テラーノベル
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日曜日。
俺は朝からバイトだった。
昼過ぎに帰ってきて、玄関のドアを開ける。
「ただいまー……」
「おかえり」
「…………」
俺は固まった。
「……なんでいるの?」
ソファに恭也が座っていた。
「暇だったから」
「ここ俺の家なんですけど」
「知ってる」
「なんで勝手にいるんですか」
「みどりが入れてくれた」
「お前……」
俺はみどりを見る。
「だって恭也、ゲーム持ってた」
「それだけ?」
「うん」
「現金だなぁ……」
恭也が笑う。
「まあまあ。勝手に上がったのは悪かったって」
「いや、別にいいですけど……」
俺は靴を脱ぐ。
「で、何やってたんです?」
「ゲーム」
「また?」
「また」
みどりがコントローラーを握っている。
「……勝った?」
「勝った」
「誰に?」
「恭也」
「お前、また負けたの?」
「今日は調子悪かったんだよ」
「前も聞いた気がする」
「気のせい」
「絶対違う」
俺はソファに座った。
「……昼飯食べた?」
「まだ」
「みどりは?」
「食べてない」
「なんで?」
「ゲームしてたから」
「お前ら……」
俺は時計を見る。
もう午後二時。
「……何か食うか」
「肉」
「お前はそれしかないの?」
「肉」
「はいはい」
冷蔵庫を開ける。
「……何作るかな」
「チャーハンとか?」
恭也が後ろから覗く。
「いいね…」
「じゃ、俺やるわ」
「え?」
「料理くらいできるって」
「意外…」
「失礼だな」
「いや、見た目が……」
「見た目が?」
「……何でもないです」
「言えや」
「怖い」
「今さら?」
恭也が笑いながら冷蔵庫から食材を取り出す。
「みどり、食える?」
「食べる」
「何入れる?」
「肉」
「決まりやな」
数十分後。
「完成」
テーブルに料理が並ぶ。
「おお……」
思ったよりちゃんとしている。
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
みどりが一口食べる。
「…………」
「どう?」
「おいしい」
「だろ?」
恭也が満足そうに笑う。
「らだ男より美味いな」
「うるさい」
「ほんと」
「みどりまで!?」
俺も食べる。
「……うま」
「だろ?」
「悔しい」
「なんでやねん」
食べ終わったあと。
恭也が食器を片付ける。
「洗っとくわ」
「いや、俺がやるからいいよ」
「いいって」
「……じゃあお願いします」
「おう」
俺はソファに座る。
みどりも隣に来た。
「らだ男」
「ん?」
「恭也、いい人」
「まあ……そうだな」
「好き」
「おい」
「なに?」
「その言い方だと誤解されるぞ」
「?」
「……いや、いいや」
みどりは首を傾げる。
「らだ男も好き」
「…………」
「?」
「……そういうこと平然と言うなよ」
「なんで?」
「なんでもない」
キッチンから恭也の声がする。
「おーい、らだ男」
「はい?」
「皿、どこ?」
「右の棚」
「これ?」
「それ」
「了解」
――なんだろう。
少し前まで。
この部屋には俺一人しかいなかった。
それが今では。
みどりがいて。
恭也がいて。
コンタミにも顔を出すようになって。
零雨とも知り合った。
「…………」
人と関わることなんて、そんなに多くなかったのに。
気づけば、少しずつ増えている。
「らだ男」
「ん?」
「楽しい?」
「……何が?」
「今」
「…………」
俺は部屋を見回した。
「……まあ」
「うん」
「悪くない」
みどりが笑う。
「よかった」
その日の夕方にて。
恭也が帰る時間になった。
「じゃ、またな」
「はい」
「みどり」
「なに?」
「次は負けねぇからな」
「うん」
「その顔、絶対負けると思ってるだろ」
「うん」
「正直だなぁ!」
恭也が笑った。そしてドアを開ける。
「じゃあなー」
「また遊ぼうな」
「おうよ」
ドアが閉まり、静かになる。
「…………」
「…………」
俺とみどりだけになった。
「……静かだな」
「うん」
「さっきまでうるさかったからな」
「楽しかった」
「そうだな」
みどりが窓の外を見る。
「……また来る?」
「たぶん」
「そっか」
「嬉しい?」
「うん」
「そっか」
俺も窓の外を見る。
夕暮れの街。昨日と同じ景色。
なのに。
俺には少しだけ違って見えた。
ばなな☆♡
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コメント
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ああ、読んだ読んだ。「増えていく日常」……すごく良かったです。恭也が勝手に上がり込んでゲームして、三人でチャーハン食べて、みどりが「らだ男も好き」って平然と言うところ、らだ男が照れてるのが可愛くてじんわりしました。最後の「昨日と同じ景色。なのに。俺には少しだけ違って見えた」っていう一文、静かな変化がすごく伝わってきて、胸が温かくなりました。人が増えていく日常、いいですね。