六つ目の鍵を手にした七人は、重い沈黙の中、図書室へと足を踏み入れた。
広い室内は本棚が迷路のように並び、月明かりに照らされた背表紙がずらりと並んでいる。
埃の匂いと、紙が湿ったようなにおいが漂っていた。
「ここ……なんか、嫌な感じする」
里奈が菜乃花の袖をぎゅっと掴む。
本棚の奥に、一冊だけ異様に光を放つ古びた本が置かれていた。
革張りの表紙には金色の文字で「最後の扉」と書かれている。
「……これがヒント?」
香里がそっと手を伸ばし、その本を開く。
ページには、不気味なイラストと文章が並んでいた。
七人の人影が描かれ、最後に一人だけ消えていく。
その下には、こう記されていた。
『最後の扉は、六つの鍵と“犠牲”で開かれる。』
「犠牲……?」
穂乃果が声を震わせる。
「やっぱり……七人じゃ出られないんだ」
理沙が苦い顔をした。
「う、うそでしょ……? じゃあ、誰かが……」
里奈は頭を振り、涙をにじませる。
その時――
放送がまた鳴った。
――ジジジッ。
『……よくここまで辿り着いた。だが出口は一つ、通れるのは“六人”だけ。選ばれなかった者は、この学校に残れ。それが、このゲームの“真実”。』
「そんな……ふざけないで!」
穂乃果が怒鳴ったが、返事はノイズだけだった。
沈黙が落ちる。
誰もが、互いの顔を見られない。
やがて瑞希が口を開いた。
「……誰かを犠牲にするなんて、絶対に嫌だ。でも……真綾のこと、さっきから狙われすぎじゃない?」
「なっ……!」
真綾は目を見開く。
「わ、わたしは……みんなと帰りたいのに……!」
「落ち着いて」
菜乃花が真綾を庇うように前に出た。
「誰か一人を疑ったら、私たちは本当に壊れるよ」
だが、理沙は冷静に突きつける。
「でも、事実は変わらない。七人じゃ出られない。誰かが残るか……それとも、何か別の方法を探すか」
本棚の影が揺れる。
気配を感じて振り向いた瞬間、黒い影が走り抜けた。
「い、今の見た!?」
穂乃果が青ざめる。
本棚の隙間に並んでいた無数の本が、一斉に床へ崩れ落ちた。
その中から、一冊だけ鍵付きの古書が現れる。
表紙には数字の「7」。
「……最後の鍵」
香里が呟いた。
これで全ての鍵は揃った。
だが彼女たちは知ってしまった。
最後の扉を開けるためには、七人のうち一人を犠牲にしなければならない――。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!