そこにはもう帰ったはずの…………
井戸田キリアくんがいた。
「へ?、」
私は思わず変な声が出てしまった。
井戸田くんは、今日部活はなかったはずだし、親友の有賀(あのが)くんと帰っていたと思ってた。
「な、なんで。いるの?」
私は少しだけ心を落ち着かせてそう聞いた。
「お前を待ってた。いのり。」
そう井戸田くんは答えた。
「そ、そっか!っっっえ?」
私の頭の中は消しゴミで1部消されたノートのようだった。
ぽっかり空いていたそこの文字。
それを埋めてくれそうな人を見つけたのだ。
私は何故だろうか。大粒の涙がポロポロと滝のように流れ出した。
井戸田くんはそんな私を
ぎゅっと抱き締めてくれた。
その温かさが私には必要だったのかもしれない。
井戸田くんはそっと耳元で、
「いのり。俺の隣でずっと笑っててくれないか?もし、涙を流したとしても拭ってやるから、、」
そう言った。
私はもう何が何だか覚えてないけど確かに
「うん!」
と涙を流しながら言った。
「いのり。今までずっと大好きだった。お前のこと俺は。。誰にも取らせないからな。もういのりは俺の、俺の、大事な宝物だ。」
井戸田くんの雰囲気はいつもより穏やかで少しムズムズするような感じだった。
けど私は
(この人の近くにいたらぽっかりと空いた文字を埋めれる気がする。)
そう思ったのだ。
そして私たちはお付き合いをすることになった。
美朝と雪湖にも知らせた。
そしたら、
「えぇ!?まじか!!もう私のいのりじゃなくなるのかァー泣きたいぃー」
「そかそか。お幸せにね。なにかあったらすぐに言うんだよ?!」
と言ってくれた。
2人は同時に
「あと、井戸田に泣かされたら殴りに行くからね!!」
と、自信に満ち溢れていた。
私は
そんなことあるはずないよ
と一言。
これからもっと楽しくなる予感がする。
ワクワクしてきた
私は空を見上げて手に取るように輝きを掴めたんだ。