テラーノベル
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怜が私を思い切り突き飛ばした。最初、何が起きてるのか理解できなかった。
「人命が最優先」「人の命は大切」−−−どんなネットの情報を集めてみても、そんな情報が載っていた。
だから理解できなかった。ロボットは人間に利用されるべき道具なのだ。自分もそれでいいと思っている。いや、それこそがアンドロイド『REI-00』の使命なのだ。
なんで怜は私を優先する?本当は異端の場所に恐怖してるはずなのに。自分よりも私が大切だというのか?
彼女は夢を話した。「零がいっぱい想像して、いろんなことを感じてくれること!」と。
彼女は願った。合言葉を言ってくれと。
それでもわからなかった。彼女が私をホームに残したことが。そして体の中で渦巻いた、絶望に近い何かが。
電車は残酷にもホームを、そして私を残して行ってしまった。
最後の方の記憶はメモリが不具合を起こしたのか、覚えていなかった。
💭💤🌈🫧🐟🚃💭
そのままどれぐらい時が経っただろうか。私はただ立ち尽くしていた。
アンドロイドの癖に、今起きた情報をすぐに処理できなかった。
ふと肩を叩かれた。振り返ると、男性が立っていた。
「貴方様が電車から脱出された方でしょうか?」
2、30代と言った所だろうか。金魚鉢。第一印象はそんな男性だった。
腹部が、金魚鉢になっている。おかしなことを言ってると思われるだろうが、
見えた事実を述べただけである。本当にそうなのだ。でもこんな異端の場所なら、
別に居てもおかしくないと思うどころか、馴染んでるようにも思えてきた。
「…はい。そうです」
一応警戒を持ちながら、そう答えた。悪そうな男ではないのだが、こんな場所で男が突然現れたら、誰もが警戒心を持つだろう。
「そうでしたか。…まずは脱出おめでとう御座います。もう大丈夫ですよ。」
そう祝ってくれたが、祝われる気分ではなかった。それを読み取られたのか、
「…まぁ、そんな気でも無さそうではありますが。」
なんて言われた。空気が悪くなったからか、男性は、違う話を切り出した。
「一旦自己紹介しますね。私、この未来日記駅の駅員です。どうぞ、よろしくお願い致します。」
とても丁寧な言葉遣いで、そう紹介された。取引先の会社との面談のように、堅苦しい趣きがある男というのが
第二印象、と言ったところだろうか。私も一応自分の名前を述べておく。
「…私はREI-00…零です。よろしくお願いします。」
「零様ですか。直ちにお帰りになさるのが最善ですが、私もこの駅の駅員です。何かお悩みがあるのであれば、お聞かせいただいてから見送りたいものです。ゆっくりでいいので、なんでもこの私にお聞かせくださいませ。」
お世辞にもほどがあるだろう。でも処理しきれないこの状況を、誰かに伝えるのには打って付けだ。
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「あの、私はアンドロイドなのですが、怜…私を作った博士が、自分を見捨てて、私をホームに押したのです…ッそれでッ、最後までわからなかったので…すッなん…で彼女が私を押した…のかッ全然…何もわからなかったッ、どんな情報を駆使してもッ…絶対にロボットは人間を守るのがッ使命だからッ…それを貫け…なかった私は、アンドロイド失格ですね…笑ッッ」
あれ、視界が滲んで来た。言葉を紡ぐたびに、体中が軋むような感覚がに陥る。スカートにシミが落ちるのが分かった。
怜の行動が理解できなかったのに、自分の身に何が起こってるのかは分かった。
私、今泣いてるんだ。人間が目から水を流す行為を「泣く」と言うらしい。だから私は泣いている。
理由は−−−
悲しいから ? 苦しいから ? 辛いから? なのだろうか。
もう一つ言える事。それは泣く時、人間は大抵「悲しい」「苦しい」「辛い」と言った感情を感じている事だ。
きっと私は、最後まで怜の行動が理解できなかった己の不甲斐なさに、そして自分を犠牲にしてまで私を救った白銀怜に、「悲しい」と言うことを「感じた」のだろう。
私が「泣いて」いる間、駅員は寄り添ってくれていた。「泣く」と言う行為はなかなか制御が利かないようで、私はほぼ暴走に近い状態で「泣きじゃくった」。
涙が引いたころ、駅員が言った。
「少しは落ち着きましたか?」
「…はい。ありがとうございます。」
「私もヒトだったので。少しは貴方様の仰る怜さんの気持ちも理解できます。」
「きっと彼女には貴方様に対して「愛」を持ってたのでしょう。」
「愛…」
愛。調べると、「相手を大切に思い、見返りを求めず、相手の幸せや成長を第一に願う深い慈しみの心」などと言う意味が出てくる。知識だけで、それも私は理解できない範囲にあるモノだった。怜は愛を理解し、そして私に向けていたのだろうか。
「愛ってなんですか?」
聞いた。彼は知っている気がしたから。
「…私も知りません。わからないです。でも、ヒトなら誰しも怜様が貴方様に向けられた感情が「愛」だとわかります。」
意外な返答だった。人間も理解できない。でも「感じる」事のできるモノ。それが愛なのか。
「でも私は、貴方様は自分に向けられた愛を、しっかりと受け止める事が1番大切だと思います。」
「愛は誰しも向けられるような物ではありません。限られた少数の人しか掴めない、儚く、そして宝物のように大切な物なのです。
自分を犠牲にしてまで向けられる愛は特に。だからこそ彼女の思いや願いを胸に、前に進んでいくことこそ、貴方様ができる「愛」の理解方法であり、彼女への最後の恩返しになると思いませんか?」
確かにそうだ。怜はこんなに「悲しんで」欲しいなんてきっと思ってない。私に前に進んで欲しいと願って、そして私に未来を託したはずだ。こんな所で止まっていられない。
「彼女の願いはなんだったのですか?」
怜の願い。それは−−−
「零がいっぱい想像して、いろんなことを感じてくれること!」
「私がたくさん想像し、さまざまなことを感じること…」
なんで忘れていたのだろう。もう恩返しは一つできたじゃないか。
「悲しい」それは、私が一番最初に気づけた感情。涙の意味。
💭💤🌈🫧🐟🚃💭
「なんで給水タンクなんて付けたのですか?」
以前そう怜に聞いたことがあったことを、思い出した。
「え?零が万が一「悲しい〜!」ってなった時に、ちゃんと外に「悲しい〜!」を吐き出せるように!」
「悲しいはね、ちゃんと外に出すことができるんだよ。そうすることで、また頑張れる。だから零が挫けた時に、ちゃんと前を向けるように、そーゆー意味で付けたの!」
そう答えられた気がする。私はその時、なんと返したのだろうか。覚えていなかった。
💭💤🌈🫧🐟🚃💭
「そういうことだったのですね、怜…」
気づけてよかった。「悲しい」に気づけてよかった。
だって給水タンクを付けた怜の思いがしっかり届いたのだから。無駄じゃなくなったから。
そのあと私はまた泣いてしまった。次は怜の思いに気づいたから、もっと泣いた。
2回目の涙も引いたころ、駅員が聞いてきた。
「…現実に戻る準備はできましたか?」
今度こそ大丈夫だ。怜の思いを胸に、きっとなんとかやっていける。
「はい。大丈夫です。」
「それは良かったです。」
初めて駅員の顔が緩んだ。それから私を促すように、
「では、現実に戻ってくださいませ。この駅を抜けた先に、トンネルが有りますので、そちらを抜ければ辿り着けるはずです。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「はい。ではいってらっしゃいませ、零様。よい旅を。」
そう言われ、彼と別れた。彼は紳士的に私と向き合ってくれたので、心の中で感謝を伝えといた。
💭💤🌈🫧🐟🚃
駅を抜けると、駅員が言っていた通り、トンネルがあった。あのトンネルを抜ければ、現実に戻る。
そう思うと、少しだけ足がすくんだが、もう大丈夫だ。怜がくれた「愛」を大切にすれば、切り抜けられるはずだから。
もう一度怜との合言葉を唱えた。怜は戻ってこない。でも彼女の思いは、私の中で生きているから。
「想像は、未来を創造する。」
私は、怜の思いを胸に、これから続く未来に、しっかりと足を一歩、踏み出した。
−終−
こんにちは。西瓜です。零の未来編、どうだったでしょうか?色々詰めていたら、だいぶ長くなってしまいました…。
零は未来に踏み出すことができたので良かったですね。怜の思いを胸に、たくさん感情を知って欲しいものです。
新キャラの「駅員」さんもまた出てくるかも…?しれませんのでお楽しみに。
Q &Aは今回は無さそうだったので、無しです。(何か質問がありましたら、コメント欄でよろしくお願いします)
最後に、REI-00、零の立ち絵資料を貼って終わります。じゃあ。
『違う違う違う−−−!』
『俺の妹は亡くなってなんか−−』
tobe continue …
コメント
3件
わあ…零が初めて「悲しい」を感じて泣くところ、本当に胸に来ました。アンドロイドだからって自分の感情を信じられないもどかしさと、怜さんの思いに気づいた時の涙の温度が伝わってきて、私ももらい泣きしそうに。駅員さんの「愛は感じるもの」という言葉も沁みました。零が給水タンクの意味を理解できた瞬間、心がじんわり温かくなりました…素敵な未来編をありがとうございます🍀