだよな。俺も長濱さんとは久しぶりだし話したいけど、家は散らかってるし・・・」
「じゃあ、片付け手伝うね!行こう?」
えっ?なんで?俺ちゃんと断ったくね?
日本人なら察してくれっ!
「わ、わかった」
もうお断りスキルはないぞ!?
この子も川崎さんとは違った意味で苦手なんだよな…見た目は可愛いんだけど…オタク度合いがついていけない……
こうなったら仕方ない。腹を括ろう。
見られて不味いものは…大量の酒のゴミくらいか……
その後、最寄駅から家に向かうことになった。
押し売りだが片付けを手伝ってくれるということで、某チェーン店のカフェで飲み物とケーキの持ち帰りを奢った。
帰宅した俺は部屋へ入ったんだが…よく思ったら母親以外の異性が部屋に入るなんて初めてだ。
いまさらドキドキしてきたぞ……
「うわぁ。ホントに物が沢山だね…お酒のゴミも多いし…」
案の定、長濱さんはドン引きしている。俺の安息の為にも、早く帰ってくれないかなぁ。
「掃除のやり甲斐があるね!頑張るから聖君もお仕事頑張ってね!
ゴミ以外は分別しとくね」
そう言うと、長濱さんはコンビニで買ってきた袋に空き缶やゴミを手際よく入れていった。
こんな状況じゃ胡椒の詰め替えなんて出来ない。
俺も掃除を手伝って早く帰って貰おう!
「俺も掃除するよ」
「えっ?いいよ。仕事あるんでしょ?」
あんたがいるから仕事出来ないんじゃあ!とは言えず。
「いや、俺が分別した方が早いし、仕事は終わってからにするよ」
どうやら文句は無いようで、二人で掃除した。
元々生活用品は少ない為、掃除はすぐに終わり、胡椒などが入っている段ボールの仕分けが始まった。
「これは胡椒?変わった仕事だね?」
「ああ。色んなことに手を伸ばしたらこんなことになっちゃってね。
あっ。そっちはフリマに出してる商品だから他の段ボールに入れて」
俺の言葉に反応した長濱さんは……
「フリマ?あっ!これ凄いね!可愛い!」
どうやら銀細工に目がいったようだ。
「それも仕事の一つだから壊れないようにしてな」
「これ凄いね!まさか聖君が作ったの?」
「まさか。そうゆーのを仕入れて販売してるだけだよ」
俺の言葉に納得したのか、一つ頷いた長濱さんがポツリと語り出した。
「聖君は凄いね。
聖くんと同じで、周りはもう卒論や就活を始めている人もいるのに、私はやりたいことの一つも見つけられないの…」
何やら急に悩み相談が始まってしまったが……
まあ、片付けも終わったし、ここらで少し話しでもしながらケーキを食べてもらって帰っていただこうか。
「俺は偶々切っ掛けがあっただけだよ。
別にやりたいことだったわけじゃないけど、大学より性に合ってるだけかな」
「それでも凄いよ。好きだった同人サークルも辞めちゃったしね。
聖君が辞めてから、なんで止めなかったんだろうって、悩んでたんだ。
同人サークルのみんなはチヤホヤしてくれたし、話も面白かったんだけど……
私の話をちゃんと聞いてくれてたのは、聖君だけだったから」
何か答えづらい話ばかりで……
とりあえず頷いとこっ!
「やっぱりオタクサークルなんて、私を含めてみんな自分の話を聞いて欲しい人の集まりだったんだよね。
だからずっとお礼を言いたかったんだ。
私の話をちゃんと聞いてくれてありがとう。聖君」
やばいぞ。
長濱さんの話なんて何一つ覚えていない!
仕方ない。ここは当たり障りなく答えよう。
「どういたしまして。俺なんかに感謝しなくていいよ。
それに俺は異世界系の話には興味があったから入っただけで、場違いだったしね。
とりあえずケーキを食べようよ」
そう言って換気していた窓を閉め、片付けていたコタツテーブルを出して、準備をした。
「美味しかったね!この後の仕事はどんなことをするの?」
別にやましいことではないので、説明してもいいだろう。
やましくはないが、変な事ではあるな……
「この後は胡椒を瓶詰めする作業だな」
「楽しそうだね!私も手伝っていい?」
多分、大学や家のことで悩んでいるのだろう。
気晴らしになるなら手伝って貰うか。
「じゃあ、お願いしようかな」
「うん!何をすれば良いかな?」
「この胡椒を計量器に乗せた瓶に入れていくだけだよ。
出来上がった瓶はこっちの段ボールにいれてな」
「わかったよ!聖君は?」
「俺はフリマアプリを確認してからするよ」
「はーい。あの可愛いやつとか、よくわからない木彫りとか、カッコいい革の小物入れとかだよね?」
木彫りに対しての辛辣な言葉に苦笑いを返すことしか出来なかったが、後は高評価を貰えたことに少し安心した。
そして、フリマアプリを覗いた俺は、売れていた商品があることに目を見開いた。
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本編は以上です。
人物描写が少ない為、イメージしやすいようにしました。
登場人物紹介
東雲 聖(セイ)
21歳
誕生月6月
身長175cm
痩せ型
黒髪。ボサボサだったが髪を切ってスッキリした。
物語の主人公。
酒好き。
非モテ。
知識は少ないが順応能力は割と高め。
あまり動じず、自分の事で達観しているところがややある。
ハーリー
三十代男性。
商人組合職員。
人望も厚く、仕事も真面目にこなすが、余計な事も話す為、本人が思っているほど|組合長《ギルドマスター》の評価は高くない。
宿のおばちゃん
四十代女性。
宿屋の女将。
宿の人気の料理達は実は夫が全て作っていて、おばちゃんは食べるの専門だったりする。
(この人物紹介は必要なかったですが、おばちゃんは後々も出てきます)
ミラン
13歳
誕生月5月
身長158cm
美少女。
金髪でロング。髪はいつも下ろしているが、仕事の時は後ろで纏めている。(聖と会った時だけは予定外の事で、下ろしていた)
頭が良くて、気が使える。
知識も豊富。
面倒見もいい。
クラス委員タイプ。
性格は真面目。
甘いもの好き。
長濱 聖奈
21歳
誕生月6月
身長165cm
黒髪ロング。髪型のバリエーションは豊。ただ下ろしているだけの時は少ない。
モデル体型。誰もが認める美人。
運動も勉強も平均以上。
生粋のオタク。
性格は不明。
須藤 智也
20歳
誕生月6月
身長178cm
茶髪。
リア充。
勉強よりもスポーツが得意。
人にいい顔をする為断れない性格。
善人。
彼女に、同い年の川崎 奈々を持つ。
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