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はじめまして!めっちゃくちゃ面白かったです〜!!! 次の企画…楽しみすぎます🫶
。
「佐野さん、本日は一日密着取材をよろしくお願いします!」
「お願いしまーす!」
朝9時。
都内のとあるマンションの前で、俺たち取材班は一人の男性と向き合っていた。
佐野勇斗、28歳。
身長も高く、顔もいい。爽やかな笑顔に、初対面の人間にも物怖じしない明るさ。今回の企画にぴったりの人物だ。
ちなみに、隣にいる坂田は先ほどからカメラを構えたまま、若干浮かれている。
黒「坂田さん、顔が緩んでます」
坂「いや、だって佐野さん、めちゃくちゃイケメンじゃないですか」
勇「え、ありがとうございます! もっと言ってください!」
黒「要求するタイプなんですね」
勇「褒められたら伸びるんで!」
坂「かわいいところもあるんですね……」
黒「坂田さん、仕事してください」
開始わずか三分。
この先が少し不安になった。
黒「では佐野さん、今日は普段の生活に密着させていただくということで、まずはこれからどちらへ?」
勇「あー、今日は特に予定ないんですよね。家帰って、友達と遊ぶくらい?」
黒「ご友人と?」
勇「はい! たぶんもう家にいるんじゃないかな」
黒「……もう?」
勇「あ、俺、合鍵渡してるんで!」
黒「…………はい?」
坂「合鍵!?」
勇「え? いや、普通じゃないですか?」
黒「いや、普通かどうかを確認しているんです」
勇「え、だって友達ですよ?」
黒「なるほど。ご友人に合鍵を」
勇「はい!」
黒「…………」
坂「黒田さん、まだ午前中です」
黒「分かってます。私もまだ心の準備ができていないだけです」
取材開始早々、謎の人物が登場した。
佐野勇斗の家に、合鍵を持って自由に出入りする友人。
一体どんな人物なのだろうか。
俺たちは佐野に続き、マンションの中へと入った。
*
「ただいまー!」
佐野が玄関のドアを開ける。
すると。
「おっそ」
リビングの方から、低く落ち着いた声がした。
姿を現したのは、佐野よりも少し小柄な男性だった。
吉田仁人、26歳。
すっきりとした顔立ちに、可愛らしく、そして大きな目。これまたとんでもないイケメンである。
ただし。
仁「遅い。何時だと思ってんの?」
勇「えー、まだ午前中じゃん!」
仁「お前が九時には帰るって言ったんだろ」
勇「ごめんって!」
仁「……別に。飯、冷めるから」
そう言って、吉田はキッチンへ戻ろうとした。
その瞬間。
勇「仁人〜〜〜!」
仁「うわっ、ちょ、何!?」
佐野が背後から吉田に抱きついた。
黒「…………」
坂「…………」
仁「おい! 撮影! 撮影来てんだろ!!」
勇「うん! だから見せてる!」
仁「何を!?」
勇「俺と仁人の仲のよさ!」
仁「見せなくていい!! 離れろ!!」
勇「やだ!」
仁「やだじゃねえ!!」
怒鳴っている吉田。
しかし、佐野の腕を振りほどこうとはしない。
それどころか。
仁「……ほら、手洗ってこい。飯食うぞ」
勇「はーい!」
吉田は佐野の腕を軽く叩いてから、テーブルに並んだ料理を確認した。
佐野はご機嫌な様子で洗面所へ向かっていく。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「今の、どう思います?」
坂「付き合ってますよね?」
黒「ですよね?」
仁「いや、付き合ってないですけど」
黒・坂「聞こえてたんですか!?」
仁「めちゃくちゃ聞こえる距離で話してましたよね?」
黒「失礼しました。では、お二人はご友人ということで?」
仁「そうです」
坂「合鍵をお持ちなんですよね?」
仁「はい」
黒「食事も作られるんですか?」
仁「まあ、俺の方が料理するんで」
黒「佐野さんのために?」
仁「……いや、俺も食べるんで」
黒「なるほど」
坂「ちなみに、佐野さんがいないときもこちらに?」
仁「来ますけど」
黒「泊まることも?」
仁「ありますけど」
黒「…………」
坂「…………」
仁「何ですか?」
黒「いえ。仲のよいご友人なんだな、と」
仁「そうですよ」
黒「……恋人ではなく?」
仁「違います」
即答だった。
驚くほどの即答だった。
そこへ、洗面所から戻ってきた佐野が割り込んでくる。
勇「何の話ー?」
仁「俺らが付き合ってるって勘違いされてた」
勇「え!? なんで!?」
黒「こちらが聞きたいです」
勇「俺ら、めっちゃ仲いいだけなのにね!」
仁「……まあ、そうだけど」
勇「仁人って俺のこと大好きだもんな!」
仁「は?」
勇「え?」
仁「お前、今すぐ玄関から出ていけ」
勇「えっ、ひどくない!?」
仁「うるさい!」
勇「仁人〜〜〜!」
仁「抱きつくな!!」
坂「黒田さん」
黒「はい」
坂「これ、放送して大丈夫なんですかね」
黒「むしろ、どこをカットすればいいんでしょうね」
*
昼12時。
食卓には、吉田が作ったらしいオムライスが並んでいた。
佐野は椅子に座ると、当然のように吉田の隣へ移動した。
黒「佐野さん、そちらの席が定位置なんですか?」
勇「はい!」
仁「いや、別に。どこ座ってもいいだろ」
勇「仁人の隣がいい!」
仁「……はいはい」
黒「吉田さん、今の反応については?」
仁「何がですか?」
黒「佐野さんに隣に座られることについて」
仁「いつものことなんで」
黒「いつも」
坂「いつもなんですね」
仁「……何ですか、その顔」
坂「いえ、素敵な友情だなと思いまして!」
仁「絶対思ってないだろ」
正解である。
佐野は吉田のオムライスを覗き込んでいた。
勇「仁人、俺のケチャップ少なくない?」
仁「知らねえよ。自分でかけろ」
勇「仁人がかけて!」
仁「は?」
勇「お願い!」
仁「……子どもかよ」
そう言いながらも、吉田は佐野の皿を自分の方へ引き寄せた。
そして、ケチャップを手に取る。
勇「わーい!」
仁「うるさい。じっとしてろ」
勇「仁ちゃん、ハート描いて!」
仁「描かねえよ!!」
勇「えー!」
仁「……」
吉田は無言でケチャップを動かした。
数秒後。
皿の上には、見事なハートマークが完成していた。
勇「うわあああ!! 仁人!! ありがとう!!」
仁「うるせえ! 早く食え!!」
勇「大好き!!」
仁「はいはい」
黒「…………」
坂「…………」
黒「坂田さん、今、ハート描きましたよね」
坂「はい」
黒「しかも、頼まれて断ったのに描きましたよね」
坂「はい」
黒「そして佐野さんが大好きと言いました」
坂「はい」
黒「吉田さんは否定しませんでした」
坂「はい」
黒「…………」
坂「黒田さん、落ち着いてください」
黒「私は至って冷静です」
仁「お二人、さっきから全部聞こえてますよ」
黒「申し訳ありません」
勇「え、何? 俺らの仲よさに嫉妬してる?」
黒「してません」
勇「えー、絶対してるって!」
仁「勇斗、黙って食え」
勇「はーい!」
……吉田の一言で、佐野が本当に黙った。
黒「坂田さん」
坂「はい」
黒「今の、すごくないですか」
坂「すごいですね」
黒「佐野さん、さっきから吉田さんの言うことだけは素直に聞いてません?」
坂「確かに……」
仁「いや、こいつ普通にうるさいですよ」
勇「仁人ひどい!」
仁「ほら、食えって」
勇「はーい!」
黒「…………」
坂「…………」
黒「もう、いいでしょう」
坂「何がですか?」
黒「この二人、もういいでしょう」
坂「何がですか!?」
黒「取材する側の情緒が持ちません」
*
午後2時。
食事を終え、リビングでくつろぐ二人を撮影していた。
佐野はソファに座り、吉田はその隣に座ってスマートフォンを操作している。
いや。
正確に言えば、吉田はスマートフォンを操作していた。
佐野はその肩に頭を乗せていた。
黒「……佐野さん」
勇「はい?」
黒「何をされているんですか?」
勇「え? 休憩です!」
黒「肩に頭を乗せて?」
勇「はい!」
黒「吉田さんは嫌ではないんですか?」
仁「別に」
黒「別に」
仁「こいつ、眠いといつもこうなんで」
勇「仁人の隣、落ち着くんだもん」
仁「……」
勇「仁人、いい匂いするし」
仁「お前、黙れ」
勇「えー、褒めてるのに!」
仁「そういうことをカメラの前で言うな!」
勇「なんで?」
仁「なんでも!!」
吉田の耳が、ほんの少し赤くなっていた。
黒「坂田さん」
坂「はい」
黒「今の撮れました?」
坂「ばっちりです」
仁「消してください」
黒「え?」
仁「今のところ、消してください」
黒「なぜですか?」
仁「……恥ずかしいだろ」
佐「え、仁人照れてんの!?」
仁「照れてねえ!!」
勇「かわいい〜〜〜!!」
仁「お前、本当に一回黙れ!!」
佐野が笑いながら吉田の肩に顔を埋める。
吉田は文句を言いながら、佐野の頭を軽く押さえていた。
黒「…………」
坂「…………」
黒「坂田さん」
坂「はい」
黒「私たち、今日何の取材に来たんでしたっけ」
坂「佐野さんの一日密着です」
黒「そうでしたね」
坂「はい」
黒「……佐野さんの一日密着という名目で、吉田さんの照れ顔を撮影している気がするんですが」
坂「僕もそう思います」
仁「だから全部聞こえてるんだって!!」
勇「仁人、声でかい!」
仁「誰のせいだと思ってんだ!!」
*
午後3時半。
インターホンが鳴った。
ピンポーン。
勇「お、来た!」
仁「来たな」
黒「どなたですか?」
勇「友達です!」
黒「……まだ増えるんですか?」
勇「はい!」
黒「はい、じゃないんですよ」
佐野が玄関へ向かう。
ドアが開いた瞬間。
「勇斗ー! お邪魔しまーす!」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔しまーす!」
三人の男性が、ほぼ同時に入ってきた。
塩崎太智、25歳。
山中柔太郎、26歳。
曽野舜太、24歳。
三人とも、思わず振り返ってしまうほど顔がいい。
塩崎は明るく人懐っこい雰囲気。山中は柔らかな笑顔が印象的で、曽野は爽やかで華やかな顔立ちをしている。
つまり。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「この家、顔面偏差値どうなってるんですか?」
坂「僕に聞かれても困ります」
太「え!? 何!? テレビ!?」
舜「うわ、マジじゃん! すご!」
柔「勇ちゃん、何かやらかしたの?」
勇「何もしてねえわ!!」
太「いや、勇斗なら何かしてるだろ」
勇「お前ら、俺を何だと思ってんの!?」
舜「騒がしい人」
柔「すぐふざける人」
太「仁人に怒られる人」
勇「最後のやつおかしいだろ!!」
そのとき、リビングから吉田が顔を出した。
仁「お前ら、来たなら手洗えよー」
太「はーい!」
舜「仁ちゃん、なんか食べるもんある?」
仁「冷蔵庫」
舜「雑!!」
柔「よっしー、俺も手伝うよ」
仁「ありがとう、柔太郎」
勇「えっ、仁人、俺には冷たいのに!」
仁「お前はさっきケチャップで騒いでたからだろ」
勇「まだ根に持ってる!?」
太「え、何? ケチャップで何があったん?」
舜「俺も気になる!」
柔「俺も聞きたい」
勇「いや、別に大したことじゃないから!」
仁「ハート描いてって言われた」
太「…………は?」
舜「…………え?」
柔「…………ああ」
黒「……山中さん?」
柔「いや、勇ちゃんと仁ちゃんなら普通かなって」
黒「普通なんですか!?」
柔「はい」
黒「この世界の普通が分からなくなってきました」
太「ちょっと待って、ハート!? 仁人が!? 勇斗に!?」
仁「違う、オムライスに描いただけだろ!!」
舜「いやいやいや、俺らが来る前に何してんの!?」
勇「え、いいじゃん! 仁人、俺のこと大好きだから!」
仁「お前、今すぐ黙れ」
勇「はーい!」
太「従うんかい!!」
舜「勇ちゃん、仁ちゃんにだけ素直すぎるだろ!」
柔「なんか、いつものことだから驚かなくなってきたね」
黒「……あの」
五人「はい?」
黒「皆さん、本当に恋人ではないんですか?」
五人「違います」
黒「五人全員、回答が早すぎません!?」
坂「しかも全員、何の迷いもありませんでしたね」
太「いや、勇斗と仁人は昔からこんな感じなんで」
黒「昔から?」
舜「そうそう。勇ちゃんが仁ちゃんにべったりで、仁ちゃんが文句言いながら面倒見てる」
柔「でも、仁ちゃんも勇ちゃんがいないと結構探すよね」
仁「は!?」
勇「え!? そうなの!?」
仁「いや、探さねえよ!!」
柔「この前も『勇斗遅くない?』って言ってたじゃん」
太「言ってた言ってた!」
舜「しかも三回くらい!」
仁「お前ら全員、帰れ!!」
勇「仁人〜〜〜!! 俺のこと探してくれてたの!? かわいい〜〜〜!!」
仁「だから違うって言ってんだろ!!」
佐野が吉田に抱きつこうとする。
吉田が避ける。
佐野が追いかける。
吉田が逃げる。
太智が笑いながら実況を始める。
太「さあ始まりました! 佐野勇斗対吉田仁人! 本日の見どころは、仁人が何秒で勇斗を振り切れるか!」
舜「おっと! 佐野選手、身長差を生かして吉田選手に迫る!」
仁「実況すんな!!」
柔「仁ちゃん、右!」
仁「俺はアバターか!!」
坂「黒田さん、これ撮っていいんですかね」
黒「むしろ、撮らないという選択肢がありますか?」
カメラは回り続けた。
そして俺たちは、この日改めて確信した。
この五人、全員イケメンなのに、全員うるさい。
*
午後5時。
五人がソファや床に散らばり、ゲームを始めた。
佐野と吉田は当然のように隣同士。
太智と舜太は対戦に夢中。
柔太郎は二人の様子を見ながら、時々穏やかにツッコんでいる。
黒「皆さん、普段からこうして集まるんですか?」
太「そうですね! 予定合えば結構来ます!」
舜「勇ちゃんの家、居心地いいんですよ」
柔「よっしーがいると、ご飯も出てくるし」
仁「お前ら、それ目当てだろ」
太「違う違う! 吉田さんにも会いたいし!」
仁「……そ」
太「照れた?」
仁「照れてねえ」
舜「仁ちゃん、耳赤いよ!」
仁「うるさい!!」
勇「仁人、俺にも照れてよ!」
仁「何でだよ!!」
勇「俺ばっかり好きみたいじゃん!」
黒「…………」
坂「…………」
太「…………」
舜「…………」
柔「…………」
ゲームの音だけが鳴った。
吉田の手が止まった。
佐野はきょとんとしている。
黒「……佐野さん」
勇「はい?」
黒「今、何と?」
勇「え? 俺ばっかり好きみたいじゃん、って」
黒「……なるほど」
坂「吉田さん、今のお気持ちは?」
仁「……こいつ、ゲームに集中すると周り見えなくなるんですよ」
太「いや、そこじゃないだろ!」
舜「仁ちゃん、何か言い返さないの!?」
仁「うるさい!!」
勇「仁人、俺のこと好き?」
仁「……友達としてはな」
勇「えへへ!」
仁「……っ、何笑ってんだよ」
勇「いや、嬉しくて!」
仁「……ばか」
そう言って吉田は、佐野の頭をぽん、と軽く叩いた。
佐野は満足そうに笑っている。
黒田はカメラの横で、静かに額を押さえた。
黒「坂田さん」
坂「はい」
黒「この二人の関係性を、番組では何と紹介すればいいんでしょう」
坂「仲のよい友人、ですかね」
黒「映像を見た視聴者は信じるでしょうか」
坂「……難しいと思います」
黒「ですよね」
そのとき。
仁「おい、勇斗。次、お前の番」
勇「んー? 仁人やって!」
仁「自分でやれ!」
勇「仁人が勝つとこ見たい!」
仁「…………」
吉田は一瞬だけ口を閉じた。
そして。
仁「……一回だけだからな」
勇「やったー!!」
太「甘っっっ!!」
舜「砂糖吐きそう!!」
柔「ふふっ、いつも通りだね」
仁「お前ら、全員黙れ!!」
勇「仁人、大好きー!」
仁「はいはい!!」
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「今日の密着、予定より長引きそうですね」
坂「そうですね」
黒「なぜなら、まだ誰一人として帰る気配がない」
坂「ですね」
黒「そして佐野さんは、ずっと吉田さんにくっついている」
坂「ですね」
黒「吉田さんも、結局ずっと隣にいる」
坂「……ですね」
黒「…………」
坂「黒田さん?」
黒「いえ。もう、友達ということでいいです」
坂「諦めたんですか!?」
黒「ええ」
俺はカメラの向こうで笑う五人を見つめた。
恋人ではない。
本人たちは、何度聞いてもそう言う。
けれど、佐野勇斗が吉田仁人を見つめる目はやたらと優しくて。
吉田仁人は、佐野勇斗にだけ少し甘い。
そのくせ、本人たちは絶対に認めない。
そして周囲の三人は、そんな二人を面白がっている。
……なるほど。
これは、密着取材というより。
**「恋人じゃないと言い張る二人を、取材班が一日かけて観察する番組」**なのかもしれない。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「次回の企画書、もう一つ書きましょう」
坂「何ですか?」
黒「『吉田仁人は佐野勇斗をどこまで甘やかすのか』」
坂「絶対面白いじゃないですか!!」
仁「おい!! そこ!! 聞こえてるからな!!」
勇「え、次も来てくれるの!? やったー!!」
仁「喜ぶな!!」
太「いや、勇斗は絶対喜ぶと思ったわ!」
舜「仁ちゃんも何だかんだ許すんだよなー!」
柔「……明日も平和だね」
五人の笑い声が、部屋いっぱいに響いた。
そして俺たち取材班は、心に決めた。
次があれば必ず。
この二人に「本当に恋人じゃないんですよね?」と、最低百回は聞いてやろう。
夜の部へと続く