美空「どの街でも、日中に事件が起こることはありません。吸血鬼が日光を避けるためと思われます」
パソコンの表をスクリーンに写して、1年の田口美空(たぐちみそら)は説明をした。
穂波「今までに吸血鬼の殺人事件が起こった街に、私たちが見回りに行った方がいいですかね」
穂波が全員を見回す。
颯「それが1番いいんじゃねぇか。そのやり方なら少しでも被害者を減らせるかもしれねぇ」
圭一「そうだな。早い方がいい。今夜から見回りを始めよう」
今までに吸血鬼による事件が起きた街は、研究所のある街と隣の街の2つのみだった。
12人で細かく担当地域を分け、日が落ちると同時に、彼らはその地域へと出発した。
☆・★・☆・★
午後10時半。
由依「眠ーい・・・」
由依が大きくあくびをする。
将斗「お前昼飯食べた後寝てただろ・・・」
もう1つあくびをする由依を、将斗がたしなめた。
研究所に入る前、由依は9時までには寝ていた、と言っていた。
それが本当なら仕方ないことだろう、と将斗は思い直した。
まあ、その話題は今はどうでも良いが…
由依「そもそも、現れるなら昼間にして欲しいんだけど・・・なんで日光なんかに負けてんのよ」
今度はぶつぶつと文句を言いながら、何かを手で弄んでいる。
暗くてよく見えないが、将斗にはそれが何かわかっていた。
「拳銃」である。
将斗「あまりそれ触るなよ。間違えて撃ったらどうするんだ」
由依「失礼ねー!もうそんなことはしないって!」
由依の武器は「拳銃」だった。
研究所に入る者は皆武器の使い手であり、その腕は大人にも対抗できる程だ(かと言って大人と戦った者は将斗しかいないが)。
研究所に入った時、まだ由依は拳銃を使い慣れていなく、拳銃を触っていたら間違えて撃ってしまったこともある。
幸い弾丸は由依の机に埋まっただけで、怪我人は出なかった。
由依「あの時は誰も怪我させてないし・・・」
と、由依が急に黙りこくった。
それを見て、将斗は由依の視線の先を追う。
そこに人影があった。
一気に緊張感が走る。
将斗が意を決してその人影に近づいた。
由依「ま、将斗・・・」
将斗は緊張した顔をしていたが、だんだんと落ち着きのある顔を取り戻していった。
将斗「普通の男だった。心配いらない・・・多分」
由依「えっ、多分!?」
将斗「・・・・・・・・・」
男は2人の前を通り過ぎていくーはずだった。
急に立ち止まり、2人を見たのだった。
将斗「!!」
その目を見て人間じゃなかった、と気づいた瞬間、
男が将斗に飛びかかった。
後ろに飛んで避け、竹刀を取り出す。
将斗「由依!!」
由依「わかってる!」
由依が男のー吸血鬼の背中に向けて拳銃を撃った。
「銀の弾丸」が吸血鬼の背中に当たった。
「グァ・・・・・・ッ!!」
吸血鬼が呻き声を上げて膝をつく。
将斗がそれを見計らい、竹刀でその首を斬った。
首と胴体が離れ、吸血鬼はゆっくりと消えていった。
由依「はー、終わるの早い」
由依がさもつまらなさそうに呟く。
由依「相変わらず凄いじゃん、ただの竹刀なのに」
将斗「「ただの竹刀」とか言うな」
将斗の家に代々伝わるこの竹刀は、炎の神が宿っているとされている。
初めてこれで吸血鬼と対峙した時、竹刀から炎が出て吸血鬼の首が斬れた。
実際に目で見て、炎の神が宿っているのだと信じざるを得なくなった。
将斗「まだ油断するなよ」
由依「わかってるって言ってるじゃない!」
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