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ブクマ失礼します
腐向けHQ
及影
キス
糖度高め
夜のいろいろは、直接的な描写はありませんが手前まであります
※本作品とお名前をお借りしている作品との関係は一切ございません。
及川side
「おいかぁさ、」
帰ってくるなりトボトボとこちらに向かってきて、急に、ぽす、と俺の首に顔を埋めるトビオ。
「…なに」
彼らしくない小さくて弱々しい震えた声に、いつも通り冷たく当たった。
…なにかあったのだろうか。
嫌なこと、悲しいこと、つらいこと…?
頭の中ではぐるぐると心配の声が巡るくせに、態度にも表情にもだせないのはなんでだろう。
「おれ、って、いきてて、い、いんですか、」
古びてパラパラと剥がれ落ちる塗装のように、ぽつぽつと声は彼の口から発されていく。
頭はトビオらしくない言葉のせいで、はてな状態だ。
「知らないよ…お前が生きてていいかどうかなんて」
そう、俺は知らない。
お前が生きていていいかなんて。
「そ、すか」
背中に回された手の力が強くなった。
「うん、世界にはお前のこと嫌いな人でも、動物でも、神様でも、なんでも数えきれないぐらいいると思う」
そんなの俺にだって誰にだっているし、と付け足す。それは事実だから。
俺だって散々否定されてきた。
俺は、いつだって天才には勝てない。だって、恋人にも素直になれないどうしようもないやつだから。
トビオに何があったかは知らないけど、相当傷ついたのかな、なんて考える。
肩が、じわりと暖かくなった。
「…でもさ、他人も神様もなにも味方してくれなくなっても、俺がいるじゃん」
「……っす、」
あ、また肩にじわっときた。
バレー馬鹿のトビオでも悩んだりするんだな、なんか成長したな、なんて思いながら彼の黒い頭に手をやる。
なんて指通りがいいんだこの髪の毛は。
「てか、こんなにぼろぼろになるまで我慢してたとか、及川さん怒るんだけど」
「いっそのこと、おこってください、」
そう言いながら、首から左肩までに頭をぐりぐりと押し付けてきた。
「ちょ、痛い!痛いよトビオちゃんっ!」
「……」
反論することなく無言で頭を擦りつけられる。
すごく痛いんですが、、
「…トビオちゃ、て呼ぶ、の、っやです」
背中に回された手の力が強くなった。
「…しょーがないな、これだからわがままなトビオは」
「さーせん、」
シミついちゃうじゃーん、とは言わず、静かに抱きしめた。
横に倒れこむ。
「ほら、及川さんのイケメンなお顔だよ~」
そう言いながら、トビオの頭を両手で掴んでこちらに向けた。
目をぎゅっと瞑って唇を尖らせていたので、ちょっと乱暴だったかなと思いながらも唇を重ねた。
「ぅん、ふ…っぁ、おぃかあさ、」
唇を離すと、目が潤んで顔を赤くしたトビオの顔があった。
あ、やべ、及川さんのオイカワサンが。
「なに泣いてんの、ぶっさいくだよ」
誤魔化すために顔をしかめてみる。
「…おいかわさんすき」
トビオはめげないらしい。
「日本語分かってる?」
「もちろん」
きょとん、として首を傾げた後、いつもは上がらない口角が少し上がった気がした。
「えへ、我慢しなくていいんですよ、?」
トビオがもぞもぞと動き出したと思ったら、トビオの足が俺の俺にぐりぐりと押し付けられた。
んぐ、と声を抑えながら、明日何か予定会ったかな、などと考える。
「…っ、もう知らないから!」
「俺、明日予定ないんで、」
にやっと笑ったその顔は、いつもより大人っぽく見えて、色気があって、なんだか悔しくなった。
「ったくもう…」
嫌って言ってもやめないから、と言いながら、トビオを押し倒した。
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