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5 - 第5話公式に?

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2026年01月24日

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その日は、何も特別なことがない日だった。
テストもない。

行事もない。

ただ、いつも通りの放課後。


なのに成瀬は、朝から落ち着かなかった。


——今日、言う。


理由はわからない。

でも、先延ばしにしたら、もう言えなくなる気がした。


放課後。

昇降口には、もう黒川蒼がいた。


「待たせた?」


「今来たとこ」


相変わらずの、嘘か本当かわからない言い方。


二人は並んで歩き出す。

夕方の校舎は、人が少なくて静かだった。


成瀬は、何度も口を開きかけては閉じた。


蒼が、気づいて言う。


「……話ある?」


「ある」


即答だった。


校門の少し手前。

二人は立ち止まる。


成瀬は、深く息を吸った。


「俺さ」


声が、少し震える。


「まだ怖いこともあるし、正直、全部割り切れてない」


蒼は黙って聞いている。


「でも」


成瀬は、蒼をまっすぐ見た。


「蒼と一緒にいるの、やめたくない」


一瞬、風の音だけが通り過ぎた。


「だから」


逃げずに、言った。


「付き合ってほしい」


短い言葉。

でも、今の成瀬に出せる全部だった。


蒼は、少し驚いた顔をしてから、ゆっくり息を吐いた。


「……やっと言った」


「え?」


「俺、何回も覚悟してた」


冗談みたいな口調なのに、目は真剣だった。


「答えは?」


成瀬が聞くと、蒼は少し近づいた。


でも、触れない。


「もちろん、いい」


その一言で、胸の奥がほどける。


「今日から?」


「今日から」


蒼は、ほんの少しだけ笑った。


「じゃあ、公式な」


「……公式?」


「俺の彼氏」


成瀬の顔が、一気に熱くなる。


「その言い方……!」


「嫌?」


「……嫌じゃない」


蒼は満足そうに頷いた。


「学校では無理しない」


「うん」


「でも、隠しすぎもしない」


「……それも、うん」


二人は並んで歩き出す。


帰り道、蒼が小さく言った。


「成瀬」


「なに」


「俺、選ばれたの嬉しい」


その言葉に、成瀬は照れながらも答えた。


「俺も……選んでくれて、ありがとう」


校門を出る直前。

誰も見ていないのを確認して、蒼が小さく言う。


「名前」


「え?」


「蒼って、呼んでいい」


成瀬は一瞬ためらってから、静かに呼んだ。


「……蒼」


それだけで、蒼の表情が柔らかくなる。


——もう、戻れない。

でも、それでいい。


二人の関係は、今日から“公式”になった。


まだ周りには全部言えない。

でも、確かに。


放課後、名前を呼べる関係になった。


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