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うわあ…ガゼボのシーン、胸が締め付けられました。ナーシャが勇気を出して「二人で話したい」って言ったのに、着いたら婚約者含む四人が楽しそうに座ってて、しかも自分の席がない。あの「いつもの我儘?」のリリアの一言がもう、読んでるこっちまで刺さりました。家ぐるみで婚約者交流を潰してるのに気づく展開も、じわじわと追い詰められていく感じが伝わってきて苦しいです。まだ続きがあるなら、ナーシャの心境がどう変わっていくのか気になります。
ナーシャがローランと唯一二人で持てる交流は、学園の帰りの馬車の中だけだった。それでも婚姻前の二人だから、どちらにも付き添いはいる。ローランの侍従とナーシャの専属侍女のセリナだ。 そんな中で、なかなか二人での会話は、し難かった。それでも一度勇気を出して、ナーシャは言ってみたことがある。
「今日は、庭のガゼボで二人でお話しませんか?」
「いいよ、そうしようか」
ローランは直ぐにそう快諾してくれたので、ナーシャは勇気を出して良かったとホッと胸を撫で下ろしたのだが、それは見事に裏切られた。いや彼は裏切ったつもりはないのかもしれない。
侯爵家に付いて、直ぐに家令にガゼボでローランとお茶をすると告げ、彼を庭へと家令に案内してもらう事にした。セリナと自室に行き、出来るだけ待たせないようにと、急いで着替えてガゼボにナーシャが向かうと、そこにはセシルとアリス、リリアとローランが隣り合って座り楽しそうに笑っていた。
そして4人がけのテーブルには、ナーシャの椅子はない。
「あっナーシャ!今日は|ガゼボ《こっち》にしたんだって?いいアイデアだった。偶には夕焼けの中のお茶もいいもんだな」
セシルは満面の笑みで、ナーシャに呼び掛けるように手を振って言ったが、ナーシャの席が無いことには気付いていない。
ナーシャはその場に立ち尽くすしかない。
慌ててセリナが椅子を取りに行こうとするのをナーシャは止めた。
「セリナいいわ。ローラン様アリス様ごゆっくりお過ごしください」
ナーシャは、軽く礼をして踵を返した。
その時に、初めてナーシャの席が無いことに気付いたセシルとローラン、そしてアリスだったが、慌ててナーシャの背に声をかけるが、誰もナーシャを追う事はない。
「お姉様って自分でここに誘ったのに、何が気に入らないのかしら?《《いつもの》》我儘?」
セシル達のナーシャを呼び止める声よりも、リリアの声の方がナーシャには大きく聞こえて、ナーシャの心に棘のように刺さる。
(いつもの我儘って何?私我儘だと思われているの?)
その夜ナーシャは、夕食も部屋で取ることにした。
結局この日の出来事は、このまま有耶無耶のまま終わり、誰からも謝罪されることなく、彼らにとっては何事も無かったように日常になる。
ナーシャの心に、モヤモヤした得体のしれない気持ちが蓄積されただけだった。
そしてこんな出来事は、似たようなものが大なり小なりあって、3人が学園を卒業するまで続いた。
セシルとアリスは、学園卒業後2ヶ月後に婚姻して、二人は敷地内の別宅に移動した。新婚夫婦に配慮したものだったが、その日からナーシャは、父とリリアと3人だけで本宅に住むことになるのだが、食事はナーシャだけが別だった。
食事の時間をあからさまにずらされたのだ。
どうしてそんな事になったのかは、家令からは父の差配としか説明は無く、父に尋ねても曖昧なまま言葉を濁されてしまうだけだったが、ナーシャを見る目が前以上に厳しくなったように感じた。
ローランとの婚約者通しの交流も形が変わった。
それまでは学園の帰りに送ってもらったあとお茶をする。そんな形であったから、その内容が良いか悪いかは別として、毎日顔を合わせていた。
だが、ローランも学園卒業後は、家の仕事に関わらなければならない。セシルと同じように、学園で学んだ領地経営科の授業を活かし、父親の元で実践として経験を積み重ね始めなければならないのだ。
その為月に二度、交互に互いの家に相手を招待して、交流を続けることになった。
だが真面に交流が出来たのは始めの1ヶ月だけだった。
次の月にローランから、伯爵家で行う日に領地に向かうという理由でキャンセルされて代わりの日程は組まれなかった。侯爵家で行う時は、何故かリリアも同席するか、その日に限って父に用事を言い付けられ、ナーシャの方からキャンセルさせられた。次の月以降も同じような物だった。
結局二人で真面な交流が叶わないまま一年が過ぎ、ナーシャが3学年に上がる時、リリアが学園に入学する事になる。
丁度その頃だった。
ナーシャは伯爵家で行われる婚約者の交流の日、玄関前で馬車を待っているとローランが、やってきたのに出会した。
「ローラン様、今日は伯爵家で行われる日では?」
「えっ?こちらに呼ばれたから来たんだけど」
「私は呼んでおりませんが⋯」
「あぁナーシャじゃないよ、リリアに呼ばれたんだ」
その言葉にナーシャは衝撃を受ける。
月に2度の婚約者の交流の日、婚約者ではなくその義妹に呼ばれた事を、何故ローランは不思議に思わないのか。しかも、その口ぶりからは、ナーシャが伯爵家へ出かける所だと思ってもいない、というかどうでもいいように聞こえた。
「ローラン様は私が不在でも、婚約者との交流はできるとお考えなのですね」
「えっ?そんな事⋯まさかうちへ?」
ローランはそこでようやくナーシャが、伯爵家へ向けて出掛けるところだったと気付いたようだった。
「連絡の行き違いなのか?」
「一言も聞いておりません」
「⋯⋯」
ナーシャの言葉にローランが返事を返し倦ねた時に、邸内から家令が出て来た。
そしてナーシャがそこにいる事に驚く。
「ナーシャ様、まだお出かけでは⋯」
「⋯⋯」
「どういうことだ?」
家令の言葉でナーシャは、家ぐるみで婚約者の交流を潰しに掛かっていることに気付いた。
その事にローランも気付いたようで、少し強い口調で家令に問い質す。ローランのその様子に、彼の中では《《まだ》》婚約者はナーシャのままなのだと感じた。
家令は口を噤んだまま、言葉を発しなくなる。そこに現れたのはアリスだった。
彼女はいつもは別宅なのに、今日は本邸に来ていたようだ。
「あらローラン!《《おとといぶりね》》。今日は伯爵家ではなかったの?」
どうやら、ローランは一昨日も侯爵家に来ていたようだ。ナーシャだけがそれを知らされていなかった。
#貴族令嬢
maruko
46
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