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「ふぅ……夜の見回りもこれで終わりか」
鋼谷直樹は錆の都の闇夜を見上げ、息をついた。昨夜の骸教団との一戦を経て少々疲れが残っていたが、任務は日々変わることなく続く。この街では、幽霊も教団も容赦なく命を狙ってくる。少しの気の緩みも命取りになる場所だった。
「しっかし、しつこい奴らだったな……」
直樹が呟いたその瞬間――。
「まさか自分が狙われるのを忘れていたわけじゃないだろう?」
突然、背後から冷たい声が響き、次の瞬間には鋭い痛みが腹部に走った。
「……ッ!」
直樹は反射的に後方へ飛び退くが、すでに鋭利な刃物が彼の腹に突き刺さっていた。刺客は影のようにひっそりと直樹の背後に忍び寄り、まるで彼が気づく間も与えず一撃を入れてきたのだ。
「……また、骸教団か」
傷口からじわりと血が滲み出し、服を染める。直樹は手で抑えながら、苦悶の表情を浮かべた。しかし、目は刺客をしっかりと見据えている。
「ほう、さすがは噂のゴーストバスター。いきなり刺されたってのに、まだ立っていられるとはな」
現れた男は、骸教団の特徴的な黒いフードに身を包んでいたが、ただの信者ではなさそうだった。その鋭い目つきと、手にした霊具から溢れ出す不気味な気配が尋常ではない。
「お前ら、まさか俺のスケジュールまで把握してんのか? 悪趣味だぜ」
直樹は苦笑しながら、鉄鎖を手に取った。傷の痛みで動きは鈍っているが、この街での戦いにおいては痛みなど日常茶飯事だ。ましてや、ゴーストバスターを名乗る以上、この程度で引き下がるわけにはいかない。
「俺の名前は刹那。骸教団でも、貴様のような害虫を駆除する専門だ」
刹那は一歩前に出ると、まるで影と一体化するかのように姿が揺らめいた。その刹那――鋼谷はすぐさま鉄鎖を振りかざし、攻撃の構えを取る。
「貴様の鉄鎖とやら、見せてみろ!」
刹那が手にした霊具は、細い短剣のような形状だったが、暗闇の中でまるで蛇のようにうねりながら、音もなく迫ってくる。直樹はその動きに目を凝らし、瞬時に鉄鎖を叩きつけて弾き返した。
「ふん、鋭い動きだが、俺の鉄鎖はそう簡単に打ち破れるもんじゃない!」
鋼谷は鉄鎖をさらに素早く操り、空中で刹那の霊具を絡め取りにかかる。だが、刹那は笑みを浮かべ、さらに素早い動きで鉄鎖の拘束をかいくぐるように舞った。
「見事だな、ゴーストバスターよ。しかし、俺を甘く見てもらっては困る」
刹那は手にした短剣を突き出し、それに込められた霊力を爆発させるかのように、直樹の鉄鎖に向かって放った。短剣から放たれた霊気が鉄鎖に絡みつき、まるで毒のように鈍い紫色の光が広がっていく。
「なっ……!」
直樹は驚きの声を上げながら、鉄鎖を素早く引き戻そうとするが、刹那の霊力が鉄鎖に絡みつき、動きが封じられていく。
「お前の武器など、俺の力の前では無力だ。骸教団に逆らう者の末路がどうなるか、身をもって知るがいい」
刹那が勝利の笑みを浮かべたその時、直樹は冷静に息を整えた。
「……悪いが、俺はゴーストバスターの端くれだ。この程度で終わるわけにはいかないんでね」
直樹は体内から絞り出すように霊力を注ぎ込み、鉄鎖に込められた異能の力をさらに高めた。鈍い紫の光がかき消され、鉄鎖は再び彼の意思に応えて動き出す。
「なに……!」
刹那が驚愕の表情を見せたその瞬間、直樹は鉄鎖を一気に操り、刹那の体を一閃で巻き上げた。鉄鎖が刹那を縛り上げ、彼の霊具を叩き落とす。
「これで終わりだ、骸教団の刺客!」
直樹が最後の力を振り絞り、鉄鎖に全力を込めたその瞬間、刹那の体が拘束され、完全に動きを封じられた。鋼谷は冷たい目で刹那を見下ろしながら、口元にかすかな微笑を浮かべた。
「骸教団の連中も、たいしたことはないな」
「ぐ……貴様……次は必ず、貴様の命を……!」
刹那は苦しそうに呪いの言葉を吐くが、そのまま霊気が消えていき、体が霧散していく。骸教団の刺客の一人が、直樹の手によって再び消されていったのだ。
夜が明け、朝日が錆の都を照らし始めた頃、鋼谷直樹は再び息をつき、空を見上げた。
「骸教団……こんな奴らがまだまだ潜んでるってのか。油断できねぇな……」
直樹は腹部の傷を押さえながら、再び歩き出す。錆の都にはまだ数多くの影が潜んでおり、彼の戦いは決して終わらない。
戦いの日々は、まだまだ続くのだった。