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図書館で出会った君は___
阿部side
俺は大学二年生の、阿部亮平。
学校ではモテたりするのかもしれないけど、正直疲れる。
だからこの図書館は、落ち着きの場だ。
ここで本を読んだり、教科書を開いたりするだけで、ホッとする。
居場所なんだ、って思える。
今日もこの図書館に来た。
今日は俺が好きな小説の、新刊が出たようなので、探しに来た。
小説のコーナーは……
あそこに背伸びしている子がいる。
本が取れないのかな、?
ひょいっ、
阿「これ?」
そう言って笑いかけてみるけど、反応がない。
3秒くらいの沈黙が続いたあと、その子はお辞儀をして走っていってしまった。
…いそいでたのかな、?
嫌われたわけじゃないといいな。
また話せたらいいな、
そんなことを思いながら俺は、お目当ての小説を手に取った。
次の日も、その次の日も、あの子はいた。
いつも本を読んでいた。
俺の目の前の席で。
あっちは気づいていないのかもしれない。
時々本の上から目を向けてみると、真剣に本を読んでるあの子が見えた。
俺が好きなミステリー小説を読んでたから、声をかけたこともあった。
阿「あの、その本、面白いですよね、!」
やっぱり無視されてしまった。
ちょっと寂しかったけど、あの子と話してみたくて、頑張った。
阿「ハンカチ落としましたよ、?」
その時も答えてくれなくて。
振り向いてすらくれなかった。
そんなことが何回も続いて。
どんなきっかけでもいいから。
あの子と話してみたい。
あの子の笑った顔が見てみたい。
そう思うようになった。
図書館に来た時にも、すれ違った時にも、ニコッってして目を合わすようにしてみた。
一回だけ目があったことがあった。
嬉しくて、夢中で笑いかけると、あの子も笑い返してくれた。
その笑顔になぜか惹きつけられて。
見た瞬間、胸がぐってなって。
垂れ下がる目とか、ニコッて効果音がつきそうな唇とか。
また見たい、って思うようになった。
千冬side
私 の名前は芹澤千冬。
そこら辺の高校に通う、そこら辺の高校生。
だけど、普通の人とは、ちょっと違うとこがある。
それは、 “耳が聴こえない” こと。
初めて会う人とは苦労する。
友達とか、理解してる人は、優しく接してくれる。
それは嬉しかった。
でもそれが迷惑をかけているようで、なんか苦しかった。
私が最近ハマっている場所。
それは図書館。
静かで居心地もいいし、何より本が好きだから。
ある日、本が取れなくて困っていると、後ろから手が伸びてきた。
小説みたいな展開で、ちょっとだけドキドキした。
渡してくれたお兄さんは、アイドルみたいな、かっこいい人だった。
優しそうで、あったかい感じがした。
それから私はあのお兄さんのことがちょっと気になって、前に座ってみた。
いつも難しそうな問題を解いていて、本の隙間からこっそりお兄さんの顔をのぞいてみると、
難しそうな問題から、わかった時の顔、
全部顔が違って、面白かった。
こっちを向いた時は恥ずかしくて逸らしちゃったけど、図書館に来た時、
一番にお兄さんを探すと、目があった。
ニコッって笑いかけてくれて、心臓が止まりそうになった。
私も笑いかけたけど、うまく笑えてるかわからなかった。
今日はテストも近いから、勉強をすることにした。
いつも通りの席に行く。
そこはいつも通りあのお兄さんの前だった。
テキストを開くと、おにいさんはちょっとおどろいた顔をしていた。
悩んでいる時、ふっと視線を上げると、お兄さんの口が動いていた。
私に話しかけてるのかもしれない。
無視、したくない……
そう思った私は鞄から筆談パットを取り出した。
そこに、
“ 私は耳が聴こえません、これで話してもらえますか、?”
と書いて渡した。
いつもは、きもっ、て言われたりとか、めんどくさっ、て言われたりするのを怖がる。
だけどこのお兄さんは、受け入れてくれるんじゃないかな、って思ったから渡した。
お兄さんは一瞬驚いたような顔をしてから、私を見た。
渡されたパッドには、綺麗な文字でこう書いてあった。
“私は耳が聴こえません、これで話してもらえますか、?
↑ 消し方がわからないんですが……”
私は思わず吹き出してしまった。
何が書いてあるのかと思ったら、……笑
可愛い人だなぁ、
そう思って目線を上げると、困ったような顔をしたお兄さんがいた。
私はパッドを見せて、ボタンを押した。
すごい、と言う口パクをしていた。
私は久しぶりに笑った気がした。
改めてパッドを渡すと、こう書いてあった。
“耳が聞こえないんですね。今まで話しかけちゃってごめんなさい。
勉強、ってことは学生さんですか?“
私もできるだけ速く、丁寧に書いて渡した。
‘ 全然気にしないでください。はい、高校2年生です。 お兄さんは…?’
“ 大学2年生の、阿部亮平って言います。高校2年生なら、来年一緒にいられるかもね!”
‘どこの大学ですか?’
“帝之原学園だよ“
そこは、結構難関高だった。
だけど一年だけ大学が被るのは、もしかしたら運命かもしれない。
私の今の成績では、到底無理だった。
そして今は二月。
あと一年もない。
‘…私がそこ目指せると思いますか?’
そう書くと、お兄さんは少し目を見開いた。
“ 行きたいと思うなら、目指すのは自由だと思うな?”
私の目の前が開けた気がした。
きっと、この人と一緒にいたら何かが変わる気がする。
‘私、そこを目指します、’
“そっか、頑張ってね!俺も勉強教えたりはできるから。…なんて呼んだら良い?”
‘ 芹澤、千冬なので、なんでも…’
“そっか、千冬ね?”
‘私は阿部さんで…’
”そっか、気が向いたら亮平って呼んでね?“
‘はい、’
それからも、まずは先生に言うべきだとか、こんなことを勉強すべきだとか教えてもらった。
宿題は家にやる羽目になったけど、宿題よりも大事なことな気がしたから。
次のお話 ♡1…
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