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昼下がりの寺。風が、静かに通り抜ける。
チリン……
風鈴の音だけが、境内に響く。
まるで、時間が止まったような空間。
石段を上る男。
畑中浩一。
「……ガキどもとは違って、今回はちゃんとアポありか」
ゆっくりと門へ視線を向ける。
「……ま、どんな奴かは見てみねぇと分かんねぇがな」
門をくぐる。
そこに立っていたのは――
一人の老僧。
「お待ちしておりました、畑中殿」
深く頭を下げる。
畑中も軽く一礼。
「一祟(いっすい)は修行中です。こちらへ」
案内されるまま、奥へ。
広い修行場。
磨かれた床。
差し込む光。
そして――
一人の青年。
静かに、動いている。
スッ……
流れるような動き。
無駄がない。
美しい。
だが――
鋭い。
「……ほぉ」
畑中、壁際で観察。
「こりゃ、当たりかもな」
その瞬間。
ピタッ
動きが止まる。
ゆっくりと顔が上がる。
まっすぐ、こちらを見る。
「そこの方」
静かな声。
「どうぞ、こちらへ」
――バレている。
「……は?」
畑中の目がわずかに開く。
(気配は消してたはずだ)
(なんで気づく?)
一瞬の沈黙。
「……チッ」
観念したように歩き出す。
「バレバレかよ」
青年の前へ。
僧衣の男は、穏やかに手を合わせる。
「初めまして」
深く礼。
「一祟と申します」
「畑中浩一殿ですね」
「遠いところ、ありがとうございます」
丁寧すぎる対応。
畑中、少しだけ苦笑。
「……ずいぶんちゃんとしてんな」
「見た目通りってか?」
一祟、柔らかく笑う。
「よく言われます」
自然体。
一切の気負いがない。
だが――
(違ぇな)
畑中の目が細くなる。
(こいつ……ただの坊主じゃねぇ)
ポケットからタバコを取り出す。
……が、
一祟を見る。
「……」
そのまま戻す。
「……チッ」
気まずそうに頭をかく。
「ま、いい。本題だ」
空気が変わる。
「俺はORVASだ」
「……」
「お前に用がある」
一祟の目が、わずかに鋭くなる。
「用、ですか」
「ああ」
一歩、近づく。
「2025年」
「この世界は――侵略されてる」
沈黙。
「宇宙から来た“何か”に、な」
風が止む。
「俺たちは、それと戦うチームを作ってる」
#性悪聖女
一祟、目を閉じる。
数秒。
思考。
静かに、深く。
やがて――
目を開く。
「……興味深いお話ですね」
穏やかな声。
だが、その奥にあるもの。
覚悟。
畑中、内心で呟く。
(やっぱりな)
(こいつ……異質だ)
優しさと強さ。
静と動。
全部が同居している。
「どうする?」
短く問う。
「来るか?」
一祟、少しだけ空を見上げる。
揺れる風鈴。
チリン……
そして――
静かに微笑む。
「……もし、それが」
「人を救うための道であるなら」
「私は、力を貸しましょう」
その言葉に、畑中がニヤッと笑う。
「決まりだな」
新たな“影”が加わる。
静かなる猛者。
その拳は、
まだ誰も知らない。
だが確実に――
世界を揺るがす。
影は三つ、揃い始めた。