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「そ、それは…仕方なく……」
あまりの至近距離にドギマギしながら
昔と変わらない彼の温もりに安心したせいか、私の口からぽろっと本音が溢れ出てしまった。
「佐藤くん、昔お酒ですごく嫌な思い出があったみたいで…トラウマだって、すごく怯えてたから。先輩として、私が守ってあげなきゃって思って……!」
「……だと思ったよ」
「え?」
叶人くんの腕の力が、ほんの少しだけ強くなった気がした。
「さっちゃんは昔から、困っている人を放っておけない性格だったもんね。いつも誰かの前に立ちはだかってさ」
「えへへ……そうだよ。なんてったって、あの泣き虫で頼りなかった叶人くんを、ずっと守り続けてたのはこの私なんだからね!」
「もう。俺の昔の黒歴史はいいじゃん」
「ふふっ、懐かしくて、つい」
「とりあえず」と、叶人くんは私の頭をそっと大きな手のひらで撫でた。
「さっき、さっちゃんが気にしてた終電だけど、もうとっくに無いから。俺が家まで送っていくよ」
髪を優しく梳いていく彼の指先が心地よくて、胸の奥がキュッと締め付けられる。
「えっ、いいの!?っていうか、送っていくって……タクシー?」
「俺の車だよ。お金もかからないし、いいでしょ?」
「え、わざわざ申し訳ないよ……」
「遠慮しないで。女の子をこんな時間に1人でタクシーに乗せて帰らせる方が、よっぽど危なくて心配だから」
叶人くんは一度言葉を区切ると
私を覗き込み、形の良い唇を妖艶に歪めて微笑んだ。
「それに…もう少し2人だけで話したいっていう、俺の口実だからさ」
「──っ!?」
あまりにもストレートな言葉に、心臓が爆発しそうなほどの衝撃を受ける。
(もしかして…叶人くんも、私のこと……)
一瞬、夢のような可能性が頭をよぎり、全身の血流が一気に速くなる。
(いやいや!違う、ただの幼馴染としての情だよね…きっと!)
必死に自分に言い聞かせ、期待しそうになる心を無理やり抑え込む。
「……じゃあ、お言葉に甘えて。おねがいします」
「よかった。それじゃあ行こうか」
彼に支えられるようにして店を出ると
外の夜風は驚くほど冷たく、私の火照った肌を容赦なく叩いた。
寒さに身震いした瞬間
叶人くんの手が自然と私の腰に添えられ、彼の方へと引き寄せられる。
ほとんど密着した状態で歩くその手つきには、躊躇いが一切なかった。
「ぁ、ありがとう……」
「いいよ。俺がしたくてしてることだから」
その低い声に再び胸がキュンとした瞬間
目の前に、彼のリモコンキーに反応してライトを明滅させた車が現れた。
黒光りする、流線型の洗練された高級スポーツカー。
促されるままに助手席へ乗り込むと、本革のシートの上質な香りが鼻腔をくすぐる。
#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
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