テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
テラーノベルってダッシュ記号どうやって打つんですか?
どうしても繋がらなくって──(←こうなる
有識者の方教えてください!
注意
少し旧国あり
病み要素あり
ちょっとキャラ崩壊してるかも
OKの方はどうぞ⇩
『日本か!なんか久しぶりだな』
「はい、お盆前ぶりです」
『有給、取れてよかったな』
「何としてでも行かなければならない所があったので……」
熱気のこもったオフィスでの、何気ない会話
セミの鳴く声が俺たちの思考を邪魔する
「ねぇ、ドイツさん」
「今度、海見に行きません?」
何かと思えば、突拍子にこんなことを言ってくる
みんな、夏はテンションがおかしくなりがちだ
「最近は、イタリアさんとかも真面目になってきたし、休みは取れるでしょう?」
『まぁ、取れないことは無いが……』
「じゃあ、行きましょう!いい場所があるんですよ」
そう言って心底楽しそうに話し始めるもんだから、断ることなどできなかった
結局、海に行くのは来週の日曜日になった
「あ!ドイツさん!」
日本が紹介した浜辺の近くの駅で待ち合わせをしていた
そういえば日本の私服を見るのは初めてだ
『ああ、待たせたな……』
薄手のパーカーにジーンズ
思っていたより普通だった
少し暑そうだが……
「ここねぇ、海に行く途中も綺麗なんですよ〜」
「随分と詳しいな」
「ふふ、前に先代に連れられて行きましたからねぇ」
日本と先代の日帝が同時に存在したのは、僅か数ヶ月だ
その間にここに来ていたということか
そう言えば、確実に死んだ俺の先代やイタリアの先代と違い、日本のは行方不明扱いだったな……
道は、絵に描いたような港町だった
人影ない緩やかな下り道を、 低いアスファルト塀に囲まれた小さな一軒家が建ち並んでいる。
少し開けた場所に出ると、町を見下ろすことができた
まるでジオラマを眺めているようだった
涼しげな風が吹く
自転車に乗って走り回りたいような町だ
「ほら、海が見えてきましたよ」
それはいきなり現れた
ガラス玉のような澄んだ青色で、薄橙の砂浜とよく合っている
『随分と澄んだ海だな』
「でしょう?」
砂浜まで歩いた
予想通りさらさらしていて、冷たくて気持ちいい
沈黙が続く
ゴロゴロ……と音が聞こえた
『雷か?雨は降っていないが……』
「多分、海鳴りですね」
『海鳴り?』
「沖の方で発生した波がこっちに来て崩れる音ですよ。昔はこれで天気を予想したものです」
『へぇ……』
「きっと、沖の方は嵐でしょうねぇ……」
台風の予報は出ていなかった気がするが……
「僕たちもそろそろ帰りましょうか」
『もうか?』
「電車が少ないですからね」
来た道を歩いてる時、公園があるのに気づいた
誰にも乗られていないブランコが、風に揺られてきいきい音を立てている
気づいたら空がピンクに染まっていた
日本の足が、駅とは違う方向に進んで行く
ここがどこかも分からないので、取り敢えずついて行った
「これを見せたかったんです」
小さな原っぱで、日本が指をさす
オレンジ色の夕陽に照らされる海が見えた
『……綺麗だ』
ため息混じりに、思わず声が出る
「時が止まれば、ずっと眺めていられるのに……」
日本が呟いていた
「これが見せたかったんですよ」
「ここまで綺麗に見れるのは年に数日だけですからね」
「さ、帰りましょうか」
日本に促され、駅まで歩いてゆく
「僕は用事があるのでもう少し残ります」
『わかった、先に帰ってる』
またな、と言うが、日本はニコニコするだけで言葉を返してくれない
「……最後に、見せられてよかったです」
電車に乗ると、眠気が襲ってきた
目的の駅は遠いし、まぁいいだろうと、それに身を委ねた
思えば、無理にでも一緒に帰ればよかったのに
次の日
『あれ、日本は?』
向かいのデスクのアメリカに聞く
「確か有給取ってたぞ」
『また?』
「まぁ、あれだけ働いてもらっちゃあ誰も 文句言えねぇよ……」
確かに、日本が有給を取っているのを見たのは初めてだった
なんとなく日本とのメールを見ると、この間伝えられた道順が文字化けしていて読めない
思い出そうとするが、何故かそこの記憶だけぽっかり無くなってしまったように、何も出てこない
日本は次の日も、その次の日も会社に来なかった
『流石におかしくないか?』
「あぁ、今日から無断欠勤扱いだな……」
どうしたのだろうか
やはり、この間の海が怪しいと思った
行く方法を覚えていないので、ひたすら検索をかける
『無いな……』
それらしいワードは全て試した
移動距離なんかも計算して、範囲を絞ったが、該当する場所は見つからない
めぼしい収穫もなく、仕事に戻った
日本が見つからないまま秋が来た
行方不明扱いになっている
『マジで、どこなんだよ……』
「ドイツ、あんまり無理しない方がいいんね」
『でも……!』
見かねたイタリアに声を掛けられる
警察が総出で動いても、俺たちの特権をフル活用しても、日本は見つからなかった
俺一人で何も出来ないのは分かりきっている
『諦められないんだよ……』
脳裏には、あの時の海がある
忘れられなかった
日本との最後の記憶
また、見たい……
『そろそろ一年か……』
お盆が近づいてきた
あの海に行こうと思う
昨日、あの場所が夢に出てきた
今なら、あそこにもう一度たどり着ける気がする
久しぶりに有給をとり、お盆に行くことにした
電車に乗り、外の景色を眺める
いつの間にか寝てしまっていたようだ
(ここは……!)
間違いない、あの海だった
忘れないように、と駅名を見るが、掠れていて読めない
途中で寝るんじゃなかったな……
でも、これで道筋は思い出した
あの時の道を歩く
前は誰もいなかったブランコに、小さな女の子が座っている
遠くの通りを、おじいさんが歩いている
前は一人も居なかったのに、と不思議に思う
また、いきなり海が現れた
綺麗な海で、思わず引き込まれそうになる
何となく、あの丘に行こうと思い、足を動かす
時間的には空は青いはずだが、何故か真っ赤に染まっている
原っぱには誰もいないはずだが、確かに日本の息遣いを感じる
涙が出てきた
俺を嘲笑うかのようにカラスの群れが、かあかあと鳴いている
『そこに、いるのか……?』
返事はない
日本はきっとこちらの住人になってしまったのだ
何となくだが、日本はもう戻ってくれないとわかった
俺だって、日本のところに居たい……
そういえば、前に見た夕陽は、日本の目によく似ていた
帰りの電車では、また寝てしまった
「ドイツ、なんか久しぶりなんね!」
『お盆は有休取ってたからな』
「珍しいんね、ドイツが休むなんて……」
話しながらも俺は上の空で、日本の所に行く方法を考えていた
そこに留まれば良いのだろうが、そのままだと何だか寂しい
時々は、仲間の顔が見たくなるのだろうな
そこで、とても素晴らしい考えを思いついた
「なぁ、イタリア……」
「海を見に行かないか?」
#戦争
憂海歌
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コメント
1件
めっちゃエモかった……!!😭💕 最後の「海を見に行かないか?」で全部持ってかれたし、夕陽と日本の目が重なる描写がすごく切なくて泣きそうになったよ。海鳴りやブランクの使い方も詩的で、夏の終わりの匂いがした。ドイツさんの無意識の執着がじわじわ伝わってきて、もう次の話が待ちきれないよ……! かぴばらさん、最高の雰囲気作品ありがとうございます!!🌸