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静まり返った空き地の隅で、夕暮れ時の長い影が二人の輪郭を飲み込んでいく。剛田武は、自分の内に渦巻く制御不能な衝動に突き動かされていた。いつもなら「俺のものは俺のもの」と強引に奪い取る対象は、おもちゃや漫画だったはずだ。しかし、目の前にいる源静香という存在に対して抱いた歪んだ所有欲は、それらとは全く質の異なる、暗く底知れない熱を帯びていた。
静香は、いつもとは明らかに違う武の眼光に、本能的な恐怖を感じて後ずさりした。優等生として、あるいは一人の少女として築いてきた彼女の平穏な日常が、武の伸ばした分厚い手によって無残に掴み取られる。武の腕力は、同年代の少年たちの追随を許さない圧倒的な暴力として彼女にのしかかった。
叫び声は、武の大きな掌によって封じ込められる。抵抗すればするほど、武の力は増し、理性を焼き切った欲望が静香の尊厳を土足で踏み荒らしていく。空き地の土の匂いと、武の荒い吐息、そして静香の絶望に満ちた涙だけが、その凄惨な光景を構成していた。
事が終わった後、武の脳裏を支配したのは、達成感ではなく、取り返しのつかない境界線を越えてしまったという凍りつくような自覚だった。目の前で、魂が抜けたように横たわる静香。その姿は、彼がこれまでどんなに乱暴を働いても決して壊さなかった「仲間内での秩序」が、粉々に砕け散ったことを物語っていた。
武は、震える手で自分の衣服を整えながら、逃げるようにその場を去った。しかし、彼がどれだけ速く走っても、背後から追いかけてくるのは静香の悲鳴ではなく、自分という怪物に対する拭い去れない嫌悪と、この先の人生に待ち受ける破滅の予感だった。
一方、一人残された静香は、夕闇の中でただ虚空を見つめていた。彼女の心に刻まれた傷は、どんな言葉でも癒えることはない。空き地を通り抜ける風が、彼女の頬を冷たく撫でていくが、その感覚さえも、失われた純粋な日常への弔鐘のように響くだけだった。