「よし。面倒だから全種類買おう」
国王が大人買いを選択した。
「カイザー様。怒られないですか?」
俺は一緒に怒られたくないぞ!
「大丈夫だ!王妃は王妃で何やら買おうとしているからな!余はここで試飲しているからアメリアを頼むぞ」
「はぁ。家族サービスに私を使わないでください…」
俺は国王に小言を残し、アメリアの元に行く。
「何かお気に召すものが有りましたでしょうか?」
「セイ様!どれも素晴らしいもので目移りしてしまいます。何か私にオススメのモノはありますか?」
オススメか…ミラン達なら簡単なんだけどな……
いや、何故そこで差が出る?年が変わらないなら一緒でも大丈夫なんじゃないか?
「こちらのおやつコーナーは如何でしょうか?特にこちらのクッキー等は王女殿下が開かれるお茶会のお茶請けに出されても恥ずかしくないものになっています」
賞味期限の長いものをラッピングしている。こちらも手間賃がかなり上乗せされている。
俺にはクッキー3枚に1000円も出せん。
「可愛らしい包装ですね!ではこちらをいただきます。あと色鉛筆(?)なる物を全色いただきます」
よし。お茶会でうちの宣伝を頼んだぞ!
王妃はほっといても勝手に広めてくれそうだし、国王も部下や知り合いに酒を自慢して広めてくれることだろう。
特に酒は利益率が高いから頼むぞ!
俺がそんな事を考えていると聖奈さんから呼び出しを受けた。
「どうした?」
「アメリアちゃんに何かあげたの?」
ちゃんって…あっちは王族だぞ……
「いや…なにも。買い物に来たんだ。あげるのは変だろ?」
「セイくんはホントにハーレムを目指してるの?そんなんじゃダメだよ!」
俺は何故怒られているんだ…?
だいたいアメリアは13歳で俺のストライクゾーンから大きく外れたクソボールだぞ?むしろ手を出したら死球だ!
空振りを取られた上に痛い思いをなぜ態々しなきゃならん!!
「兎に角!これを帰り際に渡しておいてね!絶対だよ!」
「わかった」
本当にわかった。アンタのタイプなんだな。本当のお姫様でお人形さんみたいでお淑やかだし。
ウチの聖奈さんはテンプレお姫様がお気に入りのようだ。
そして、買い物を済ませた王族が満足な顔を並べて退店する間際。
「アメリア様。こちらをどうぞお受け取りください」
「まぁ!これを私に?綺麗ですね。大切にしますわ」
アメリアに渡したのはスノードームだ。何故こんな物を聖奈さんが持っていたのかは謎だが…それは謎のままにしておいた方が身の為だな。
「こちらは雪をイメージした置物になります。北の国ではこのように空を雪が白く染めています。国から離れられないアメリア様にその景色を見て頂くために贈らせていただきました」
よし!セリフも台本通り言えたぞ!
聖奈さんも満足そうに頷いている。知っているぞ。カメラを動画モードにしてカウンターに置いているのは!
アメリアは感極まり泣きそうにさえなっている。聖奈さんの汚さを知らない綺麗な涙だ。
「では、また来るのだぞ?」
「はい。お邪魔いたします」
「このシャンプーなどは切らさないようにしてください」
「御意」
「いつでも・・・いつまでもお待ちしていますっ!」
「はい」
なんだろう。必要とされているのはわかるけど、みんな自分のことばかりだな……
王族を見送った後は通常業務に戻った。
遠巻きに見ていた人達から噂を呼び、うちが本当に王族御用達だと話が広まった。
その後は飛ぶように商品が売れた。
「お疲れ様!予想をまた超えたよ!」
今日の報告会(ただの食後)で聖奈さんがみんなに伝えた。
「セイくん。在庫が心配だから今日取りに行ってもらってもいいかな?」
「かまわんよ」
「ついでに伝言も頼みたいから後で紙に書いて渡すね」
俺はおつかいを頼まれた。
聖奈さんから渡された指示書を持って地球へと戻り、雑用を熟してこちらへと商品を運んだ。
さらに3日ほどそんなことをしていると次の段階へ進むことに。
「と、いう事で次はエンガード王国の王都でお店を開くよ!」
「凄い勢いだな」
「だって、どうせ偉い人や悪い人、もしくは転移転生者から目をつけられるなら、手広くした方がお得でしょ?」
そうだな。いざとなればどちらかの国に逃げてもいいし、新天地を求めてもいい。
それに逃げなくてもいいように修行もしたしな。
しかし、俺の想像より強い人なんて、この世界には五万といるのだろう。
冒険者だけでも、未だにBランクの人達と対等に渡り合えるとは思えないし、さらには騎士や在野に埋もれている強者も沢山いるだろう。
その辺りはまだまだ上を目指さなくてはならない。
「まぁ、異論はない。それで?どうしたらいいんだ?」
「セイくんは転移要員としても付いてきて欲しいの。ミランちゃん達はこっちのお店をよろしくね。護衛はリリーさんかお爺ちゃんに頼むんだよ」
「わかりました」
「おやつは…」
「1000ギルまでならいいよ」
エリーはおやつの時間にお店のおやつをお小遣いで買うのにハマっている。俺がこっそり二人に大銀貨を渡したのが聖奈さんにバレてこっぴどく怒られたことがあった。
確かにおやつに一万円はやり過ぎだと思う。
紙幣じゃないと金銭感覚がわかんなくなるんだよな。
東雲学園の園児達と離れるのは寂しいが、これも将来のハーレムのためだ。
楽して楽しく酒が飲めたら良かったのに、随分変わってしまったな。
「ここは久しぶりだけど変わっていないな」
俺の視線の先には万里の長城…もとい、エンガード王国の王都サクシードがあった。
「相変わらずの行列だね。水都も行列があったけどここまでじゃないもんね」
「そうだな。あそこは水堀に守られている上に、入り口が沢山あって分散されているからな。ここはホントに壁の圧が…」
久しぶりの王都に久しぶりの行列だ。
何とか王都に入れた俺達は商人組合を目指した。
「何だかこうして街中を二人で歩いていると、初めて異世界に来た時みたいだね」
「そうだな。あの時は聖奈がフラフラしていて大変だったよ」
「仕方ないでしょ?私にとっての夢の国だったんだもん!でも、今もその時の気持ちと同じだよ」
いや、そんなキラキラした笑顔を向けられても……
惚れてまうやろー!!
いや、俺まで昔に戻らなくてもいいな。俺はすでに長濱聖奈という人物を知って…知りすぎてしまっている。
商人組合に入ると、聖奈さん主導で話を進めた。
聖奈さんは水都では奴隷扱いの身分だったので、俺のランク4のカードを見せた。
カードの効力は絶大で、スルスルと話は進んだ。
流石にどこぞの王族と知己を得ている俺達を騙す事も無碍に扱う事もなく、好条件の物件を紹介された。
こちらの条件にも合うところだ。
物件は住宅街から近く、メイン通りとは離れている。
これは変な奴(一見の)がなるべく来ないようにするためでもある。
テナント自体は水都の倍はある大きなところを買った。こちらには家がないから転移のポイントにするためだ。後、家のない従業員の寮も兼ねている。
建物のサイズは水都の店と余り変わらないが、地下室の倉庫に地上三階建てだ。
この後、聖奈さんは孤児院などで従業員を集めて、俺には改装作業が待っている。
また大工レベルがあがるぜ……
剣より金槌を持つ方が多い冒険者っているのか?
あれ?剣を持って戦った事あったかな?…ないな。
やめよう。悲しくなるから。
「じゃあここからは別行動だけど気をつけてね!」
「ああ。それはこちらのセリフだけど、わかった」
「ううん。セイくんが気をつけるのは綺麗なお姉さんにだよ」
うっせーわ!俺にはそんな出会いがねーんだよっ!
今なら50万ギルで壺を買うかもしれないな。
俺は向こうの店と同じように、先ずは壁を取り払っていった。もちろん柱は残している。別に建築士でも何でもないから取っていい柱なんてわからんしな。
そんなことを3日ほど続けて内装を終えたら、バーンさんの所に注文した家具や棚を取りに行った。
「お疲れ様です。出来ていますか?」
工房に着いた俺は声をかけた。
「出来ているぞ。なんだ。ミランは今日もいないのか」
悪かったな、俺一人で。お宅の娘さんは別の街で汗を流しているぜ!へっへっへっ
「こっちにも店を作らないのか?」
「今はまだ作る予定はないですね。もし、何かに巻き込まれた時に、逃げる街の予定地がここなんで、ここでトラブルに巻き込まれるのは避けたいんです」
俺も聖奈さんに初めて聞いた時には『なるほど』と思ったものだ。
てっきりこの街に2号店を建てるものだと思っていたからな。
「そうか。ミランの身を第一に頼むな」
「わかっています。冒険者なので冒険では完全な安全は約束できませんが、それ以外の事でミランに危険は寄せませんよ」
親バカ対親バカだ。この勝負引き分けだな。
「冒険でも頼むな」
いや、それは約束できん。この世界にはまだまだ未知の敵がいるからな。それは俺より聖奈さんに言ってくれ。
注文の品を受け取った俺は、王都に戻り作業を進めた。
2階は在庫置き場兼従業員の寮だ。三階は転移室とキッチン、トイレ、風呂。そして残りは在庫置き場。水回りは排水だけ作って、後は魔導王国産の魔導具だ。
寮には家具を並べて、寝具は地球産だ。
寮のベッドは2段ベッドで、一部屋に二つ置いてある。それが二部屋あり男女で分ける予定だ。
聖奈さんはというと……
「集まったよ。後、責任者も見つけられたしね!」
孤児院はあるから孤児は集められたとしても…責任者とな?
「それは朗報だな。聖奈を悩ましていたモノが解決出来たな」
「うん!口が固くて身元もしっかりしているから良かったよ!」
そんな人がいたとは…誰だ?知り合いにはそんな都合のいい人はいないはずだけど……
なぜかその場では教えて貰えなかった。『私から言うのもね』なんて意味深な言葉だけが残された。
水都の屋敷に戻った俺達は晩御飯を終えて話し合いを始めた。
「じゃあ、もう王都に呼んでもいいですね」
エリーがそんなことを言うが…だから誰なんだよ。
「うん!でも良かったよ。手紙の返事が来て」
「話がわからん。誰なんだ?」
また俺だけ蚊帳の外かよ。それは別にいいけど、そろそろ教えてくれ。
「私の両親です。親子共々よろしくお願いするですっ!」
「エリーの親?まだ会ったこともないけど…手紙って、いつ出したんだ?」
「エリーちゃんの研究が発表された時に、一人前の魔導士になったご報告と共に私が頼んでいたの。
村の生活が気に入っているなら別だけど、もし都会で働いてくださるならお願いできませんかってね!」
ん?エリーの親は村が嫌なのか?
「エリーちゃんが魔導士になったから、多分村の人からは陰で嫉妬されているんだと思うよ。
人って怖いね」
アンタがいうな。俺は聖奈さんが一番怖いよ?色んな意味で。
「はじめは私が魔導士の学校に行くことになって、両親も鼻が高かったのだと思います。ですが、村には娯楽もなければ刺激もありませんから。
会う人会う人、私のことばかり聞かれて参っていたのだと思います。元々両親は謙虚なタイプなので自慢話を避けていくうちに村の人達と距離が出来たのかと。
私も今回の両親からの手紙で初めてそれを知って、セイさん達に益々感謝しています」
大人しくはないけど、普段はあまり長々と話さないエリーがここまで話すとは。
「わかった。どちらにしても俺達にはありがたい。エリーの両親もミランの家族にも助けられているな」
「ホントだよね。出会いに感謝してもしきれないね」
俺達は出会いに感謝していたが、二人からは、こんなことではまだまだ恩は返せていないと言われてしまった。
まぁ感謝しあえるのなら、いい仲間だよな。
翌朝。
「じゃあ、聖奈を王都に送ったら、俺とエリーは旅に出るから、ミランは店をよろしくな」
「はい。任せて下さい!」
ミランになら安心して任せられる。護衛はBランク冒険者が二人もいるしな。
俺は聖奈さんを王都に送った後、エリーを連れて旅に出た。
まず水都の外までは転移で移動した。
「ここなら人がいないな」
「はい。待ってます」
エリーを置いて俺は屋敷へと転移した。そしてあるモノを持って、戻ってくる。
ふふふっ。秘密兵器のお披露目だぜっ!
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
エリー「今日はどれにしようかな…」
ミラン「エリーさん。これとこれを買いませんか?」
エリー「でもそれだと1,000ギルを超えちゃう…」
ミラン「2人で買って分ければ大丈夫です」
エリー「あっ!ミラン天才!これとこれを買います!」
ミラン(エリーさんはおやつに夢中…どうせ気付かないのでお釣りは私が頂いて更に買い足すのです)「ふふふ」
シリー「ミランさんから黒いオーラが…」
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