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王子のノエル・クラーク、勇者アルト・ヴォイド、
そして騎士たちは、人間界の城へ戻っていた。
会議室に足を踏み入れた瞬間、
張りつめていた緊張が、ようやくほどける。
だが――
誰一人、軽口を叩く者はいなかった。
沈黙を破ったのは、ノエルだった。
「……アルト」
まだ少年の声。
けれどそこには、王子としての覚悟が滲んでいる。
「予想以上、だったな」
アルトは椅子に腰を下ろし、
ぎゅっと拳を握った。
「あぁ……」
「三歳だろ?」
「……たぶんな」
アルトは視線を落とす。
「なのに、あれだ」
言葉にしなくても、全員が理解していた。
――美しすぎた。
「正直さ」
アルトは、ぽつりと続ける。
「怖かった」
騎士たちが、息をのむ。
「魔力とか、威圧じゃない。
ただ……見ただけで、頭が真っ白になる」
「十歳の俺たちですら、あれだ」
ノエルは、静かに言った。
「成長したら……どうなる?」
答えは、誰からも返らなかった。
ノエルは、少しだけ目を伏せ、
そしてはっきりと告げる。
「放っておけば、
人間界と魔界の均衡は壊れる」
「でも――」
王子は、強く続けた。
「彼女は、壊すための存在じゃない」
アルトは、ゆっくりと頷く。
「……守られる側だ」
それは勇者としての言葉ではなく、
一人の少年としての本音だった。
ノエルは、決意を込めて言う。
「魔界と協定を結ぶ」
「人間界と魔界、両方で」
「彼女を、見守る」
「……よろしいのですか?」
騎士団長ギルベルトが、慎重に問いかける。
ノエルは、迷わなかった。
「あの子を敵に回す未来なんて、
考えたくもない」
アルトは、小さく息を吐く。
「……また、会えるよな」
誰に向けたとも知れない、その言葉。
ノエルは、静かに答えた。
「あぁ」
「必ずだ」
その瞬間、
少年たちはまだ知らなかった。
この“見守る”という選択が、
やがて――
恋となり、執着となり、世界を揺るがす
ということを。