テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
読み終わった〜。ああ、これいいな。みんな同じ夢を見てるのに、バラバラな場所で潔と会ってて、しかも潔だけが全員のことを知ってるっていう非対称感がじわじわくる。で、最後の「おかえり」と「見つけないで」の温度差で背筋が冷えた。まるで潔が彼らを守ろうとしてるみたいで、でもなぜか悪意も混ざってる気がして…続きマジで気になるわ🔥
57
782
nem*・゜゚・
881
青い夢
第2話「それぞれの夢」
昼休み。
昨日までなら、いつも通りだったはずの教室。
けれど今日は――誰もが、昨日までとは違うものを見ていた。
「……なぁ」
最初に口を開いたのは、凛だった。
教室の中央にいる全員を見回す。
「お前ら、昨日の夢……どこまで覚えてる?」
その言葉に、教室の空気が変わった。
「もちろん覚えてるよ」
蜂楽が笑う。
「だって、あんな夢忘れるわけないじゃん」
「……同じ場所だった」
玲王が続ける。
「青い空。青い地面。森の中の学校」
「でも、俺たちが見た夢は……同じじゃなかった」
千切が静かに言った。
「俺は、森の中で潔と会った」
「俺は学校の廊下」
凪が言う。
「……俺は、教室だった」
玲王も続ける。
「俺は木の下」
雪宮が本を閉じた。
「俺は……校舎の階段だった」
氷織が続ける。
「俺は校庭やな」
烏が腕を組む。
「俺は森の奥」
乙夜が笑う。
「俺は屋上だったぜ」
士道が楽しそうに言った。
「……俺は、校舎の入口だった」
冴が淡々と話す。
最後に、凛が口を開いた。
「俺は……」
一瞬、言葉が止まる。
「潔と、二人で歩いてた」
「…………」
全員が黙った。
「え、なにそれ」
蜂楽が少しだけ笑う。
「みんな潔と会ってるんだね」
「……ああ」
凛は窓の外を見る。
「でも、おかしい」
「何が?」
「夢の中の潔は――」
凛が眉を寄せた。
「俺のことを、知ってた」
その一言に。
何人かが顔を上げた。
「……俺も」
凪が呟く。
「潔、俺の名前呼んだ」
「俺もだ」
玲王が言う。
「初対面のはずなのに……まるでずっと前から知ってるみたいだった」
「俺も」
千切が続ける。
「普通に話してた」
「俺なんか――」
蜂楽が笑う。
「潔に『また来たの?』って言われた」
「…………」
全員が固まった。
「……また?」
雪宮が聞き返す。
「うん」
蜂楽は首を傾げた。
「俺、初めて見た夢なのに」
その言葉に。
教室の空気が、さらに重くなる。
――初めてのはずなのに。
――知らないはずなのに。
――どうして潔は、みんなを知っている?
「なぁ」
乙夜が口を開いた。
「潔ってさ」
全員が見る。
「俺たちのこと、全員知ってたよな?」
「……そうやな」
烏が答える。
「名前も」
「性格も」
玲王が続ける。
「俺の好きなものまで知ってた」
「俺のことも」
凪が言う。
「眠いって言ったら、『じゃあ寝れば?』って」
「…………」
凪は少しだけ笑った。
「なんか……すごく普通だった」
その表情を見て。
玲王が少しだけ複雑そうな顔をした。
「……俺も、潔と話してる時だけは」
玲王は呟く。
「夢って感じがしなかった」
誰も反論しなかった。
なぜなら――
全員が同じことを思っていたから。
***
そして。
蜂楽がふと、窓の外を見る。
「ねぇ」
「?」
「今日さ」
青い空を見上げながら、蜂楽が言った。
「もう一回、あの夢に行けるかな」
誰も答えなかった。
けれど。
その日の夜。
それぞれが眠りについた。
――そして。
青い世界が、また現れた。
空は青い。
地面も青い。
木々の隙間から、淡い光が差し込んでいる。
森の奥には、あの学校。
そして――
「……潔?」
誰かが呼ぶ。
すると。
森の向こうから、一人の少年が歩いてくる。
黒い髪。
穏やかな瞳。
どこか懐かしい笑顔。
「……やっぱり来た」
潔はそう言って笑った。
まるで。
彼らがここへ来ることを――
最初から知っていたかのように。
「おかえり」
その言葉を聞いた瞬間。
全員が、同じことを思った。
――ここは夢だ。
――なのに。
どうして。
「……おかえり」なんだ?
潔は笑っている。
何も知らないように。
何も疑問に思っていないように。
ただ、そこにいる。
そして――
その瞬間。
一人の視界だけが、ふっと暗くなった。
***
翌朝。
「…………」
目を覚ました凛は、天井を見つめていた。
夢は覚えている。
青い森。
青い学校。
潔。
全部。
けれど――
「……昨日と、違う」
凛はゆっくり起き上がる。
昨日まで、夢の中で潔は普通に笑っていた。
でも今夜。
一瞬だけ。
潔の後ろに――
もう一人、誰かが立っていた。
顔は見えなかった。
ただ。
青い世界の中で、その人物だけが――
異様に黒かった。
そして。
凛は思い出す。
夢の中で、潔が最後に言った言葉を。
『――見つけないで』
「…………は?」
凛の背筋が、冷たくなった。
その日の朝。
教室に集まった全員が――
同じ悪夢を見ていたことを知ることになる。