なんだかあの日以来カルトの様子がおかしい。
思い詰めた顔をするようになったり、少し避けられたりしている。
おれが何かしてしまったのだろうか。
そう思って聞いてみても、「なんでもねェよ」と言って笑われるだけなのだ。
何度問いただしても答えてくれない。
そんなに信用がないのか、おれは。
まだ完全に心を許してもらえてないのか。
その事実がひどく辛く悲しくおれの胸に突き刺さる。
「カルト……」
今日もカルトはどこかへ行ってしまった。
最近はずっとそうだ。
おれが話しかけようとすればふらりと何処かへ消えてしまう。
まるでおれを避けているかのように。
「……なあ、おれのこと、嫌いになったのか?」
「……そんな事はない」
「じゃあなんで避けるんだよ」
「…………」
黙ったままのカルトに苛立ってつい声を荒げてしまう。
「なぁ、何か言ってくれよ」
「……言えない」
「なんでだよ!」
「言ったらエースを傷つけることになるからだ」
「はァ?!」
「頼むからわかってくれ。傷つけたくないんだ」
そう言うとカルトはまたふらっと何処かに消えた。
ここまで来たならおれはもう果てるまで傷ついたっていいのに。
昔からそうだった。
おれのクソ親父は海賊王で、母さんはおれを命懸けで産んで死んでいった。
せめてクソ親父が海賊王でなければきっとこうはならなかったのに。
おれは“鬼の子”だ。
人の世に馴染めない、無価値な怪物。
そんなおれでも受け入れてくれたからカルトを心の底から、愛していたのに。
その時自分の気持ちに気づいた。
そうだ、おれはカルトを愛している。
家族への愛とは違う、ただ一人の男としておれだけを見つめて欲しいと思ってしまう愛だ。
もっと話したい。もっと見つめていたい。
もっと触れ合いたい。もっと愛されたい。
そして叶うなら、あの日のような添い寝なんかじゃなくて愛されてることを実感しながら快楽に溺れたい。
おれの心の中の鬼も纏めて全部愛してほしい。
おれはそんな、貪欲で強欲な怪物だ。
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